“新アイドル”誕生の歴史
ももいろクローバーZの歴史を紐解く 第4回:国立競技場ライブ~ソロ活動の活発化
メジャーアイドルのなかでもトップ人気を誇りながら、その地位に甘んじることなく常に人々の好奇心を刺激し、全力でおもしろいことを追求し続けている、ももいろクローバーZ。そんなももクロのヒストリーを紐解きながら、あらためてグループの魅力を掘り当てていく、この短期連載。第4回は、国立競技場でのライブやソロ活動の活発化について触れていく(第1回~第3回はこちら)。
初のスタジアムライブは「もっとできた」
『NHK紅白歌合戦』初出場から一夜明けた、2013年元日。Ustreamでの中継で「国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)でのライブ」を次なる目標に掲げた、ももいろクローバーZ。ほかのアイドルをライバル視するのではなく、昨日までの自分を最大の強敵とするももクロにとって、次なるハードルを課す必要があった。東京大学大学院准教授・安西信一は自著『ももクロの美学<わけのわからなさ>の秘密』で、ももクロの楽曲を手がけたヒャダインこと前山田健一の「紅白が上がりになってしまうから出場しない方が良い」といった旨のコメントを引用し、「ももクロの魅力のひとつが、結果ではなく、あくまで成長と戦いの過程そのものにあることの端的な証左といえよう」と指摘した。
『紅白』出場の明るいニュースから一転、2013年は試練から始まった。有安杏果の喉の状態が悪く、1カ月の発声自粛。ライブは歌唱せずにダンスだけ。テレビやイベントでも声を出さず筆談を強いられた。このままならない状況のなか、3月に大阪、名古屋、札幌で『ももいろクローバーZ JAPAN TOUR 2013「5TH DIMENSION」』を開催。未発売のニューアルバムを収録順に歌い、メンバーは仮面を装着、お客のサイリウム使用を制限する実験的な公演だった。そして4月13日、14日の西武ドーム2DAYSは生バンド構成。新たな「成長と戦いの過程」を歩み始めた。
8月4日には日産スタジアムで『ももクロ夏のバカ騒ぎ WORLD SUMMER DIVE 2013』を開催。単独コンサートしてはグループ史上最多の6万人を動員した。しかし川上アキラマネージャーは、初のスタジアムライブについて自著『ももクロ流 5人へ伝えたこと 5人から教わったこと』で、「終わった後は「こうすればよかった」という反省点も出てきました。有安も直後のインタビューで「もっとできたという思いもある」と言っていましたが、正直なところ、お客さんが入ってみて初めて分かったところもありました」と心残りを口にした。同年12月23日の『White Hot Blizzard MOMOIRO CHRISTMAS 2013 美しき極寒の世界』(ももクリ2013)は、プロフィギュアステート選手の村主章枝以外のパフォーマーゲストはなし。多彩なゲストを招いてイベントを沸かせてきたももクロにとっては異例のスタイル。基本的に5人だけで見せ切った。
この年はエンタメ的な展開も、もちろんあった。5月の横浜アリーナのファンクラブ限定イベント『誰でもカモ~ン!~ただし、ホワイトベレーの方に限ります♡~』でメンバー自身がライブを演出、8月『ももいろクローバーZ ももクロ夏のバカ騒ぎ WORLD SUMMER DIVE 2013 8.4 日産スタジアム大会』では猫ひろし、武井壮、布袋寅泰、松崎しげるらが出演、同月『Animelo Summer Live 2013 -FLAG NINE-』で『キン肉マン』のコスプレ&串田アキラと共演、9月『氣志團万博2013 ~房総爆音梁山泊~』で「行くぜっ!怪盗少女」演奏中に百田夏菜子が6連続前転を披露。
さらに2年連続『紅白』出場&「走れ!」演奏時に審査員・田中将大投手とZポーズなどトピックは満載。また、この年はアートワークの充実も見逃すことはできず、アルバム『5TH DIMENSION』やシングル『GOUNN』のジャケットが素晴らしかった。確かに愉快なネタは豊富にあったが、それでもももクロにとって2013年はストイックな1年だった。