『ANSWER... SHADOW』インタビュー
登坂広臣、新たな姿=ØMIで表現する“自分自身の光と影” 「弱さと向き合ったからこそ前に進める」
三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのボーカル 登坂広臣が、自身がプロデュースするプロジェクト CDL entertainmentの本格始動に伴い、ソロアーティスト名義をHIROOMI TOSAKAからØMIに改名。その第一弾として、EP作品『ANSWER... SHADOW』を5月12日にリリースする。アーティストとして生きていく中での孤独や葛藤を描いたという同作には、先行配信されているリード曲「ANSWER... SHADOW」「Can You See The Light」「Colorblind」の他、ファンへの愛情を投影したセクシーなラブソング「Give up」を収録。自分の中に見出した1つの“答え”と、その先に見据える光について語ってもらった。(斉藤碧)
「自分自身に問いかけた“Who Are You?”の答え」
ーーまずは、なぜ今のタイミングで“ØMI”に変更することを決めたのか、改めて教えていただけますか?
登坂広臣(以下、登坂):ソロアーティストとしての僕は、LDHが持つ太陽のイメージとは相反する月のような存在でありたいという想いがあって、これまでに発表したMVにも、CLAIR DE LUNE(フランス語で“月の光”)の頭文字をとったCDL entertainment……つまり“月の光のエンタテインメント”という名前をエンディングに記載してきたんですね。それが、自身のプロデュースするプロジェクト CDL entertainmentとして本格始動することになりまして。さらに、今回からはよりセルフプロデュースに力を入れていくことになったので、このタイミングで表記を変更することを決めました。
ーーØMIの“Ø”は、既発曲のジャケット写真などで使われていた月のイメージですよね。
登坂:そうですね。心機一転しましたけど、全く新しいものを作っていくわけではないので、これまでにやってきたこととリンクさせたくて。ただ、改名や表記に何か深い意味があるわけではなくて、これを機により僕を知ってもらえたら、という意味合いが強いですね。メンバーやファンの方、家族や友人にも“オミ”って呼ばれることが多いので、このほうがしっくりくるなぁと思っています。
ーーそして、プロジェクトの本格始動を告げる第1弾作品が、最新EP『ANSWER... SHADOW』です。昨年4月にご自身のInstagramで、「【Who Are You?】に対しての新たなSOUND STORY【ANSWER...】を制作中」と予告していたので、1年越しのリリースになりますね。ZEROさん(YVES&ADAMS)、SUNNY BOYさんと共に制作した表題曲「ANSWER... SHADOW」には、どんな想いが込められていますか?
登坂:昨年、前作『Who Are You?』をリリースした後にソロでドームライブを行わせていただいたのですが、その過程で自分自身に問いかけた“Who Are You?”の答えを、これから『ANSWER...』シリーズとしてリリースしていく予定で。その第1弾となる「ANSWER... SHADOW」は、アーティストとして生きていく中での孤独や葛藤がテーマになっています。普段、三代目 J SOUL BROTHERSとしてライブを行う時は、7人でステージに立って、7人でスポットライトを浴びることが多いんですけど、1人でドームに立たせていただくと自分1人に強く光が当たりますし、そのぶん影も大きくなるんですよね。それは気持ちの面でも言えることで、「ANSWER... SHADOW」には自分がソロ活動を通じて感じた影の部分を落とし込みました。
ーーということは、いずれは光の部分にフィーチャーした楽曲も出てくるんでしょうか。
登坂:影があれば、光も必ずありますからね。今後はそういった楽曲も発表していけたらと思っているので、「ANSWER... SHADOW」で完結するのではなく、『ANSWER...』シリーズという壮大なストーリーを楽しんでいただけたらと思います。
ーーこのEPだけを見ても、最初にMVが公開された「ANSWER... SHADOW」と、2番目にMVが公開された「Can You See The Light」のストーリーはリンクしていますよね。初めから対になるものにしようと思って、曲作りを始めたんですか?
登坂:この2曲はほぼ同時期に作っていたんですが、先に「ANSWER... SHADOW」を作っている中で、自然と「Can You See The Light」のイメージも湧いてきました。「ANSWER... SHADOW」のMVのイメージが深海に沈んでいくような世界観だとしたら、「Can You See The Light」で描いているのは、深海の中に一筋の光が見えた瞬間や、その光を掴みたいという願望。そういった心に秘めた強い想いを炎で表現していて、色味やシチュエーション、衣装のスタイリングに関しても、対照的なものを意識してプロデュースしていきました。
三代目にはなかった“ØMIならではの歌い方”
ーー音楽ジャンルでいうと、どういうものを目指していたんでしょうか?
登坂:普段曲を作る時は、プロデューサーチームと「ヒップホップのビートで……」とか「R&Bのメロディのこういう感じで......」っていうところから作り始めることが多いんですけど、今回はどういうジャンルで行くかっていう話を一切していなくて。「ANSWER... SHADOW」だったら、「俺が深海に沈んでいって、コーラスが広がって浸水していくイメージなんだよね」っていう世界観の話から入って、「じゃあ、ドラムのキックはこういう感じじゃない?」みたいにリズムパターンが決まったり、歌詞やメロディができていったんですよ。同じように「Can You See The Light」も、静かに燃え上がる炎を表現しようと思った時に「だったら、踊れる曲がいいよね」っていう話になって、ビートを決めていったり。だから、「この曲はなんていうジャンルですか?」と聞かれたら、自分でも「なんていうジャンルなんですかね?」って問い返したくなるくらい、ジャンルレスな楽曲になりましたね(笑)。
ーー個人的には、ジャンルレス=いろいろなジャンルを融合させた音楽というより、ジャンルレス=ØMIというオリジナルのジャンルを生み出した、ということだと解釈しています。
登坂:たしかに、そういうことかもしれないですね。音楽を作る立場としては、「ANSWER... SHADOW」も「Can You See The Light」も「Colorblind」も「Give up」も、どんなジャンルの楽曲をやっても「ØMIっぽいよね」って言われることが一番嬉しいですから。特に今回は、自分の中にない引き出しをお見せしたような感覚があって。それこそ「ANSWER... SHADOW」は、今まで強い部分だけを見せてきた自分の弱さを曝け出した楽曲なので、それも「ØMIっぽい」と感じてもらえたらいいなと思っています。
ーー「ANSWER... SHADOW」のイントロはアンビエントミュージックのような印象もあって。シンセの音色やコーラスワークも含めて、心地よい浮遊感がありますね。ZEROさんとのやりとりで、印象的なことはありますか?
登坂:表現が合っているかわからないんですけど、「ANSWER... SHADOW」を作ってる時に、ZEROくんと「この曲、ビッチャビチャにしたいね」って話してましたね。
ーーどういうことですか(笑)。
登坂:カラッとした感じでも、ぬめっとしてる感じでもなくて、ビッチャビチャな感じがいいよねって(笑)。だからミックス作業も、今までは精密に考えてやってたんですけど、今回はあえて大まかにしてあって。それが結果として、深海の空気感を演出してくれました。
ーー「ANSWER... SHADOW」は、ボーカルもいつもの芯の強い歌い方とは違いますよね?
登坂:普段はあまり目を瞑って歌わないんですけど、「ANSWER... SHADOW」は目を瞑って歌っていて。これも水に浮かんでいるような感覚というか、できるだけ力を抜いて歌いました。あと、ソロの場合は特にそうなんですけど、自分の声の性質は自分が一番よくわかっているし、今回もいつものプロデューサーチームだったから、自分の良さを活かすやり方をわかってくれていて。たとえば、自分は倍音が多いから、倍音が深くなるフレージングに変えてくれたり、自分の声の良さが出やすい歌詞に変えてみたりしましたね。三代目ではそこまでエアー感を意識して歌ったことがないし、これまでのソロ曲もストロングサウンドが多くて、こういう弱さを意識した歌い方はしたことがなかったので、「ANSWER... SHADOW」では新たな一面を見せられたと思います。
ーー新たな一面と言えば、「Colorblind」で披露しているオーセンティックなラップも新鮮でした。こちらは「Can You See The Light」を手掛けたJUNさん(作詞)とUTAさん(作曲)の楽曲ですが、ØMIさんのほうから「ラップを入れてほしい」と提案したんですか?
登坂:自分からお願いしたわけではないんですが、デモを受け取った時には、素直に「ラップをしよう」って思いましたね。これまでは、三代目やソロの曲でラップっぽいフロウがあっても、ボーカリストが歌う意味を考えた時に、あえてメロディラップっぽく歌ってきたんですよ。メンバーの中にボーカルやラッパーがいて、みんなで役割分担をして、何役もできるグループが今の主流だから。
でも、その反面、今はラッパーも歌うし、ボーカルもラップをするのが当たり前の時代だって思う自分もいて。1人でもボーカルとラッパーをやれるのが自分の強みなのかなと思ったので、「Colorblind」を歌う時は、1人で何役もやっている感覚で録っていましたね。俺がラップをしているというよりは、ラップ好きな俺がラップしてる、みたいな感じで。
ーーMC ØMIを投入したんですね。
登坂:変にキャラクターを作り込んだわけではないですけどね(笑)。ナチュラルに歌ったら、すぐに良いテイクが録れたので、このラップパートはほぼ一発録りしたものを使っています。