INIやBE:FIRSTらも輩出、サバイバルオーディションブームはいつまで続く? 舞台は国内へ、影に潜む課題も

サバイバルオーディションが日本で成功した理由

コロナ禍で流行するデビューサバイバル

 11月3日にINIとBE:FIRSTがデビューシングルをリリースすることが決定した。いずれも『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』『THE FIRST』というボーイズグループのデビューオーディションサバイバル番組から誕生したグループだ。

 『スター誕生!』や『ASAYAN』といったオーディション/サバイバル番組の流行は日本でも昔からあったが、ここ数年のアイドルオーディションサバイバルブームのきっかけは、『PRODUCE 48』からではないだろうか。元々はAKB48の『選抜総選挙』システムをベンチマークして生まれ、韓国で大ブームを起こした『PRODUCE』シリーズの3作目は、日本のAKBグループ所属メンバーが参加したこともあり、それまで韓国のアイドルには興味のなかった日本の視聴者層まで話題が広がった最初のプログラムだろう。そこから誕生したIZ*ONEは、主に韓国内でのファンダムや大衆認知に強かったそれまでの“プデュ”シリーズから生まれたI.O.IやWanna Oneとはまた少し異なるファンダムを獲得し、特に日本では認知の幅が大衆層にまで広がっていた。その後日本でローカライズされて開催された『PRODUCE 101 JAPAN』の話題性はさらに広範囲に拡大し、ソニーミュージックとJYPエンターテインメントが合同で行った『Nizi Project』は、デビュー後も含めて注目度では頂点を極めたサバイバルと言えるだろう。以降、続いて先述の『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』や『THE FIRST』が放送され、日本でもグループデビュー課程の一種のフォーマットとして定型化しつつある。

 この盛り上がりの背景には、COVID-19流行下という環境も関係している部分もあるだろう。家にいたままでも楽しめて、誰が選ばれるのかというスリルを味わえたり、「推しメン」を決めて応援することでさらに没入度が高まるサバイバルオーディションは、“おこもり需要”にもマッチしていたと思われる。また、ファンがそのまま支持者とも言えるアイドルというジャンルは、サバイバル特有のインタラクティブなコミュニケーションには最もハマりやすい題材だろう。『THE FIRST』を主催するレーベル<BMSG>が今後の資金調達のために行なっているBE:FIRST支援形式のクラウドファンディングは、開始30分で目標の1億円を達成し、30日以上を残した9月30日時点で4万人以上の支援者を集めて3億9000万円を突破している。プロデューサーであるSKY-HI自体が人気のアーティストということもあるかもしれないが、グループのデビュー前からこれだけの支援者がいるのは、サバイバル番組経由デビューの最も大きなメリットのひとつだろう。

LDHも参戦、サバイバルオーディションブームの舞台は国内へ

 “プデュ”シリーズの投票操作事件により韓国内では現状難しくなったサバイバルオーディションの場を、韓国の芸能事務所側がアイドルとサバイバルの相性の良さを長年経験済みである日本に移しつつある気配も感じる。

 JYPエンターテインメントも、NiziUの日本国内での成功の影響もあってか、再びソニーミュージックと組み、男性限定のサバイバルを開催予定だ。また、JYPエンターテインメントと「江南スタイル」で知られるPSYの事務所P NATIONの合同アイドルサバイバル『LOUD』も日本人が多く参加し、日本からも視聴可能となっていた。日韓中の参加者によるデビューサバイバルで、現在日本でもABEMAで放送中の『Girls Planet 999:少女祭典』は“プデュ”シリーズと同じMnetの制作だが、3カ国の中では日本で最も話題性が高いようだ。“プデュ”シリーズのサバイバルフォーマットが熱狂的な支持を受けていた中国では、加熱する応援合戦を理由に政府の規制によって現在はサバイバル番組の開催自体が不可能な状態であり、いずれの問題も起こっていない日本でのみ「デビューサバイバル」というフォーマットが安着して行われている状態といえるだろう。

 10月から『シューイチ』(日本テレビ系)内でも放送予定の、日本人少女15人がガールズグループでのデビューを目指すサバイバルプログラム『Who is Princess? -Girls Group Debut Survival Program-』は参加者全員が韓国の事務所の練習生という点が他のサバイバルとは異なるが、この「韓国の事務所」というのはFTISLANDやSF9、AOAなどが所属するFNCエンターテインメントのことである。韓国の芸能事務所が自社の練習生のデビューサバイバルを完全に日本向けにローンチするという部分では、『Nizi Project』やYGエンターテインメント日本支部の練習生を韓国の練習生にミックスして行われた『YG宝石箱』の形式を、さらに海外市場向けにローカライズしたサバイバルという点で、新しいやり方と言えるかもしれない。

 国内大手のLDHも史上最大規模のオーディション『iCON Z ~Dreams For Children~』を含む3つのオーディションサバイバルを開催予定だ。LDHは元々現在活躍するグループのメンバーを選出する過程でもオーディションサバイバルを開催しており、『週刊EXILE』(TBS系)などでその模様を放送してきている。三代目 J SOUL BROTHERSの登坂広臣がプロデュースするプロジェクト『CDL entertainment』で行う予定のガールズグループデビュープロジェクトは、BTSやTOMORROW X TOGETHERが所属するBIGHIT MUSIC、SEVENTEENなどが所属するPLEDISを擁するグローバルエンターテイメントライフスタイルプラットフォーム企業HYBEの日本法人 HYBE LABELS JAPANとの共同プロデュースであることが告知されている。HYBE LABELS JAPAN自体も日本人練習生を中心とした男子グループのデビューオーディションを行なっており、韓国の事務所が自社で育成した練習生を日本向けにローカライズした形式でデビューさせるにあたって、日本で続いているデビューサバイバルブームのフォーマットにのせて行おうとする流れがあるようだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる