ZOCはメジャーシーンでどんな人々に届いていくのか 再始動ワンマンライブ『AGE OF ZOC』で表出したグループの意義
2020年10月1日、ZOC再始動ワンマンライブ『AGE OF ZOC』が中野サンプラザで開催された。ZOCの有観客ライブは約7カ月ぶり。2020年3月27日に加入した巫まろにとっては初の有観客ライブだった。
この日のアンコールでは、新衣装を着たメンバーからいくつかの発表が行われた。まず、2021年の年明けに<avex trax>からメジャーデビューすること。プロデューサー兼メンバーの「共犯者」である大森靖子が社長となり、株式会社TOKYO PINKを設立すること。そして、同じく「共犯者」として振り付けを担当し、この日のライブにも参加していたrikoが「雅雀り子」(ヤチアリコ)として正式加入すること。
香椎かてぃは、活動休止を挟んだ夏を振り返り、「自分がしっかりしないと、みんなが壊れてしまう」と考えたと語り、西井万理那も中野サンプラザ公演が「楽しみ半分、恐いの半分」だったと述べた。「死にたいなって思った」という時期もあったと語ったのは巫まろだ。
メンバーがそれぞれの想いを吐露するなかで私が一番驚いたのは、大森靖子が泣きじゃくったことだった。社長になると発表したときに「てっぺんとりにいきます、よろしくお願いします!」と強気に言ったのとは打って変わり、泣きながら早口で話すので、うまく聞きとれない。
以下、大森靖子の発言を私の解釈で補足しつつまとめる。正確な言い回しは、このライブレポートが掲載される頃には公開されているであろう、ライブの配信アーカイブを見てほしい。
大森靖子は語った。乙女心は世界でいちばん早い生き物で、それを一番早く歌にするのが自分の仕事であり、多様性も歌ってきたが、理解されないことが多かった。それを自分だけではなく、それぞれの魅力を持つ女の子たちと歌っていけたら素敵だろうと思い、ZOCを作った。時代は作るものではなく、自分の背後にあるものだし、追いついてくるものだ。「ほら、これだよ」と見せていきたい、と。
そして歌われたのが、メジャーデビュー曲だった。曲名は、この日の公演と同じ「AGE OF ZOC」である。
『AGE OF ZOC』は、ZOCにとって2回目のワンマンライブでもあった。開演前にスポットライトが照らしていたのは、ステージ上のクマのぬいぐるみ。バラの花で飾られているが、目や口は縫われている。そして開演して幕が上がると、ステージ上にはサイバーパンクのように鉄骨が這っていた。後に語られたが、それは川崎のイメージだそうだ。
2020年7月、大森靖子は私がインタビューした際に(参考)、ZOC始動時をこう振り返った。
「ZOCを始めてから、『裏切られました』みたいなことをめちゃくちゃ言われていたんですよ。その人の『大森靖子像』みたいなものがあって、『若い子と一緒にルッキズムを振りかざしてる』みたいに見えちゃったんでしょうね」
そんな誤解を受けながら、ZOCの存在についてこうも語った。
「『全員に理解されたい』とか『全員に伝えてちょっとでも世の中を良くしたい』みたいなことを発信するのはZOCでやるので」
ZOCには社会的な意義があり、だからこそポピュラリティーを得ることを目指す。そんなZOCの特性は、『AGE OF ZOC』においても必然的に表出していた。
『AGE OF ZOC』の前半の楽曲群は、「断捨離彼氏」をはじめ、どれもビートが強い。改めて見ると、ZOCはこれほど踊るグループなのかと感じてしまうほどだ。
「family name」や「A INNOCENCE」は、まさにZOCの活動の方向性の軸となってきた楽曲だろう。過去を抱えて現在を生きる。一方で、YouTubeのMV再生数で言えば、もっとも多いのは「ヒアルロンリーガール」だ。〈君を注入してかわいくなりたい〉と歌う楽曲であり、女の子自身の選択を歌った「GIRL'S GIRL」と並んで、メインストリームに対してZOCがいかにオルタナティブな存在かを示す楽曲でもある。