10-FEET『京都大作戦』が生み出す“忘れられない瞬間” 2017年開催を振り返る

『京都大作戦 2017』を振り返る

 10-FEETが11月1日に発売した最新アルバム『Fin』が、11月13日付オリコン週間CDアルバムランキングで2位を記録した。前作『thread』(2012年)から約5年ぶりとなる待望のオリジナルアルバム、『アンテナラスト』『ヒトリセカイ×ヒトリズム』『太陽の月』と2016年から立て続けにリリースしてきた3枚のシングル曲を収録していることなど様々な要因はあるものの、常に最高を更新し続けている彼らならではの結果と言えるだろう。

 今回リアルサウンドでは『Fin』の発売を記念し、去る7月に行われた10-FEET主催フェス『京都大作戦2017 ~心の10電!10執念!10横無尽にはしゃぎな祭!~』について書き記した音楽ジャーナリスト・柴 那典氏によるコラムを掲載する(『Fin』初回盤付属DVDには3日間から厳選したライブ映像を収録)。例年以上に“伝説”の生まれる場となった今年の『京都大作戦』から伝わった10-FEETと仲間たちの絆、そして願いとは。(編集部)

 10-FEET アルバム「Fin」特典映像トレーラー

『京都大作戦』にこめられた10-FEETの“願い”

 今年で10周年を迎えた10-FEETが主催する野外フェス『京都大作戦』が、7月7日・8日・9日、京都府立山城総合運動公園・太陽が丘特設野外ステージにて開催された。

 筆者は昨年「『京都大作戦』はなぜ特別な場所であり続けているのか」というテーマのコラムを当サイトに書いた。

 そこでも触れたのだが、このフェスは、語り継がれるような“伝説”を沢山生み出してきた。夏フェスがレジャーとして定着しきった今も、あの場所でしか見られない光景を毎年のように見せてきた。

 『京都大作戦2017 ~心の10電!10執念!10横無尽にはしゃぎな祭!~』と題した今年もそうだった。やはりたくさんの“伝説”が生まれる場所だった。

 中でも語り継がれるのは最終日だろう。途中から雨がどんどん強まり、豪雨の中でプレイしたマキシマム ザ ホルモンは、雷の危険を避け参加者の安全を優先するため演奏を一時中断。再開の目処が経ったのは19時過ぎだが、宇治市との取り決めによって終演時間は20時までと決まっている。その限られた時間の中、マキシマム ザ ホルモン、ROTTENGRAFFTY、10-FEETが協力してライブを敢行。バンドとオーディエンスとが一つになった瞬間を生み出した。

 本来ならそのことについても書きたいのだが、今年、筆者が訪れたのは2日目にあたる7月8日の土曜日。今回の記事ではそこで目撃してきたものをここに書き記しておきたい。

 前述のコラムでも書いたが、『京都大作戦』が特別な場所である理由の一つは、10-FEETを中心としたバンドマンたちの強い仲間意識が感じられる場所であるということ。この日、それを何より感じたのはDragon Ashのステージだった。

「俺たちのバンドメンバーが死んじまった年も、誰かが生まれた年も、誰かが死んじまった年も、10-FEETはずっとこの場所を、バンドマンや、何よりみんなのために歯を食いしばって守ってきたんだよ」

 Kj(Vo/Gt)はMCにてこう語った。この日の「源氏ノ舞台」に出演したのは、The BONEZ、FIRE BALL with HOME GROWN、東京スカパラダイスオーケストラ、Ken Yokoyama、湘南乃風、RADWIMPS 、Dragon Ash、そして10-FEET。どのバンドも10年以上のキャリアを持つ面々だ。そしてその多くが、苦難や別離を乗り越えてきたバンド達である。中でも「バンドを続けること」のタフネスを誰より知っているのがKjだろう。

 Dragon Ashのステージの中でも一つのクライマックスになったのが、「Fantasista」。10-FEETの3人に加え、この日はThe BONEZとしてステージに立ったJESSE(Vo/Gt)がステージに登場する。ベースを奏でるRIZEでの相棒・KenKenの横に立って腕を組み、切れ味鋭いラップを見せる。

 そして、トリには10-FEETが登場する。東京スカパラダイスオーケストラや湘南乃風などのステージでもゲストにたびたび登場したTAKUMA(Vo/Gt)だったが、彼らのステージでは「STONE COLD BREAK」でFIRE BALLを呼び込んで共演。さらに「Freedom」では共にフェスを作り上げてきたバスケットボールチームの大阪籠球会をステージに招く。

 とても印象に残ったのはアンコールの一幕だった。

 彼らがアンコールで披露したのは「RIVER」。TAKUMAが呼び込み、ステージにはKjが登場する。これまで何度も『京都大作戦』で披露され、なかば恒例になっているコラボレーションだ。が、今日は「笑って終わりたいから」とドラムセットに座り、ドラムを担当。戸惑うドラムのKOUICHIにボーカルを任せてしまう。予想外の風景だ。

 最後に「風」を披露してステージを締めくくったTAKUMAは、こんな風に言った。

「俺らも頑張るから、オマエらも頑張れよ。死ぬな、負けるなよ」

 彼らが乗り越えてきたのは苦境や逆境だけではない。身近な仲間の死もそうだ。

 The BONEZのJESSEは、MCで、昨年に急逝したBOOM BOOM SATELLITESの川島道行(Vo/Gt)への敬意、そしてT$UYO$HI (Ba)とZAX(Dr)のかつてのかけがえのないの仲間だったPay money To my PainのK(Vo)のことに触れていた。KenKenは2012年に急逝したIKUZONE(Ba/Dragon Ash)のシャツをベースアンプの横に掲げていた。

 京都大作戦は、たびたび、忘れられない瞬間を生み出す。その根っ子にあるのは、Kjの呟いた「笑って終わりたい」という言葉、TAKUMAが叫んだ「死ぬな、負けるなよ」という願いなんじゃないかと思っている。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

 10-FEET アルバム「Fin」全曲トレーラー

10-FEET『Fin』

■リリース情報
『Fin』
発売日:11月1日(水)
価格:完全生産限定盤 ¥4,500+税
初回生産限定盤 ¥3,500+税
通常盤 ¥2,600+税
*完全生産限定盤には、“10-FEET20周年記念パスケース”付き!

<CD収録内容>※3形態共通
1. 1 size FITS ALL
2. Fin
3. fast edge emotion
4. ウミガラスとアザラシ
5. ヒトリセカイ
6. 十二支
7. HONE SKA feat.東京スカパラダイスオーケストラ
8. 月 〜sound jammer せやな〜
9. 夢の泥舟
10. 火とリズム
11. way out way out
12. アンテナラスト
13. STANDin
14. 太陽4号
15. 何度も咲きました

<DVD収録内容>※完全生産限定盤/初回生産限定盤 共通
①「京都大作戦2017 ~心の10電!10執念!10横無尽にはしゃぎな祭!~」
<DAY 1> JUST A FALSE! JUST A HOLE! / VIBES BY VIBES
<DAY 2> 太陽4号 / ヒトリセカイ
<DAY 3> DO YOU LIKE...? / その向こうへ / CHERRY BLOSSOM

②「OF THE ビデオ, BY THE ビデオ, FOR THE ビデオ! II」
1.  STONE COLD BREAK
2.  SHOES
3.  goes on
4.  U
5.  1sec.
6.  super stomper
7.  What’s up?
8.  hammer ska
9.  その向こうへ
10.  コハクノソラ
11.  アンテナラスト
12.  ヒトリセカイ
13.  火とリズム
14.  太陽4号
15.  月 ~sound jammer せやな~
※メンバーによる全曲MV解説付き

③NOボーナス映像:KOUICHI「TRUE LOVE」(京都大作戦2017 <DAY1>)

■ライブ情報
『10-FEET "Fin" TOUR 2017-2018』
※終了公演は割愛

11月12日(日)松本SOUND HALL a.C
11月14日(火)長野CLUB JUNK BOX
11月16日(木)高崎club FLEEZ
12月2日(土)周南RISING HALL
12月4日(月)松江AZTiC canova
12月6日(水)米子AZTiC laughs
12月8日(金)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
12月10日(日)神戸 太陽と虎
12月12日(火)大津B-FLAT
12月14日 (木)奈良NEVER LAND
12月16日(土)和歌山SHELTER
12月18日(月)京都MUSE
1月6日(土)高松festhalle
1月12日(金)広島BLUE LIVE
1月17日(水)福岡DRUM LOGOS
1月22日(月)新潟LOTS
1月27日(土)Zepp Sapporo
2月1日(木)豊洲PIT
2月8日(木)Zepp Osaka Bayside
2月13日(火)Zepp Nagoya
2月18日(日)仙台PIT
2月22日(木)Zepp Tokyo
3月1日(木)さいたま新都心HEAVEN'S ROCK
3月3日(土)熊谷HEAVEN'S ROCK
3月5日(月)千葉LOOK
3月7日(水)横浜F.A.D
3月9日(金)静岡SOUND SHOWER ark
3月11日(日)浜松 窓枠
3月19日(月)松阪M'AXA
3月21日(水・祝)岐阜club-G
3月23日(金)福井響のホール
3月25日(日)富山MAIRO
3月27日(火)金沢EIGHT HALL
4月4日(水)苫小牧ELLCUBE
4月6日(金)帯広MEGA STONE
4月8日(日)釧路NAVANA DANCE STUDIO
4月10日(火)北見ONION HOLL
4月12日(木)旭川CASINO DRIVE
4月14日(土)函館club COCOA
4月20日(金)長崎DRUM Be-7
4月22日(日)熊本B.9 V1
4月24日(火)佐賀GEILS
4月26日(木)大分DRUM Be-0
4月28日(土)宮崎WEATHER KING
4月30日(月・祝)鹿児島CAPARVO HALL
5月7日(月)山形MUSIC 昭和 SESSION
5月9日(水)酒田MUSIC FACTORY
5月11日(金)秋田CLUB SWINDLE
5月13日(日)青森Quarter
5月15日(火)盛岡Club Change WAVE
5月17日(木)郡山CLUB #9
5月19日(土)いわきclub SONIC
5月25日(金)松山W STUDIO RED
5月27日(日)高知CARAVAN SARY
5月29日(火)徳島club GRINDHOUSE
6月9日(土)宜野湾HUMAN STAGE
6月11日(月)沖縄 桜坂セントラル
※2018年1〜2月の公演は全てワンマン公演。それ以外の公演はゲストありの予定だが、一部公演がワンマン公演になる可能性あり。

■関連リンク
10-FEET オフィシャル・サイト
10-FEET アルバム「Fin」特設サイト

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