モモコグミカンパニーが紡ぐ言葉の吸引力 BiSHメンバー分析第3回
言葉の人。ライブパフォーマンスに定評ある“楽器を持たないパンクバンド”BiSHの初期メンバー、モモコグミカンパニーに捧げたいフレーズである。メンバー随一の文才を評価される彼女は、過去に2冊の著書を刊行。楽曲に対してメンバーから寄せられた歌詞がコンペ形式で選ばれるグループにおいて、モモコの作った歌詞の採用率は高い。彼女になぜ、惹きつけられるのか。その理由を探る。
オーディション参加の意外な動機「アイドルになりたい女の子を観察する」
彼女がグループへ加入した経緯は、いうなれば“興味本位”だった。大学時代。行きつけの本屋でたまたま見かけたオーディション雑誌を読むと、そこに書いてあったのはBiSHのオーディション情報。所属事務所であるWACKも、BiSHが結成されるきっかけになったグループ・BiSすらも知らなかった彼女は、ただただ「アイドルになりたい女の子を観察することを目的」にして、オーディションへ参加したと、著書『目を合わせるということ』で明かしている。
ささいなきっかけから、今や、1万人以上の観客を沸かせるグループの一員となったモモコ。合格後、しばらくは大学生活とBiSHの両立が続いた。過去に明かしているエピソードでは、2017年7月に行われたグループ初の幕張メッセでの単独ライブと、卒業論文の執筆が重なっていたと振り返っている。
アイドルと大学生。両立の苦労は想像にたやすいが、その末に彼女が書き上げた卒業論文のタイトルが「アイドルと演じること 一人の人間に見る虚像と偶像」だった。アイドルに関する論文はネット上でも数多くみかけるが、その当事者によるものはおそらく前例がない。
オーディションへ参加した経緯にしろ、卒業論文に自分自身を選んだ経緯にしろ、そこからにじむのは、モモコならではの探究心。おそらくそれが、彼女の持ち味である文才にも活かされているのだろう。