TAKU INOUE、メジャーデビューで贈る“クラブ賛歌” 様々なカルチャーの重なりから届けるイノタク流ポップス

TAKU INOUE「3時12分」インタビュー

 気鋭の音楽プロデューサーTAKU INOUEが、7月14日にTOY’S FACTORY内の新レーベルVIAより、デジタルシングル「3時12分」でメジャーデビューした。これまで、DAOKO、Eve、月ノ美兎、STU48、ナナヲアカリ、ano、HOWL BE QUIET、WEAKEND WALKERなどの楽曲を手がけてきた時代が誇るプロデューサーであるTAKU INOUE。ソロプロジェクト始動にあたり、「3時12分」のフィーチャリングシンガーに、YouTube登録者数100万人を誇るVTuber・星街すいせいを迎えた。

 やわらかなビートに〈夜はもう折り返しらしい〉という胸に突き刺さるパワーフレーズ。せつなくも心踊るリリックとメロディ、そして圧巻の歌唱力のケミストリーから生まれる高揚感。夜の街に煌めく新感覚のエモーショナルなミッドナイト・ミドル・チューンがここに完成した。(ふくりゅう/音楽コンシェルジュ)

10年ぶりに挑戦した、制限やテーマがない作品づくり

TAKU INOUE(写真=藤本孝之)

ーーTAKUさんが手がけてきた作品ってEveやDAOKOなど気になる曲が多くて。この数年、ネット文化の躍進やコロナ禍の影響もあって音楽シーンはガラッと変わってきたと思うのですが、そんななかTAKU INOUEさんが関わられてきた作品のパワーを強烈に感じていました。

TAKU INOUE:ありがとうございます。

ーーTAKUさんの音楽家ヒストリーを振り返るにあたって鍵となるのが、バンダイナムコゲームス(現バンダイナムコスタジオ)に入社されてゲーム音楽を作られていたことですよね。

TAKU INOUE:はい、ゲームは小さい頃から好きで音楽も好きで。中学生に入ってバンドを組んで、大学生になって札幌から東京に出てきました。大学で組んだバンドで商業の仕事をはじめるようになって、ソニーさんにお世話になってCDやアナログをリリースしました。あと、UNICORNや玉置成実さんのリミックスとかもやって。でも、音楽で食べていけるとはそんなに思っていなかったんです。そんななか大学院を終え、どうしようかなと。

ーーどんな勉強をしていたんですか?

TAKU INOUE:大学ではポルトガル語をやっていました。そこから違う大学で図書館情報学を学んだり。で、そろそろ就活しなければとなったときに楽器メーカーの営業などを受けていました。その中でゲーム会社でサウンドを作るのっていいなと思いついて。福利厚生もしっかりしてそうで親にも言いやすいし(笑)。『塊魂』というゲームが好きだったので、ナムコだけ記念受験のつもりでデモテープを送ったら、なんと採用してもらえたんです。

ーーゲーム会社での経験は大きそうですね。

TAKU INOUE:そうですね。ゲーム会社での10年間は、様々なジャンルの曲を作る必要性があったので。曲だけじゃなくて効果音を作ったり、ゲーム全体のサウンドディレクションをやったり。トータルでみる仕事もたくさんあったので視点が広がりました。

ーーゲームサウンドは没入感を大切にしたり、ユーザーが何度も何度もリピートしても飽きさせない工夫とか、実はサブスク時代、今の音楽シーンにおいても通じる課題解決の場となっていそうで。最近、Appleもソニーもアマゾンも立体音響に力を入れていて。Netflixもドルビーアトモス対応になって、没入感が大事な時代ですね。

TAKU INOUE:そうそう、僕もゲームでは立体音響もやってましたね。

ーーそんななか、TAKU INOUEソロプロジェクトが始動しました。請負のプロデュースワークではない、自分主導のプロジェクトとなると、まずどんなコンセプトを考えられましたか?

TAKU INOUE:制限やテーマがないところから作品を作るということを10年間やっていなかったので、すっかり方法論を忘れていました。どうしようって思った時に、まずボーカリストを立てようと思ったんです。

TAKU INOUE(写真=藤本孝之)

ーーフィーチャリングで起用された星街すいせいさんの歌声、どんなところに魅力を感じられたのでしょうか?

TAKU INOUE:彼女が僕のプロデュースワークを好きと言ってくれたところからだったんですが、聴かせていただいたら素晴らしい歌声で。デモを送ったら1日で仮歌を戻してくれて。それがまた的確で。やりとりもスムーズだったんですよ。

ーー出会うべくして出会ったということなんでしょうね。「3時12分」の中にある〈夜はもう折り返しらしい〉というフレーズがタイトルにもかかっていてとても好きで。

TAKU INOUE:最初からクラブ賛歌にしようと思って作りました。コロナ禍で、自分のDJ出演もがくっと減り、というかほぼゼロですよね。遊びに行く機会も減ってしまって。クラブで遊びたいという気持ちを吐露した歌詞ですね。

ーー歌詞の一言一言がとても熱があって強いんですよ。

TAKU INOUE:そうかもしれないですね。自分にしては珍しく、気持ちをあらわした歌詞になっています。フレーズでいうと〈こないでこないで次の朝よ〉という想いは常々遊びに行くときに思う心情ですよね。そこをサビに持ってこようと、早い段階から決めていました。そして、強い言葉でつないでいきたかったんです。〈僕ら死ぬまで〉とか〈世界を変えにいく夢〉とか。ちょっと気が大きくなったときの表現なんですけど。言葉はわりとスムーズに出てきました。

ーーイントロから没入感が高くてメロディアスで深みある世界観を感じられて。弾き語りでも通用する楽曲だと思いますが、見事なアレンジメントを施されていて。ドープにキラキラしたまさにTAKU INOUEワールドですよね。

TAKU INOUE:目的は、星街すいせいさんの歌声を生かすことだったので、それに伴うアレンジなんですよ。ソロ一発目となる作品なので、最初はもっと勢いある盛り上がれる曲がいいと思ったんですけど、悩んで。一番しっくりきたのが「3時12分」だったんです。クライアントワークではなかなかやれない、ミドルテンポをやってみたいという気持ちがありました。

ーーいい意味で、意外性を感じましたから。

TAKU INOUE:ドキドキしてましたね。でも、ミドルテンポだけど派手な部分もあるし。聴き応えもあるしいいですね、という声を周りのスタッフからいただけたのが嬉しくて。

「3時12分 / TAKU INOUE & 星街すいせい」MUSIC VIDEO

ーークラブカルチャーって体験重視なところがあって。僕の中ではクラブで遊んで、途中抜け出してご飯を食べに行ってみたりとか。帰り道で駒沢公園の夜カフェに寄るとか。そんな時にふとこの曲が聴こえてきそうだなって。かけがえのない経験になるんですよね。三宿のWEBとか思い出しちゃいましたね。コロナで無くなっちゃいましたけど……。聴く人それぞれ、クラブ云々に関わらず思い出のキーとなる曲になるなって思いました。

TAKU INOUE:クラブ的な感覚も伝わって欲しいと思いますし、曲としては普遍性を持たせたかったので抽象的な歌詞にしてあるんですよ。それは常々クライアントワークでも考えていることなんです。自分の体験と照らし合わせて、リスナー各々が自分の世界観を広げてくれたらなって。

ーーリズムの使い方もおもしろいですよね。あと、イントロの街の雑踏の環境音。こだわりのSEが世界観を生み出しているのだと思います。没入感高い音作りがとてもよくて。

TAKU INOUE:音作りに関しては、歌詞にもあるんですけど〈不安定で歪〉という、それってクラブの良さだと思っているんですけど。不安定な響きであったり、そんなニュアンスな音にしたかったんです。最終的には2ミックスのときにあえて歪ませてみたり。普通じゃない感じにしたかったんです。

ーーちなみに、ソロプロジェクトをスタートするにあたって作品は、数曲候補などあったんですか?

TAKU INOUE:いえ、今回は星街すいせいさんありきだったので。アイデア段階で4小節ぐらいイメージを浮かべて、作っては捨てを繰り返していました。けっこう悩みましたね。

TAKU INOUE(写真=藤本孝之)

ーー今回、デビュー曲「3時12分」をリリースするのは、新レーベルVIAからとなりますがいかがでした?

TAKU INOUE:ネットに特化したレーベルなのでいいなと思いました。自分のスタイルに合っていると思います。

ーーここ数年、ネット発カルチャーが盛り上がっていますが、今やどんなビッグネームでもネットを活用したリリース、プロモーションが当たり前の時代となりましたよね。

TAKU INOUE:ほんと、そうですよね。

ーーそんな時代のなか、TAKU INOUEらしさを表現するサウンドってどんな要素だと思っていますか?

TAKU INOUE:聴いたらすぐわかるねって言われがちなんですよ。でも、その理由を常々考えていて。いつも同じ楽器を使っているわけではないし、でもよく言われるのは奥行きがあるよねって。後ろからふわっと包まれているような気がするって、そんな空間の広さというのはこだわって作ってきましたね。後、ドラムフィルが特徴的だねとも言われます。

ーーサウンドフィールドの奥行き、空間の取り方を意識された理由はあるんですか?

TAKU INOUE:曲の向こうに何かある感じが、自分でも聴いていて好きなんですよ。イマジネーションをより掻き立てるというか。

ーーそれって、ゲームカルチャーがひとつのルーツにあることが大きいんじゃないですか?

TAKU INOUE:ああ、あるのかな。あと、曲のバックグラウンドを意識することはありますね。曲だけでなく、周辺にあるストーリーとか。それは聴くリスナーそれぞれで感じてくれればいいんですけど。広がりというのは意識しますね。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる