10-FEETの音楽が胸を打つ理由 『バイプレイヤーズ』OPテーマから考察する“ロックバンドの本質”

10-FEETの音楽が胸を打つ理由 『バイプレイヤーズ』OPテーマから考察する“ロックバンドの本質”

 そんなアルバム『Fin』は2017年11月にリリースされたが、タイトル曲として収録されたのが「Fin」である。初期曲にも通ずる2ビートの疾走が印象的だが、弾き語りのようにクールダウンするパートや、エモーショナルに聴かせるサビなど、つなぎ合わせがとにかく絶妙。パンクな衝動性、メロディセンス、ミクスチャー精神など、10-FEETの持ち味を自由に惜しみなく解放している1曲だ。イントロのピアノ、あるいは〈もう少しだけ話してくれないか〉といったもどかしい歌詞が切なさを強調しているが、心の停滞感すらもガソリンに変えて前へ前へと進んでいこうとするエネルギーがこの曲最大の魅力である。前述した2ビートがその後押しとなり、〈探して探してもずっと辿り着かない様な/そんな迷い道を慰めにしたんだ〉というサビへ。答えの見つからない日々であっても、自分の足で進むことさえ諦めなければ、振り返ったときに未来へつながる糧になっているはず。そんなメッセージが心に響く素晴らしい曲だ。しかし、これほどの楽曲であってもシングルリリースせず、5年ぶりのアルバムまで温存していたというのだから、当時の10-FEETはロックバンドとして何を出すべきなのかをしっかり判断し、正解が見えない中でも一切の妥協なく制作に臨んでいたのだということが伺える。

10-FEET – Fin

 そして、配信されたばかりの新曲「アオ」である。この曲は「バイプレイヤーズ曲の集大成」と言わんばかりに、「ヒトリセカイ」「Fin」両方のエッセンスを感じられる楽曲だ。ストレートなメロディが根幹となっているが、イントロやサビ裏を彩るクラシックのような神秘的なピアノが良いアクセントになっている。歌詞は、〈信じたいから 疑いました/傷つく前に 傷つけました/守りたいから ウソをつきました〉という、「ヒトリセカイ」で歌ってきた“分かり合えなさ”について、より直接的に表現した内容が印象的だ。言葉の純粋さを信じていた少年が、大人になるにつれて“ウソ”の二面性を知って人を疑うようになっていく、ある種のドキュメント的な作品。孤独な少年性を胸の内に抱えるTAKUMAらしいソングライティングだが、この曲のメロディはそんな猜疑心を包み込み、〈優しさの本当の意味〉に近づいていくかのように鳴り響く。人はウソをつくということを知ってしまったけれど、それでも分かり合いたいから、世界を徹底的に疑うことで自ら考え、次第にいつかの優しさの意味が沁みるようになってくる。ピュアだからこそ疑問を持ち、いつまでもピュアでいられないことを知りながらもピュアであろうとするーーそんな心模様を「アオ」という色合いに掛けた、TAKUMAのもがきを感じられる楽曲だ。

10-FEET「アオ」

 「ヒトリセカイ」「Fin」「アオ」は、10-FEETのソングライティングの変遷、そしてTAKUMAの思考回路をたどるような3曲になっている。そこで改めて思うのは、10-FEETの音楽は未完成だからこそ美しいということ。そして、TAKUMAは言葉や人との関わりの中で時に傷つきながらも、一つひとつ丁寧に曲にしていくことで、孤独な人々の心の奥底に響くロックを模索し続けているということだ。その闘いや苦悩が生々しいほど感じられるから、彼らの音楽はこれほどまでに胸を打つ。10-FEETの音楽はきっと生涯、未完成なままだろう。しかし、完成系を夢見て、一歩ずつでも明日へ進もうとするエネルギーが、一人ひとりの異なる人生を肯定する太陽になってくれる。10-FEETが誰一人として置いてきぼりにしないバンドである理由が、この3曲を聴けばよくわかるはずだ。

■先行配信情報
10-FEET「アオ」
2021年2月26日(金)配信リリース
ダウンロードはこちら

■リリース情報
10-FEET 20th Single『アオ』
2021年3月10日(水)発売
・完全生産限定盤【CD+DVD+GOODS】¥2,600+税
※【10-FEET×男前豆腐店】オリジナルブロックメモ付
・初回生産限定盤【CD+DVD】¥1,800+税
・通常盤【CD】¥1,000+税

<収録曲>
1.アオ
2.朝霧を抜けて
3.タンバリン

<DVD収録内容>
『京都大作戦2019~倍返しです!喰らいな祭~』
<DAY3>
1 size FITS ALL / 太陽4号 / 蜃気楼 + オフショット
<DAY4>
アンテナラスト / RIVER / その向こうへ + オフショット

10-FEET オフィシャルHP

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