AKB48の軌跡を辿る 最終回:新型コロナ、『紅白』落選……正念場迎えたグループが築いていく新たな歴史
『紅白』落選 向井地美音「今までの歴史に甘えないように」
2019年初頭、姉妹グループであるNGT48のメンバー、山口真帆がファンの男性らから暴行を受けていたことが発覚。この事件をめぐるAKB48グループの運営のあり方も大きく問題視され、組織としての信用にも疑問が生じることとなった。同年、名物だった『選抜総選挙』は不開催。AKB48にとって思い入れが深いバラエティ番組『AKBINGO!』は9月25日の放送をもって終了。12月8日には最後の1期生・峯岸みなみが、翌年4月2日の横浜アリーナ公演をもって卒業することを発表した。
2020年1月21日、TOKYO DOME CITY HALLで開催された『AKB48単独コンサート〜15年目の挑戦者〜』のなかで、「結成15周年を迎えるAKB48の新たな挑戦」としてメンバー各自のYouTubeチャンネルの開設を発表。なんとか新しい展開に手を伸ばそうとしたが、その矢先、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大、活動がままならなくなった。劇場公演、コンサートなども中止・延期に。6月13日、無観客配信で劇場公演が再開され、有観客は9月3日にようやく開催することができた。予定されていた峯岸の卒業も2021年へ持ち越されることとなった。
同年、11年連続出場を果たしていた『NHK紅白歌合戦』は落選。向井地は落選の知らせを受けて、「この2年間、先輩方が繋いでくださったバトンを私たちの代で何度も止めてしまいました。そして今日も。それが何より申し訳ないし不甲斐ないです」とツイートするなど落胆を隠せなかった。それでも「だけどここからもう一度…。今までの歴史に甘えず、今度こそ私たちが新しいバトンを渡せるように頑張るので、見守っていてください」と前向きな言葉を振り絞った。
正念場だからこそ、AKB48から目が離せない
2021年5月28日には峯岸みなみがグループを卒業。その一方で、3期生・柏木由紀はWACK所属の7グループとのコラボ企画に挑むなど(現在は一時休止中)、チャレンジングな姿勢で活動を続けている。ただグループとして、近年の諸問題とどのように向き合おうとしているのか。それらの方向性は正直なところ、はっきりと見えていない。新しい時代を手繰り寄せるため、もがいていることは伝わってくる。
2016年の書籍『涙は句読点』で、秋元康はインタビュアーから「AKB48のこの先の10年」について問われたとき、「これからの10年はファンが作る。ずっとファンの手の鳴る方へとやってきて、曲ができたり、方向が決まったりしてきた/この間、戸賀崎(智信/カスタマーセンター長)が、握手会で聞いたファンの声をまとめてくれたんだけど、それを見るとヒントになるよね」と話していた。
そのヒントとは、いったい何を指していたのか。世代交代、新型コロナ、『紅白』落選など色々なことがリセットされていくなか、AKB48の陣営がいかなる手を打ち、現在のメンバーがどのように体現し、そしてファンが巻き込まれていくのか。正念場を迎えているAKB48。だからこそ、今の彼女たちがおもしろい。
AKB48の軌跡を辿る バックナンバー
・第4回:指原莉乃の覚醒、グループを去っていく1~2期生……世代交代が求められた転換期
・第3回:震災、スキャンダル、前田敦子らの卒業……戸惑いながらも駆け抜けた迷走期
・第2回:商法問題、『選抜総選挙』による混乱……涙を流し駆け抜けたグループの変革期
・第1回:第1回:結成から初の『紅白』出場まで、秋葉原で生まれたアイドルの黎明期