AKB48、ももクロ、でんぱ組.inc……“アイドル戦国時代”に刺激与えてきたグループの現在

 アイドル戦国時代と呼ばれ始めた時期から、約10年が経った。ちょうど10年前は、ももいろクローバーZと神聖かまってちゃんの伝説的なツーマンライブがおこなわれた。2月25日、SHIBUYA-AXで2組が激突したときの興奮は今も脳裏にはっきり刻まれている。当時は「アイドルなのにロックバンドとガチンコで対バン」は物珍しさがあった。禁断の領域へ踏み込んだようなワクワク感をいだいた。アイドルが仕掛けることの多くが新鮮に思えた時期。それこそがアイドル戦国時代だったのではないか。もももクロはそのなかでもかなり刺激的なグループだった。

 アイドルらしからぬハードなパフォーマンスとトリッキーさも備えた多彩な音楽性を誇る、ももクロ。インターネットを駆使しながら自分たちの表現世界を拡大する展開と内面をかきむしるようなロックンロールを鳴らす、神聖かまってちゃん。ファンも含めて、お互いがそれまで築き上げてきたスタイルと意地がぶつかり合った、心底楽しいライブだった。

 と、ここまで書いて引っかかりを持ってもらえるかもしれない。このときはまだ、褒め音葉ではあるが「アイドルなのに」「アイドルらしからぬ」という言葉がよく使われていた。私はこの言い回しが薄らぎはじめた頃が「アイドル戦国時代が終焉である」と考えるようになった。

「アイドル戦国時代」を煽ったAKB48、ももクロ、でんぱ組.inc

 全国でご当地アイドルやライブアイドルと呼ばれる地下アイドルも次々誕生し始めた2010年前後。大型イベント『アイドルユニットサマーフェスティバル2010』『TOKYO IDOL FESTIVAL』も開催。時には各グループが共演時にバトルモードに突入するなど血湧き肉躍るようなギラつきもあった。そういった賑わう情勢から「アイドル戦国時代」と表現されるようになった。

 「アイドル戦国時代」の終焉期の解釈は人それぞれだが、筆者個人は、2015年頃に寄稿したアイドル関連の記事ですでに「アイドル戦国時代は過ぎた」と書いていた。シーンを突き上げていたBiS、いずこねこが終わりを迎えたことや、ももいろクローバーZが国立競技場公演を成功させるなど途轍もなく大きな存在となったあたりから、戦国時代という狂騒的な季節は終わった実感を持った。メディアにはメジャー、インディーズにかかわらずアイドルが当たり前に登場し、SNSでも話題の中心のひとつになり、ロック色が強いライブハウスではアイドルイベントがたくさん組まれた(ライブハウスとしてもアイドルイベントは採算が見えやすかった)。もはやアイドルは内乱状態ではなく、壊すべき壁も少なくなり、いろんなジャンルとも共存できるようになった。世の中的に定着が進み、「アイドルらしからぬ」的な言葉も意味をなさなくなった。

 「アイドル戦国時代」勃発以降、アイドルと社会・時代の関係性は徐々に変化していった。なかでもAKB48、ももクロ、でんぱ組.incはその時代のアイドルシーンを煽った存在として、非常に役割が大きかった。

総選挙をおこなわないAKB48のこの先は?

AKB48 『失恋、ありがとう』(通常盤Type A)
AKB48 『失恋、ありがとう』(通常盤Type A)

 AKB48は特に、アイドルとは縁のない人たちも注目するトピックを多数設けた。後述するがたとえば総選挙の当日や翌日、スポーツ紙はそれ一色となり、他の話題を紙面で割いてもらえなくなるため、音楽や映画などエンタメ系のプロモーションの際「どんなネタでも総選挙日にはバッティングさせない」という鉄則があった。

 ご当地アイドルや地下アイドルの増加の一因は間違いなく、AKB48の大ヒットにある。大手芸能事務所はもちろん、小規模事務所も「ウチでもアイドルでビジネスができるんじゃないか」と後押しされるようにアイドル産業に乗り出した。

 AKB48は「現場主義」を掲げた点が大きい。専用劇場を持って連日のようにライブをひらく。アイドルはテレビや雑誌などメディアに出てナンボ……とは違った活動の形づくりを進めた。「アイドルは実際に会えるもの」という考え方や「ライブ中心」という方法を一般向けに印象づけ、現在のアイドルのフォーマットにもなった。

 一方でCDに握手券を封入したり、総選挙を開催したりするなどメンバー個別の人気を明確に数字化して順位づけるシステムも、賛否両論ありながらもチャレンジングだった。人気上位のメンバーと下位のメンバーは収入ほか待遇面でも差があったはず。何より個別握手会では、列の人数差が目に見えて分かるという現実を、メンバーに突きつけた。とてもシビアだ。これはメディアへの出演が中心ではなく、ライブなど現場主義だからこそのやり方。現存するアイドルグループの多くも、(特に地下は)特典会でのメンバーの人気順をはっきりさせることで、待遇面などに序列を設けている。アイドルグループの経営方針を分かりやすくモデル化したのが、AKB48ではないか。

 AKB48は、名物だった総選挙を2019年以降開催していない。特にコロナ禍となると、グループとして新たな魅力を生み出さなくてはならない。加えて今は、ライバル的存在の坂道シリーズのクリエイティビティが高く評価されている。日本のトップアイドルグループであるAKB48は「AKB48グループ歌唱力NO.1決定戦」などメンバーの実力面をアピールする企画も開催。変遷期を迎えているのは確かである。

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