TAKU INOUE、篠崎あやと、ケビン・ペンキン……クリエイター陣が魅力を際立たせるアニメ/声優ソング

 アニメ/声優ソングが面白い理由のひとつとして、才能に溢れたクリエイターやミュージシャンたちが制作の現場に携わっていることが挙げられます。作詞家、作曲家、編曲家、演奏家といったそれぞれの分野のスペシャリストが、アニメ作品やフロントに立つ歌い手・演者の魅力をより際立させるために磨き上げた音楽。プロの音楽家だからこそ生み出すことのできる輝きが、そこには詰まっているのです。アニメ/声優ソング周辺のオススメ新譜を紹介する本連載。今回は、参加しているクリエイター/ミュージシャンの観点から注目の作品をピックアップします。

 まずはコンポーザー/DJとして活躍するTAKU INOUEの関連作をまとめて紹介。かつてゲーム会社のバンダイナムコスタジオ(BNSI)にサウンドクリエイターとして所属し、『鉄拳』『アイドルマスター』シリーズといった人気作の音楽を手がける傍ら、外部への楽曲提供やリミックス、DJなども行っていた彼は、2018年に同社を退社後、フリーの音楽家として活動を開始。現在はトイズファクトリーにアーティストとして籍を置き、DAOKOやSTU48への楽曲提供、HOWL BE QUIETのサウンドプロデュースなど、アニメやゲーム音楽に限らず幅広いフィールドでその腕を振るっています。

Liyuu「Magic Words」

 そんな彼が作詞/作曲/編曲のすべてをトータルで手がけたのが(作詞は別名のMC TC名義)、中国出身の人気コスプレイヤーであるLiyuuのデビューシングル曲「Magic Words」。TVアニメ『はてな☆イリュージョン』のOPテーマでもあるこの楽曲は、2ステップ〜UKガラージをマッシブ化したようなダンスビートと、Liyuu自身のフルーティーなスイートボイスがギュっと凝縮した、Kawaii系フューチャーベースの究極進化系と言えそうな仕上がりに。この両者によるタッグ、実は昨年、アプリゲーム『ドラガリアロスト』の挿入歌として発表された、セイレーン starring Liyuu「Polaris」と「Singing In The Rain」に続くもの。リキッドファンク系の爽快な高速ドラムンベース「Polaris」、ローテンポの幻想的なベースミュージック「Singing In The Rain」と、そのどちらもが最先端のダンスミュージックの要素を取り入れたサウンドだったので、それらの成果を踏まえたうえで出来上がったのが、今回の「Magic Words」なのかもしれません。

Liyuu – Magic Words(TVアニメ「はてな☆イリュージョン」OP主題歌) 1cho. ver
「ミラーボール・ラブ」

 そしてもう1曲、アプリゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』より、同じくTAKU INOUEが作詞/作曲/編曲を担当した楽曲「ミラーボール・ラブ」が、2月19日リリースのCD『THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 3chord for the Dance!』のボーナストラックとして初CD化されることに。昨年11月にナゴヤドームで開催された『シンデレラガールズ』の7thライブ名古屋公演において初披露されたこの楽曲は、サウンド的にはいわゆるエレクトロスウィングの範疇に入るであろう、ホーンのサウンドをエディットしたファンキーなハウス調。そこに宮本フレデリカ(CV:野麻美)、棟方愛海(CV:藤本彩花)、及川雫(CV:のぐちゆり)、荒木比奈(CV:田辺留依)、姫川友紀(CV:杜野まこ)という5人のキャラクターによる華やかな歌唱が合わさることで、ダンスフロアを彩るミラーボールのように煌びやかな楽曲になっています。TAKU INOUEと『アイマス』の組み合わせと言えば、ブラジリアンドラムンベースとキャラソンを融合した我那覇響(CV:沼倉愛美)の大名曲「Pon De Beach」をはじめ、「Hotel Moonside」「Radio Happy」「クレイジークレイジー」など数々のクラブアンセムを生み出してきただけに、この曲も今後フロアの定番曲になることは間違いないでしょう。

【アイドルマスター】「クレイジークレイジー(M@STER VERSION)」(歌:一ノ瀬志希、宮本フレデリカ)

 お次は、このところ話題作を連発している注目のクリエイター、篠崎あやとの関連作をセレクト。ヒゲドライバーやゆよゆっぺらが在籍する音楽事務所、TOKYO LOGICに在籍する彼は、作家業とは別にハードコアテクノ〜ハードスタイル系の音楽ユニット、Massive New Krewのメンバーとしても活動。DJやライブに加え、『beatmania』などの音ゲーにも楽曲提供を行うなど、マルチな才能を発揮しています。そんな彼は昨年、TVアニメ『ダンベル何キロ持てる?』のOPテーマ「お願いマッスル」の作編曲をシックスパック篠崎名義で担当(作曲はサイドチェスト烏屋こと烏屋茶房との共作)。筋トレをテーマにした作品ならではのユーモラスな歌とマッチョな合いの手、70年代のディスコ曲「ジンギスカン」を今っぽくアレンジしたようなノリの良さが受けたのか、2019年のキャラソンを代表するようなヒットになりました。

「イこうぜ☆パラダイス」

 その流れを汲むような(いい意味での)バカバカしさ満載な楽曲が、今期のTVアニメ『異種族レビュアーズ』のOPテーマ「イこうぜ☆パラダイス」。この『異種族レビュアーズ』という作品、エルフから天使まで多種多様な種族が暮らす世界を舞台に、いろんな種族とムフフなことができる風俗店での体験を主人公たちがレビューするという、こうして説明するのもアレな内容なのですが(ちなみにTOKYO MXでは第5話以降の放送が中止に)、メインキャラのスタンク(CV:間島淳司)、ゼル(CV:小林裕介)、クリムヴェール(CV:富田美憂)が歌う「イこうぜ☆パラダイス」は、まさに彼らのスケベ心をそのまま形にしたような“迷曲”に。歌詞に〈抜こうぜ 己の武器を〉〈天国イこう!生死かけて!〉といったダブルミーニングを大胆に忍ばせつつ、楽曲のアレンジはこれまた70年代のディスコヒット、Village People「Y.M.C.A.」(西城秀樹「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」の原曲)を引用したキャッチーなものに仕上がっていて、下ネタとはいえこの完成度は感服せざるを得ません。ちなみに本楽曲における、篠崎のクレジット上の名義はゴールデンボール篠崎。共作者のビッグマグナム橘とは、Massive New Krewの相方で同じく作家活動も行う橘亮祐のことです。

TVアニメ「異種族レビュアーズ」オープニングテーマ 視聴動画
東山奈央『歩いていこう!』

 これだけだと彼は飛び道具的な曲ばかり書く人のように思われるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。声優の東山奈央がリリースしたばかりのニューシングル『歩いていこう!』のアニメ盤のみに収録されているカップリング曲「FLOWER」も、篠崎と橘が共同で作詞/作曲/編曲を行っているのですが、こちらはいつか大きく花開くために夢に向かって進む心情を描いたエモーショナルなピアノロックチューン。その他にも、最近だとTVアニメ『世話やきキツネの仙狐さん』の仙狐(CV:和氣あず未)が歌うEDテーマ「もっふもふ DE よいのじゃよ」のキュートなラップ調、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の「comic cosmic」(作詞は只野菜摘、作編曲は篠崎と橘の共作)における賑やかなアイドルソングなど、いろんな曲調の楽曲を作れるうえに、いずれにも楽しく盛り上がれるキャッチーさがあるところが、彼の持ち味なのかもしれません。

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