1stアルバム『PvP』インタビュー
ZOC 藍染カレン×巫まろ×大森靖子、“メタ視点”で描くアイドルと音楽と女の子 大沢伸一、神前暁、ミトら作家陣らのコメントも
ZOCの1stアルバム『PvP』が、2枚組で全22曲といういかれたボリュームで届けられた。既存曲の再録だけではなく、新曲が8曲も収録されている。その『PvP』で描かれるのは、もちろん「女の子」でもあるが、彼女たちの目に映るこの「変な変な変な国」(『AGE OF ZOC』)そのものでもある。大森靖子が2021年の日本を描きだした『PvP』はどういう過程を経て生まれてきたのか。大森靖子、そして歌の要である藍染カレン、巫まろに聞いた。(宗像明将)【記事の最後には『PvP』参加アーティストからのコメント&読者プレゼントも!】
鎮目のどかは「自分と同じ化け物ぐらいに見えるときがある」
ーー今回は音楽面を語るということで、大森さんが藍染さんと巫さんを選んだんですよね。
大森靖子(以下、大森):このふたりは音楽をちゃんとやっていこうという意志が固いのを感じてて、楽器のレコーディングにも呼んでます。
ーーアルバム制作の過程も見ているわけですね。まず、今回15歳の鎮目のどかさんが加入しましたが、鎮目さんを見ていてどう感じますか?
藍染カレン(以下、藍染):「大人っぽいな」っていつも思っています。インタビューでも大人っぽく答えるし、メンバーが馬鹿なこと言ってても、スッとした顔で見てくれて、優しい目をしているし。
巫まろ(以下、巫):私も年齢よりしっかりしてるなーと思うんですけど、たぶん年相応の魅力もあると思うから、和ませて、そういうとこを引きだしてあげられたらなと思います。
ーー大森さんは鎮目さんの人格形成に関わることになりますね。どういう教育方針でしょうか?
大森:自分が仕事をしてるところをしっかり見てくれる子なので、「こうやって作品を作ってくれてるんだ」っていうのを感じたときに、一番いい仕事をしてくれる子だなっていうのは感じるから、すごくやりやすいですね。変に「こう教えなきゃ、こうしなきゃ」と思うよりも、「ここだけは見ててね」っていうポイントでちゃんと見てもらうことだけしかしてないですね。自分の14、5歳のときとか思いだしたら、もうこの自分だったので(笑)、そんなに子供じゃないって思うんですよ。あと、やっぱり自分と似てる目をしていて、自分と同じフラストレーションを抱えてるだろうな、って。見た目とか、おしとやかさとか、表現の仕方は全然違うけど、自分と同じ化け物ぐらいに見えるときがすごくある。接しやすいです。
ーーそして『PvP』ですが、アイドルのアルバムで新曲8曲は多いですね。
大森:アルバムをアルバムとして出す感じが薄れてきてるじゃないですか、最近。「これがアルバムで、これが私の作品で、こういう活動をしていきます」というものを作らなきゃいけないなと思ってて。今までの楽曲をただ録り直しただけだと「今」を切り取れないし、私たちのこれからやるべきことを描いていけないと思ったから、新体制が整って、新しいメンバーも3月に上京してもらったときに「うーん、早く出さなきゃ」と思って。2曲ぐらいはライブでやってたし、あとの6曲も3日ぐらいで書きあげましたね。
ーーメンバーのみなさんは、大森さんがどんな新曲を作ろうとしているのかは知っていたんですか?
巫:はい。でも、曲によります。
大森:歌詞だけできて、「この曲はまろっぽいから、早く聴いてほしい」って歌詞だけ送ったり。でも、基本は楽曲ができてからです。
ーー藍染さんと巫さんは、レコーディングに立ち会って印象的だった光景はありますか?
藍染:弦楽器の演奏をしてるところを初めて見たんですけど、「こんなにバイオリンをいっぱい重ねて、こんな風にみんなで録るんだ?」って、すごく新鮮で、みんなで一緒に作りあげていくんだなって。
大森:それは美央さん(美央ストリングス)だからね(笑)。美央さんの特技。
ーー美央ストリングスさんに加えて、楠均さんや千ヶ崎学さんも参加していて、「豪華なメンツだな」と思いました。
藍染:こんな豪華なみなさんがすごい力を入れて、それぞれの納得がいくまでやってくれてるんだ、っていうのを見ることができました。
巫:私も別のグループでアイドルをやっていたんですけど、こういう風に楽器の音作りから参加させていただくのは初めてで。「まろまろ浄土」は入れ替わり立ち代わり、いろんな方が楽器を演奏しに来てくださって。なんかサビのブラスがサザンオールスターズの「エロティカ・セブン」みたいだなって(笑)。私からしたら一発目で感動してるのに、プロの方々が「もうちょっとこうしてみたいなあ」と話しあっている姿まで見せていただいて、めちゃくちゃかっこいいなって思ったのと同時に、「私も負けない歌を歌わなきゃな」って思いました。
ーー藍染さんのソロ曲の「紅のクオリア」や巫さんのソロ曲「まろまろ浄土」は今回初めてCD化されましたが、どういう経緯で生まれてきたものなんですか?
巫:どんな曲がいいかって言われて、抽象的に「とにかくかわいい」だけ伝えたら、この曲をいただいたんです。「かわいい曲です」では言い表せないぐらい深みのあるかわいい曲になっているので、私はすごく気に入ってます。
大森:まろにしかできない切り拓き方の「かわいい」を表現できたらなと思って。人に言われたことをやって、それが評価されるのって、やっぱり25歳が限界だって思うんですよ。そこからまろが自分を切り拓くためにZOCに来てくれたということにすごく意味があると思ってて。25歳までの輝きに「あの頃は良かった」って言われないようにしてあげたいっていう気持ちがめちゃくちゃあるし、みんなそうだといいな、って思ってて。私の大好きな道重さゆみさんは「今が一番かわいい」ってずっと活動してくださっているので、自分もまろをそうしてあげられるようにプロデュースをしたいなって思っています。
ーー藍染さん「紅のクオリア」ではどうでしたか?
大森:無理をしてロックスターを演じる、その様こそがロックだっていうのが私は好きだったんですけど、藍染はそれをやろうとしている人だからロックだな、ってずっと思ってて。自分以上のものを描いて、そこに自分をはめ込む。「しょうがないなあ」と思いながら理想を描いてあげた(笑)。
藍染:私は少女戦士ものが好きで、憧れはずっとあって。「紅のクオリア」は大人っぽいし、少女戦士っぽいし、とりすまして暑苦しくて美しい歌詞にしてくれて。その中に私の本来の部分も溶かしこんでもらっているのをすごく感じます。何も言ってなかったんですけど、そういう風に作ってくださったことがすごく嬉しいし。
大森:ものすごいキーレンジの曲なので、課題曲みたいな気持ちで作って(笑)。
ーーボーカルの面でも、藍染さんと巫さんはパートが多いですよね。歌割りはどう決めているんですか?
大森:「この人がこの歌詞を歌ったら説得力あるな」とか、「隠れてたこの人の声がここで出てきてほしい」とか、そういう決め方をしていますね。