ネクライトーキーはなぜアニメとの親和性が高い? 生々しいメッセージをポップに仕立て上げる“絶妙なバランス感覚”

ネクライトーキー、アニメと親和性高い理由

 ネクライトーキーが2ndアルバム『FREAK』から約4カ月ぶりの新作、そしてメジャーデビュー後初のシングル『ふざけてないぜ』を9月8日にリリースした。表題曲は7月から放送中のテレビアニメ『カノジョも彼女』(TBS系)のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲だ。

 ネクライトーキーがアニメとコラボするのはこれが初めてではない。『FREAK』に収録された「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」は『秘密結社 鷹の爪 ~ゴールデン・スペル~』(テレビ朝日系)のオープニングテーマに起用されていた。さらに、これはタイアップではないし明言もされていないが、メジャー1stアルバム『ZOO!!』収録の「ぽんぽこ節」はタヌキを主人公にしたあの名作アニメ映画からインスパイアされたものだろうし、「だけじゃないBABY」や「はよファズ踏めや」のMVもアニメーションで作られている作品だった。

ネクライトーキーMV「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」/ NECRY TALKIE - CHAKAPOCO
ネクライトーキー MV「だけじゃないBABY」
ネクライトーキーMV「はよファズ踏めや」/ NECRY TALKIE - HAYO FUZZ FUMEYA

 そもそもネクライトーキーは、ボカロP・石風呂、そしてコンテンポラリーな生活(以下、コンポラ)のギター&ボーカルとして活動していた朝日が「女性ボーカルのバンドをやりたい」と、新たなメンバーを迎えてスタートさせたバンドだ(※1)。ネクライトーキーでは石風呂楽曲も最初から演奏されていたし(それもこのバンドを始めた目的のひとつだったようだ)、それらのセルフカバー楽曲は2019年に『MEMORIES』というアルバムにまとめられた。ネクライトーキーの音楽は石風呂~コンポラと、朝日が積み上げてきたキャリアと密接に結びついているのであり、ある意味ではミュージシャン・朝日にとっての「集大成」ともいえるものだ。

 石風呂楽曲の動画には彼自身が生み出した「キライちゃん(田所キライ)」という女の子のキャラが登場するが、このキライちゃんはコンポラの作品にも存在している。また、ネクライトーキーのトレイラー映像やMVにもキライちゃんなのかどうかははっきりしないが、少なくともそっくりな女の子のイラストが登場する。これも一連の朝日ワークスがつながっていることの証だろう。いうまでもなく、ボカロは「絵」がなければ成立しないわけで、彼の生み出す音楽がアニメと親和性が高いのは必然だともいえる。

 だが、一口に「親和性」といってもそのありようは様々だ。ネクライトーキーにおけるそれとは何か。簡単にいえば「現実を中和する機能」なのではないかと思う。わりとリアルな風景や状況のなかで、リアルではありえない出来事が起きる。ちょっと変わった登場人物(人間以外も含む)がその出来事に巻き込まれてとんでもないところに連れていかれる。ポップなアニメーションであれば、実写では表現しきれないようなシリアスなテーマやメッセージを浮かび上がらせることができるし、逆にいえば辛辣で痛い気持ちを描いても、絵で伝えればどこか角が丸まって飲み込みやすくなる。

 『鷹の爪』も皮肉が効いていたり、意外とジーンとくるところあるし、今回のコラボ相手となった『カノジョも彼女』もそうである。ヒロユキによる『週刊少年マガジン』(講談社)連載の漫画を原作とした『カノジョも彼女』は、真面目で馬鹿正直な主人公が、成り行きで多重交際状態になってしまうところから始まるラブコメディ。そんな状況だけを言葉にするとややエグいが、実際に作品を観てみるとまったくそんなことはなく、キャラクターたちの人柄によって笑える作品になっている。

TVアニメ「カノジョも彼女」ノンクレジットOPムービー/ネクライトーキー「ふざけてないぜ」

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