AKB48、ももクロ、でんぱ組.inc……“アイドル戦国時代”に刺激与えてきたグループの現在
BiS、ゆるめるモ!などフォロワー的存在も生んだ、ももクロ
そんなAKB48を手本のひとつにしたのが、ももいろクローバーZだ。AKB48の「会いに行けるアイドル」というキャッチコピーに感化され、「いま、会えるアイドル」と打ち出した。ライブ冒頭「OVERTURE」があるのもAKB48の影響だという。路上ライブができなくなり、飯田橋ラムラでの定期ライブもお客が入りきらなくなって、その次に選んだ場所が秋葉原の石丸電気だった。これも秋葉原を拠点とするAKB48のファンに振り向いてもらうための思惑だった。
デビューして間もない頃のももクロは、ケレン味たっぷりで作為的な仕掛けの多さが非常におもしろかった。振り返ればももクロこそが「アイドル戦国時代」のシンボル的グループであり、その言葉に敏感に反応してはっきりリアクションを見せたのも、ももクロだった。玉井詩織の「ここが、この場所がアイドル界のど真ん中だ!」という宣言は、アイドル戦国時代にさらなる火をつけた。マネージャーの川上アキラがプロレス好きとあってそのあたりの揺さぶり方は実にうまい。
AKB48劇場の裏の路地でイベントをやるなど挑発的なことも繰り広げた。特典会では「メンバーと糸電話で話せる」といったユニークなアイデアも実施。連日開催のトークイベントでは政治家をゲストに招いたりと、それまでのアイドルの常識をどんどん覆していった。予算が少ないなかでどれだけおもしろいことができるか。そんな試みを実践するうちに、ももクロは既存のアイドルへのカウンターとなった。アイドルとそのほかのジャンルの間にあった壁を崩していったのは、ももクロではないだろうか。
「ココ☆ナツ」など曲のテイストや振付もユニークだった。後続のアイドルグループ、BiSは「行くぜっ!怪盗少女」(2010年)を元ネタとした振付の「nerve」(2011年)でムーブメントを起こした。BiSは、ももクロが2011年7月のアルバムリリース時に展開した街宣車キャンペーンの場に奇襲を企てるなど、かなり意識を向けていた。他にも、ゆるめるモ!はプロデューサーの田家大知がももクロにインスパイアされて立ち上げられた。2010年代を代表する人気アイドルグループとなり、間もなく結成10年目を迎えようとしている。ももクロの枠にとらわれない活動、企画、音楽性がその後のアイドルにも影響を与えた。
ももクロは、数年前から東京オリンピックを意識したイベントをおこなったり、全国各地の自治体とタッグを組んで催しをひらいたり、社会とコミットした企画をおこなっている。ここからまた、ももクロらしい創造が生まれそうな予感だ。