AKB48の軌跡を辿る 最終回:新型コロナ、『紅白』落選……正念場迎えたグループが築いていく新たな歴史

 5月23日に結成15周年記念の単独コンサートを終えたアイドルグループ、AKB48。同コンサートは柏木由紀演出のもと、「48曲ノンストップライブ」に初挑戦。また9月29日にリリースする58枚目のシングル曲「根も葉もRumor」では、姉妹グループは参加せずにAKB48メンバーのみで歌唱することを発表。これは19作目『チャンスの順番』以来、約10年ぶりのことだ。5月28日には、「最後の1期生」である峯岸みなみがAKB48劇場公演をもって卒業。7月からは、自虐的なタイトルが話題の新番組『乃木坂に、越されました。〜AKB48、色々あってテレ東からの大逆襲!〜』がテレビ東京で始まった。

 15周年の区切りが過ぎて、AKB48は変革の兆しを見せはじめた。この短期連載では、グループの今後に期待を込める意味でこれまでの軌跡をまとめていく。最終回は、指原莉乃の卒業、横山由依から向井地美音への総監督交代、そして新型コロナウイルスの影響や『紅白』落選について触れていく。

新番組MC・ひろゆきが指摘「人に覚えてもらえる個性が必要」

AKB48『失恋、ありがとう』初回盤(Type B)

 2021年7月、バラエティ番組『乃木坂に、越されました。〜AKB48、色々あってテレ東からの大逆襲!〜』(テレビ東京)がスタートするにあたって、MC・ひろゆき(西村博之)の「AKB48は顔面偏差値48」との過去発言が話題に。Twitterのトレンドにも入った。

 さらにひろゆきは番組内で、「『顔面偏差値48』と言うようなアンチに『AKB48の魅力とは何か』を明らかにできないから停滞している」と指摘。「大人数のなかで人にちゃんと覚えてもらえる個性を磨かなければならない」とアドバイスした。

 7月20日のオンエア回では、「アンチ代表」のひろゆきにAKB48のことを好きになってもらう企画を実施。カメラをひろゆきの視点に見立て、様々なシチュエーションでメンバーが彼を誘惑する、という内容だ。北澤早紀は、ひろゆきから拷問されるという過激な設定を披露。ひろゆきも「他とは違うことをやろうとしている」と評価はしたものの、見せ方を失敗していて驚きが失われているとコメント。そのほかのメンバーの企画についても一定の評価はしながらも、改善点が多いと提議した。

 同番組は、従来のファンにとっては嬉しい内容だ。メンバーの性質を知っていれば十分に楽しめる。しかしAKB48に今求められていることは、そういうものではないのではないか? 同番組には、良くも悪くもこれまで通りのAKB48の姿がそこにあり、番組タイトルが示す『大逆襲』の気配がなく、現状いつものコミュニティをターゲットととした内輪的内容であるとも感じてしまった。

バッドボーイズが見たメンバーの姿「自分のやりたいことを発しない」

 2008年1月から2016年6月まで『AKB1じ59ふん!』『AKBINGO!』(ともに日本テレビ系)などでAKB48と共演してきたお笑いコンビ、バッドボーイズは書籍『涙は句読点 普通の女の子たちが国民的アイドルになるまで AKB48公式10年史』(日刊スポーツ出版社/2016年)内のインタビューで、当時のメンバーについて「こうしたい、ああしたいというのを発する子が少ないかも」「マニュアル通りのことを言う人もいるんですけど、別にいいやんと(そうじゃなくても良いじゃないかと)。全員がそれ(マニュアル通りのこと)をやったら、誰も光らないですから」と物足りなさを感じていた様子だ。

 それを物語るのが、7月13日オンエアの『乃木坂に、越されました』。「『やれ』と言われたら私はやりますよ」という田口愛佳に、ひろゆきが「言われないとできないようではダメ。『やれ』と言われないから、そのままなんだ」と正論を叩きつけていた。

 『AKB48選抜総選挙』でHKT48所属の指原莉乃に2015年から3連覇を許し、2018年はSKE48所属の松井珠理奈をはじめ、姉妹グループに上位を独占されたAKB48。近年のAKB48の低迷は、バッドボーイズやひろゆきがコメントしている「積極性のなさ」が表立って見えていることが影響しているのかもしれない。

 「積極性」という部分では、やはり指原莉乃はすごかった。『週刊文春』に恋愛スキャンダルを取り上げられてAKB48からHKT48へ移籍、普通であればイメージダウンしてそのままフェードアウトの可能性もあった。ただ、一筋縄ではいかなかった。2018年4月18日の『王様のブランチ』(TBS系)出演時には「私は文春砲のパイオニア」と発言するなど、ピンチをチャンスに変えて結果を掴んだと明かしたが、逆境のなかでトップの座をキープできた理由のひとつは、自分のやるべきことを口にして、行動に移し、実現させる積極性にあったのではないだろうか。失敗しても良い。とにかく動かなければ始まらない。そういう思考があったはずだ。

「指原莉乃 卒業コンサート ~さよなら、指原莉乃~」 / HKT48

 指原は2018年12月15日、TOKYO DOME CITY HALLで開かれたHKT48の単独コンサートでグループからの卒業を発表し、翌年4月28日の横浜スタジアムでの『指原莉乃 卒業コンサート 〜さよなら、指原莉乃〜』で有終の美を飾った。前田敦子、大島優子の2強時代の終焉直後、渡辺麻友らと切磋琢磨しながら、AKB48グループを象徴する地位へ上りつめた指原。彼女がAKB48グループに在籍している間に、その存在を脅かすメンバーがAKB48本隊から出てこなかったことも、現在の停滞感の原因になったように感じる。

もっとも難しい時期を担った横山由依総監督

 2018年12月のAKB48劇場13周年特別記念公演で、横山由依がAKB48グループ総監督の退任を発表した。そして次期総監督として向井地美音を指名。高橋みなみからその座を引き継いで3年、横山はステージ上で「次の世代にバトンを渡さなくてはならない。次期総監督を指名して、その子の成長を見守って、任せられると思ったら卒業したい」と話した。自身の卒業タイミングでバトンタッチをするのではなく、自身もその育成に尽力し、世代交代を後押しするという横山。彼女の責任感の強さをあらためて認識できた。

 横山は同年6月の『総選挙』でも「最近、AKB48グループの勢いがないと言われることがある。先輩たちが作ってくださったグループをそんな風に思わせていることが悔しい」とスピーチ。総監督就任時「AKB48のライバルは、AKB48です」と語っていた横山は、かつての“神7”の面々を強く意識し、“あの頃”を越えようと自らにプレッシャーをかけ続け、総監督としての重圧と常に闘いながら、「どのようにすれば今後のAKB48が発展するのか」と悩み続けた。今思い返すと横山は、とても難しい時代のAKB48を牽引していた。

 2019年4月1日より“向井地体制”がはじまった。もともとAKB48の大ファンで、グループへの愛情も人一倍強い。子役でデビューしたため芸能界も長く、『アンフェア』シリーズでは篠原涼子扮する雪平夏見の娘役で登場するなど、ヒット作にも多数出演。2018年の『総選挙』で13位に入って2年ぶりに選抜メンバー入り。名実ともに間違いなく次世代の中核候補と言える。

【MV】君は僕の風 Short ver.〈AKB48グループ センター試験選抜〉/ AKB48[公式]

 一方で、向井地も以前から色々な葛藤を抱えていた。2016年2月18日、AKB48劇場で行われた高橋みなみプロデュースの『いちごちゃんず』公演の壇上で向井地は高橋に、「知名度のある先輩たちがいなくなって、私たちだけになると、一般の方たちから『この子たちがAKB48なの?』と言われるかもしれない。そんなとき、堂々と『私たちがAKB48です』と名乗っていける誇りと自信をどのように持てばいいのか」と尋ねるなど、今後の活動を不安視していた。高橋はそこで、「それは自分で作ること。ここからは誰にも遠慮せず、自分で作る番。打席も回ってきているでしょ。自分で見つけるべきもの」と叱咤激励した。



インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる