今市隆二&登坂広臣、ソロ最新作それぞれの特徴は? 強固なテーマの確立や音楽愛は共通点に
一方、今月リリースされた今市の『CHAOS CITY』はというと、こちらは80’sリバイバルに統一された作品だ。不穏さと緊迫感を演出するテクノサウンドの「INTRO 〜CHAOS CITY〜」によってリスナーを一気に惹き込んだ後は、今市の繊細なハイトーンボイスと独特な光彩を感じさせるシンセサイザーが絡み合い、ソロアーティスト・今市隆二としての感性、解釈によって作り上げられた80’sの世界へ導かれる。
とはいえ、楽曲ごとにテイストは様々だ。アンドロイドに恋をする物語を描く近未来的なエレクトロポップ「FUTURE LOVERS」や、サビのドラムンベースが印象的な「Talkin’ bout love」。シティポップテイストなファンク歌謡「Highway to the moon」は、歌詞に〈Purple Rain〉〈月9〉など80’sのヒット曲やカルチャーを感じさせるワードを散りばめるという遊び心もある。歌声のウェットさと華やかさを活かした歌謡曲調のバラード「オヤスミのくちづけ」や「I’m just a man」などは、80’sサウンドが世界的潮流となった今では世代を超えて親しまれそうだ。
さらに今作において特徴的なのは、リミックスとサンプリングだ。「THROWBACK pt. 2」は、2001年のEXILEのデビューシングル曲「Your eyes only ~曖昧な僕の輪郭~」をサンプリングし、2ステップのポップチューンに仕上げている。国内のポップアーティストがこうしたサンプリングを行うことはまだまだ多くはないが、これはEXILEというグループとLDHが持つ歴史の為せる業と言えるだろう。そのほかボーナストラックの「FUTURE LOVERS」「Highway to the moon」のリミックス2曲は、それぞれ☆Taku Takahashi(m-flo)、Night Tempoが手掛けており、各クリエイターの色味が濃く出た仕上がりが楽しめる。
今市、登坂のソロリリースは、常に音楽作品としての志向性が高く、それぞれの“音楽愛”が深く感じられる点が醍醐味である。今回はどちらも“幻想的”と言える世界観ではあるものの、それぞれ描くものが対照的と言えるほどに異なっているのが興味深いところだ。
心の深層へと潜り込むØMIの内省的な表現と、今市の80’sサウンドによる“時代が持つ煌めき”への憧憬的な表現。三代目JSBのシングルがメッセージ性、サウンド共にポップグループとしての“今”を表現していたことを鑑みたとしても、今市と登坂の音楽が色彩に富んだ作品として成り立っている絶妙なバランスに、改めて脱帽させられた。