ZOC 藍染カレン×巫まろ×大森靖子、“メタ視点”で描くアイドルと音楽と女の子　大沢伸一、神前暁、ミトら作家陣らのコメントも

「CUTTING EDGE」には「忘れられない言葉がたくさん詰まっている」

ーーアルバムの新曲について聞かせてください。1曲目の「CO LO s NA」は「殺すな」と「コロナ」をかけていますね。〈平和って何か教えたげる / 誰を殺すか選ぶことだろ〉という歌詞が、いきなり1曲目に出てきます。

大森：現状把握をしたほうがいいなと思って頭に持ってきてます。「現状のことを歌わないほうが正義」みたいなのは違うし、「なんで？」って文句だけ言って過ごすのもどっちも賛同できない気持ちがあるので、問題提起していきたいし、「コロナで何してる？　アイドルをやって何してる？」って問い詰める曲を1曲目に持ってくるのは大事かなって思いました。

巫：この曲でアルバムが始まるのが、映画が始まるみたいな壮大なかっこよさがあると思います。歌詞でいうと〈自粛終わったら外食しよう〉って、この1年でもっとも言ってることじゃないかなと思うし（笑）、私がそこを歌ってる回数が多いです。ワイワイしていて、ライブでやってて私は一番楽しいぐらいの曲です。

藍染：一番最初の〈生理じゃないのにイライラしてるな〉って、「そうなんよね」って。やっぱり基本的にイライラしてるんで。自身もそうですし、SNSを見ててもずっとイライラしてるので、歌わせてもらえて嬉しいです。

ーー今、私にはイライラしてないですか？

藍染：してないです、まったく！

ーー藍染さん、息もせずに話し続けますよね。

大森：時間に対して情報量が多い私のインタビューがうつりました。インタビューはこうやってするものだと刷りこまれて（笑）。

ーー（笑）。「CO LO s NA」は大沢伸一さん編曲で、ローファイっぽいサウンドもありますね。大沢さんとはどういう話をしたんですか？

大森：最初は歌詞も違う形だったんですけど、「好きなように壊していいんで、かっこよくして一発目でかませるのください、殺しあいをしてください」って。それで繰り返しでパートが増えたりしてますね。大沢さん、クラブシーンで成功しているかっこいい人じゃないですか。でも、大沢さんのサイトで服を頼むと、大沢さん自身が段ボールに「FUCK」みたいなこと書いて送ってきたりするんですよ。そんな感じがすごい大好きで、なんか自分にも通じるところあるなと思うんです。おまけの缶バッジが「Punk」と「Straight Edge」で「私じゃん！」って（笑）。グッとくる歌詞が書けたら、それに共鳴してかっこいいのをくれるっていう信頼があって。開始5秒ぐらいで、私たちが「足りない」って言ってるのに轢き殺されているみたいな音が入ってて、そこがお気に入りです（笑）。

藍染：殺されて始まる（笑）。

ーー2曲目「CUTTING EDGE」はクラムボン ミトさん編曲で爽快なサウンドですが、これも何も言わず？

大森：ミトさんがアレンジしたYUKIさんの「惑星に乗れ」っていう曲の浮遊感が好きで、その浮遊感もありつつ、アニソンのときのミトさんのかっちり決めていく感じもありつつ、でもエッジの効いた今の女の子しか歌えないもの、っていうのを全部盛りでくださいって言いました（笑）。

ーー歌詞の〈そうだってお金払って / 見守りたいのは成長過程という / 自分殺戮ショー〉というのはアイドルについてですよね？

大森：アイドルについてです。

ーーメタですね。

大森：ZOCは基本メタです。

ーーこの歌詞を見て、藍染さんと巫さんはどう受け止めましたか？

巫：これを小学生くらいから思っていたんです。歌詞がそういうすごい大事なことを言っていて、でも曲調は爽やかで、そのバランスがすごく好きです。押しつけがましい曲は聴いてて疲れちゃうけど（笑）、「CUTTING EDGE」は流れるように、でも忘れられない言葉がたくさん詰まっているので、何回も聴きたくなるし、何度も見直したくなる歌詞だなって思います。

藍染：やっていくべきこと、伝えていくべきことが一番まっすぐに入っている曲だなと思っていて。この曲はレコーディングしたときに靖子さんが技術的な面でもとてもこだわってくださって、私は一番録り直してるんですよ。「もっといけるよ」って録ってもらった曲なんです。一番がんばった曲がまっすぐ伝えられる曲で嬉しいです。ミトさんもマイクをひとりひとり変えてくださって、すごいこだわってくださって。大事にしていきたい曲が、また新しくできてくれたなって思います

ーー大森さんは藍染さんの歌のどんなところを録り直したんですか？

大森：「嘘をつけば出せる」っていうのがあって、レコーディングだとみんなそれを一回どうしてもやりたくなるんですね。それは伝えようとしてる歌がなかったりするよね、って。今は宅録も多いし、マイクとの数十センチの間で伝えられればいいっていう人も多いし、そういうスタイルの人はいいけど、私たちはライブで育ったアーティストだから、やっぱりそこで嘘をついちゃいけない。もっと広いところとか、誰に歌っているかを想像して歌ってないと、それは嘘だよねっていうのを何回も煽りました。

ーー6曲目の「LiBiDo FUSION」と8曲目の「濃♡厚♡接♡触」は大久保薫さん編曲で、歌謡曲っぽいですよね。大森さんはどういうディレクションをしたんですか？

大森：メンバーによりますよね。まろはおうちですごく作ってくるタイプなので、それが「LiBiDo FUSION」では完全に正解。「こういう私」っていうの決めて、それがハマってたんだけど、それを壊したくなるときもあるので、その時はもう「変えてください」っていろいろやってみて、それにトライしてもらうっていう感じです。

巫：自分に「こうしてほしい」という要望をいただけることが嬉しいので、完璧にできているかはわかんないけど、トライしてみようって思います。「LiBiDo FUSION」と「濃♡厚♡接♡触」は、わりと自分で作ってきた部分があるんです。「FLY IN THE DEEPRIVER」はふだんの自分が練習してくる歌い方ではまず生まれないような歌を指導していただきました。

大森：1文字ずつだよね。｢眼球でGO!」の〈見えないのもまた都合いいかも❤〉の〈都合いいかも〉は、もっと悪い女で歌ってくださいとか（笑）。藍染は何個か変なキャラ持ってくるときあります。

藍染：でも、「その人、今いらないでーす」って言われて（笑）。

巫：「LiBiDo FUSION」にめっちゃ出てた（笑）。

藍染：何人か連れてきて、それを剥がす作業をさせて申し訳ないなって（笑）。

巫：みんなで聴いて「どうしたの？」って（笑）。

藍染：ZOCでセクシーな曲がなかったから、テンション上がっちゃった（笑）。

大森：そしたら知らない人が出てきた（笑）。面白いです。