K-POP、ジェンダーレスなスタイリングはいつから始まった? 日本のボーイズグループにも影響与えるヘアメイク

 韓国で近年話題になっているのが、コスメ広告における男性アイドルのメイクアップだ。韓国の特に若年層向けコスメ広告では、主な顧客層である「若い女性」を狙って男性アイドルが広告モデルをつとめる事は10年以上前から珍しくはなかったが、あくまでも広告に出演しているだけ、もしくはスキンケアラインがメインだった。しかし2018年ごろからメイクアップラインの広告に出演する男性アイドル自身が実際のメイクモデルになる例が増加しており、昨年から今年にかけてもCLIOのStray Kidsやキム・ウソク、TONY MOLYのキム・ヨハン、Urban DecayのMONSTA XやGIVENCHYのカン・ダニエルなど、韓国ブランドだけではなく海外ブランドでも珍しくない。

 このようなメンズ/ジェンダーレスメイクやハイカラーに染めたヘアスタイルなど、K-POPアーティストが表現してきたスタイリングは近年の日本のボーイズグループにも影響を与えていると言われるが、現在のような「K-POPアーティストならでは」と認識されるようなスタイリングが生まれるまでのヘアメイクの歴史について紐解いてみたい。

 90年代末、「ソテジと子供たち」が登場した当時は、まだカラーヘアやメイクはほとんどなかったようだ。カラーウィッグをかぶったグラビアなどはあったものの、どちらかといえば当時アジア圏で流行していた「ザ・キング・オブ・ファイターズ」のような格闘ゲームのキャラクターからの影響を感じる。その後デビューしたH.O.TやSECHSKIESではピアスなどのアクセサリーをつけたり、テクノカットやメッシュといった日本でも80年代〜90年代に流行したようなスタイルが登場し始め、2000年代前半の神話〜東方神起のデビュー期には日本のビジュアル系のような過激なヘアスタイルや白塗りメイクが登場したこともあった。

Seo Taiji&Boys – Come Back Home, 서태지와 아이들 – 컴백홈, MBC Top Music 19951124
Sechs Kies – Chivalry, 젝스키스 – 기사도, MBC Top Music 19980110

 SUPER JUNIORがデビューした2005年前後のスタリングは、どちらかと言えばデビュー時のKAT-TUNのような当時のジャニーズの影響を思わせる髪型やブリーチングのスタイルが多い。2008年にSHINeeがデビューした時は少年らしいカラフルなスタイリングが異色で話題になったほど、どちらかといえば2000年代前期までは「男性性」を強調するような方向性のスタイリングの方が多く見られていた。

SUPER JUNIOR 슈퍼주니어 ‘Twins (Knock Out)’ MV
SHINee 샤이니 ‘누난 너무 예뻐 (Replay)’ MV

 この流れの延長上で、最初の「アイドルのメンズメイク」の流行を作ったのがSHINeeと同時期にデビューした2PMだろう。2PMが大ブレイクした「HEARTBEAT」でのスタイリングは、鍛えた体に全身モノトーンで髪色もほぼ黒、そしてスモーキーアイと呼ばれる目周りを囲んだダークなアイメイクがインパクト大だったこともあり、2009年〜2011年くらいまでは男子アイドルの間でスモーキートーンのアイメイクや髪型も含めハードでマスキュリンなイメージのスタイリングが流行した。キラキラカラフル路線でデビューしたSHINeeも、2009年にリリースした「Ring Ding Dong」ではハードめなスタイリングにスイッチしていたが、2PM「HEARTBEAT」のブレイク後にリリースされた「Lucifer」ではスタイリングに加えてはっきりとしたアイメイクが加わっている。当時韓国のメイクトレンドで「カムサアラ」と呼ばれるくっきりと太いアイライン(サインペンの略語「カムサ」とアイラインの略「アラ」を合わせた言葉で、サインペンで目にアイラインを描くこと)が流行すると、2013年くらいまでは女子アイドルだけではなく男子グループのメイクでもよく見られるようになり、BTSも2014年の「Boy In Luv」まではこれに近いメイクスタイルを多用していた。この時代までの男子アイドルのメイクは、「ジェンダーレス」というよりはスタイリングに負けないようなインパクトや力強さを表現するためという意味合いが強かったようだ。

2PM “Heartbeat” M/V
[MV] BTS(방탄소년단) _ Boy In Luv(상남자)

 一方、ヘアカラーに目を向けると、最も大きな影響をもたらしたのはG-DRAGONとBIGBANGではないだろうか。BIGBANGは2008年頃まではブラックカルチャーの影響を受けた編み込みやパンキッシュなスタイリングはしていたものの、メイクや派手なカラーリングはしていなかった。しかし、2009年にリリースされたG-DRAGONのソロ「HEARTBREAKER」でのほぼ白髪に近いハードブリーチングは、2000年代前半によく見られた地の髪色をベースにした脱色やナチュラルなカラーリングとは一線を画していた。海外のファンからは「アニメキャラのよう」と表現されることもあるK-POPのシグネチャーともなったカラフルなヘアカラーは、ほぼプラチナに近いくらいのブリーチをかけることで実現するものだ。プラチナカラーまで色を抜くスタイルがメジャーなアイドルシーンでも現れた事で、それ以降のカラフルな髪色への布石が出来たと言えるのではないだろうか。2012年にリリースされたBIGBANG「FANTASTIC BABY」は、メイクは黒のアイラインベースだが大胆なヘアカラーや部分カラー、ロングのカラーエクステンションなど、2021年のKPOPの男子アイドルでは普通に見られるスタイリングがほぼ初めて登場したMVと言っても良いだろう。

BIGBANG – FANTASTIC BABY M/V

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