ZOCは過去を乗り越え、力尽くでも未来へと向かうーーメジャーデビュー作『AGE OF ZOC/DON'T TRUST TEENAGER』を聴いて

ZOCメジャーデビューシングルを聴いて

 2021年2月1日付のオリコン週間シングルランキングで5位を獲得したZOCのメジャーデビューシングル『AGE OF ZOC/DON'T TRUST TEENAGER』。ZOCは、2月8日に日本武道館公演を控えている。

 両A面シングルの1曲目である「AGE OF ZOC」は、もちろん大森靖子作詞作曲で、編曲は鈴木大記。そして、大森靖子の作品の系譜としては、かなりの異色作だ。2014年のメジャーデビューアルバム『洗脳』で、大森靖子が一気にポップに触れ切れたときと同じぐらいの衝撃がある。

 「AGE OF ZOC」では〈ぷっちゃへんざ〉、つまりヒップホップにおける「Put your hands up」が繰り返されるが、実際にAメロはラップしかない。ここまでアッパーな大森靖子の楽曲はかつてなく、躁的なほどだ。〈炎上上等〉と歌うように、MVでもアーティスト写真でも炎が噴きあがる。

 しかし、そのラップにおいても〈まあ落ち着いて?誰否定しても自分の幸せ / アガんないから〉など、歌詞は俯瞰的な視線と批評性を含んでいる。そしてサビでは〈間違っていこう こう過去は大前提 / 未来も許し合って抱き合って〉と寛容性を謳うのは大森靖子らしい。

 〈正統派思考なのは逆に私って伝わらなくたってSING〉〈優しい人は 理解されない〉といった歌詞は、現在のZOCをめぐる状況への大森靖子の回答のように響く。そもそも、メジャーデビューにあたっての『ZOC第二幕 活動理念』で、大森靖子は以下のように記している。

「誰かを信じる自分を信じる。“裏切られる” という現象は、信じるものを見誤った自分の器量不足により起こります。

全ては自分次第。いくら最高な愛を注ぎ注がれても、器が壊れてしまっていては何も感じることができません。

ボロボロに壊れ自分で金継ぎした器を以って、また別の壊れたカケラたちを拾い集め、歌や踊りで美しく新しい形に再生し、

“あなたは美しい”ことを伝える役割を担う人間が孤独を背に立つステージが、ZOCです。」

 表現をする者は、ときに愛され、ときに失望される。「AGE OF ZOC」は、誤解をも背負う覚悟を歌う。

 そして終盤では、〈変な変な変な国で / 映えてるばっかじゃはじまんねーのさ / 一億二千万の多様性が美しいだろ〉と視点が日本という国家全体を見渡す。この楽曲終盤の怒涛のような昂揚感もまた、大森靖子作品としては異色だ。日本武道館公演、そして香椎かてぃの卒業と、ZOCでは何が起きるのかわからない。現在のZOCの勢いを端的に表現しているのが「AGE OF ZOC」だ。

ZOC「AGE OF ZOC」Music Video

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