9mm Parabellum Bullet、『BABEL』&インディーズ2作を再現したツアー初日 爆音に乗せて届けた感謝と決意
休憩を挟んで幕を開けた第二部はインディーズ盤の再現。改めて見慣れたバックドロップが掲げられ、こちらもおなじみ、Atari Teenage Riotの爆音に乗せてメンバーが登場する。ここからはメンバー4人だけでのパフォーマンスだ。ステージの立ち位置もいつも通り、マイクの前に立つ菅原もさっきとは打って変わってリラックスした表情だ。「改めまして、9mm Parabellum Bulletです! みんな、楽しんでるか? いけるか?」。そんな叫びとともに1stミニアルバム『Gjallarhorn』の1曲目、9mmの名刺となった「(teenage)disaster」が鳴り渡り、第一幕では少し緊張感が漂っていたフロアも堰を切ったように沸騰する。
立て続けに「Talking Machine」。ライブで死ぬほど聴いてきた曲だが、『BABEL』の再現の後だとなおさら懐かしく感じるのはなぜだろう。かみじょうが叩くゆったりとしたリズムと滝のミニマルなリフから始まる「atmosphere」では終盤のカオスな展開が9mmのオリジナリティを改めて見せつける。お祭りビートの「Beautiful Target」ではサオのふたりが好き勝手暴れ回り、滝は暴れすぎてギターで顔面強打しているが、それでも轟音は止まらない。最後は「farther」の重厚なサウンドで『Gjallarhorn』パートを締め括ると、ここでようやくこの日初めてのMC。菅原は「どうもありがとう」と笑顔を見せる。
「みんな、来てくれて本当にありがとう」とこのコロナ禍の中でも足を運んでくれたファンに改めて感謝の思いを伝えると、「いろんな制限の中ではありますが、こうやって時間を共有することができて。こういうことをひとつでも増やして、元に戻るというのとは違う、新しい形を作れたらいいと思います」と再びツアーを回る今の決意を言葉にする菅原。そのMCがきっかけになったのか、そこから突入したこの日最後のパート、つまりミニアルバム『Phantomime』の再現セクションではいっそう感情の溢れるライブが展開していった。
じつは個人的にこの日楽しみにしていたのはまさにこの『Phantomime』パートだった。というのも、9mmのヘヴィでハード、でも歌謡的、という画期的な個性を確立させたのはこの作品だったのではないかと思うからだ。「Caucasus」の流れるようなメロディ、リフとリズムの緩急と歌のエモーションが完全に同期しながらぐんぐんとスケールを広げていくような「Mr.Suicide」。『BABEL』にも、そしてその後の作品にも確かに息づく9mmの遺伝子が、もっとも純粋な形で表現されていく。
当たり前だが音源の何倍もスリリングに突っ走る「Vortex」を経て、いよいよこの日のライブもクライマックス。「少年の声」でジャキジャキと空気を切り刻むような滝のギターがメランコリックな感情を増幅させると、最後は高速ビートとメタリックなリフが冴え渡る「sector」。菅原と滝の、ほとんどツインボーカルといっていい掛け合いから、カオスと静寂を自在に行き来する2分半。最後はグジャグジャのノイズが放出される中、菅原は「ありがとう!」と大声で叫んだ。