泣き虫、初ワンマンライブにも表れた“対”になるものが共存するスタンス

泣き虫、初ワンマンライブにも表れた“対”になるものが共存するスタンス

 4月2日、渋谷WWWにて泣き虫の初ワンマンライブ『rendez-vous』が開催された。

 SNSで若者を中心に人気を獲得している泣き虫。本人の情報がほとんど公開されていない泣き虫のワンマンライブは、映像の活用によって本人の匿名性をいかしながらも、姿を見せながらパフォーマンスするという二面性を持っていた。

 オープニング映像ののちにステージに姿を表した泣き虫。ステージ前方でキーボードと向かい合うように立つ泣き虫は、つまりオーディエンスから見ると横を向いていることになる。1曲目に演奏されたのは「君以外害。」。開幕直後にもかかわらず、サビでバンドと泣き虫の熱量が爆発するような勢いをみせる。ステージ後方から当たる照明は逆光になっていて、泣き虫のミステリアスさを引き立てていた。続けて「くしゃくしゃ。」を優しさと芯の強さが共存する声色で歌い上げる。ラスサビに差し掛かる直前のドラムのフィルがせつなさとやるせなさを強調するように響いた。

 自己紹介を挟み、久しぶりとなるライブに落ち着いた声で感謝を述べると、軽快なギターが特徴的な「ケロケ論リー。」を披露。続く「アルコール。」とともにテンポよく韻が踏まれた歌詞をハンドマイクで身体を揺らしながら歌唱した。

 〈棒人間〉と〈暴人間〉、〈愛担ってくれ〉〈灰になってくれ〉〈iになってくれ〉など、歌詞を読むことでより腑に落ちる「9」はスクリーンに歌詞が表示されるなかで演奏。この日のライブではほとんど全ての楽曲にリリックビデオなどの映像をスクリーンに映す演出がついていた。演奏を見ながら、迫力のあるバンドセットと張り上げる歌唱を受け止めるからこそ感じる勢いや身に染みる感情があるが、やはり映像とともに演奏されることで泣き虫の匿名性が目の前にいながらにして担保される面もあるだろう。

 1サビを〈死にたい〉、2サビを〈生きたい〉が埋めつくす「リスカ。」は、スクリーンにもそれぞれのリリックが画面を埋めつくした。1サビの終盤で黒背景に並ぶ「死にたい」の文字が柔らかくにじみ、2サビの「生きたい」は白く希望的に映し出されたのが印象的だ。ヒップホップの影響を感じる「夢遊。」ののちに、オリジナルではAdoをフィーチャリングした「Shake It Now.」を披露。楽曲がそれぞれ比較的短いことも手伝ってか、ジャンルに振れ幅がある泣き虫の守備範囲の広さがライブの雰囲気を次々と変える。「アイデンティティ。」では毒のある言葉がバンドの音とともに吐き出された。音源だけでは感じられない勢いが攻撃性を増し、声をあげずに見入るオーディエンスに突き刺さる。

泣き虫☔(写真=後藤壮太郎)

 「人生ではじめて作った楽曲です」と言って披露したのは「からくりドール。」。がらりと雰囲気を変えさわやかな「心配性。」、観客が自由に身を揺らす「カエル。」と続く。オーディエンスが声を出すことができないことを「映画みたい」と表現していた泣き虫。今回のライブが映像演出に力を入れているものであったことも含めての発言であるが、「カエル。」で手拍子を求め「いいね」と声をかける場面ではライブらしさが十二分にあった。

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