ソロアーティスト 泣き虫☔︎、ネットを介して広まる人気 多くの人の心を掴む歌声と音楽性の幅広さ

ソロアーティスト 泣き虫☔︎、ネットを介して広まる人気 多くの人の心を掴む歌声と音楽性の幅広さ

 まったく新しいタイプの表現者、“泣き虫☔︎”というソロアーティストをご存知だろうか? YouTubeチャンネルでの総視聴数は800万回オーバー。『Popteen』モデルや人気インフルエンサーにもシェアされたTikTokやツイキャスでのカバー曲人気、そしてYouTubeやストリーミングサービスで火がついたオリジナル曲によって注目されたアーティストだ。とはいえ、キャリア1年未満でメディア露出ゼロにも関わらず、その特徴的な歌声と歌詞の独創性によって、早耳の中高生を中心に人気が高まってきているのだから畏れ入る。

 まず、最新曲「心配性。」(2020年7月29日発表)を聴いて欲しい。妄想めいたリリックと日常が重なりあい、口ずさみたくなる切ないメロディが琴線に触れる。イラスト、リリックビデオ、動画とともにずば抜けてセンスがいい。

泣き虫☔︎ – 心配性。(Official Music Video – Full Size)

 泣き虫☔︎は、本名、素顔、年齢など現時点ではすべて非公表。特徴的なハスキーボイスと、今の時代らしく闇を感じさせながらも、キラキラと耳に残る流麗なるメロディが心を鷲掴みにする。作品の幅は広く、ジャンルやコミュニティなど、一切カテゴライズは不可能だ。

 注目されたきっかけもまさに自然発生だった。筆者もYouTubeやSpotifyなどストリーミングサービスで新しいアーティストを探していた時に偶然出会うことができた。あの時の感動はいまも覚えている。まさに、ネット時代の申し子と言うべき、アンファンテリブル=恐るべき新しい才能の登場だと感じた。

 ちなみに、筆者がドンハマりした曲とは、浜辺を歩く女の子のMVが印象的な「大迷惑星。」(2019年9月28日発表)だった。毎日更新されるSpotifyの日本バイラルトップ50に2週間以上連続リストインしたナンバーだ。歌い出しから、〈大嫌い〉と〈大迷惑〉と〈大好き〉が共存するインパクトと、涙を誘う切ない歌声が突き刺さった。

泣き虫☔︎ – 大迷惑星。(Official Music Video – Full Size)

大嫌いで、大迷惑な存在なんでしょう?
まあ、いいや。いやいやいやって過ごす今
大好きって、アンパイなんて存在しないでしょ。
まあ、いいや。まあ、いいや。
まあ、いっか。は?
(「大迷惑星。」より)

 なお、本作で泣き虫☔︎を知ったリスナーは多いようで、YouTubeにて泣き虫☔︎ソング歴最高峰の再生回数、490万再生(9月4日時点)を誇っている。

 泣き虫☔︎がリスナーに発見され注目されるスピード感でわかったのだが、ノンプロモーションながら、YouTubeで言えば“次の動画”という、“この曲を好きなあなたはこの曲も好きでしょ?”というレコメンデーション機能、ストリーミングサービスで言えばユーザーのリスニングデータをもとにしたAIレコメンデーション機能、筆者も選曲を担当しているオフィシャルプレイリストをはじめとしたプレイリストなどをきっかけに、リスナーとアーティストがネット上でもダイレクトにつながれるようになったことは、今の時代の光明なのかもしれない。

「キラキラポップ:ジャパン」

 それにしても泣き虫☔︎は不思議だ。米津玄師「ゴーゴー幽霊船」以降のボカロ文化圏や、神山羊「YELLOW」以降のTikTok文化圏、そのどちらでもあるような気がしつつも、それこそロック文化圏にも足を踏み込んでいるような魅力がある。くるり、ミツメ、藤井風、Vaundyなどを知る音楽ファンにも彼の音楽性は刺さるのではないだろうか。

 それこそKing Gnu好きにも聞いて欲しい。ギターとピアノが織りなすサウンドが初期衝動に火を灯す「君以外害。」(2019年9月15日発表)も熱い。〈離れられないくらい中毒性がもう。〉という一節は、まさにリスナーと泣き虫☔︎の関係性を言い表した言葉とも言えるだろう。

泣き虫☔︎ – 君以外害。(Official Music Video – Full Size)

 ロック色で言えば「ケロケ論リー。」(2020年4月24日発表)も良い。まったく事前予告なしで突如YouTubeへアップされた楽曲だ。最近のYouTubeでは事前にURLをアップするプレミア公開など、いろんな仕組みが存在する。しかしながら、そんなことは関係なくこれまでやってきたのが泣き虫☔︎流だ。楽曲が良ければ、自然と広がっていくというロマンを地でいく骨太な表現者なのだ。

泣き虫☔︎ – ケロケ論リー。(Official Music Video – Full Size)

 さらにチェックしたいのが洋楽シーンにもつながる革新性だ。ロックとヒップホップの境界線が溶け合い、距離感が近くなった2020年。そんな意味では「POISON.」(2020年6月29日発表)はドープだ。洋楽的な世界観にラップのような日本語のフローがゆらゆらとずっしりと心に響いていく。

泣き虫☔︎ – POISON.(Official Music Video – Full Size)

 TikTok文化圏であれば「くしゃくしゃ。」(2020年3月12日発表)という楽曲が刺さるだろう。学校が舞台のMVであったことから、コロナの影響などで卒業式ができなかった学生からの反響も大きかった。MVの教室で踊る制服姿のバレリーナ女子の佇まい。良質なメロディとともに上品に描かれたダンスシーンの輝き。青春の翳り、どんな出来事にも始まりと終わりが存在するという儚さが胸を突き動かす。

泣き虫☔︎ – くしゃくしゃ。(Official Music Video – Full Size)

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる