Nulbarich、“繋がりと開放感”を演出した初のオンラインライブ 初披露の新曲「TOKYO」は真骨頂を更新する1曲に
Nulbarichが、12月22日に初のオンラインライブ『Nulbarich Live Streaming 2020 (null)』を開催した。昨年末のさいたまスーパーアリーナ公演以来、約1年ぶりとなるワンマンライブである。コロナ禍で、多くのアーティストが無観客ライブ配信にシフトせざるを得ない状況だが、現状維持に甘んじることなく状況を拡大し続けてきたNulbarichだからこそ、今回の配信ライブも“バンドとして為すべき一つの挑戦”と捉えれば不思議と納得がいく。
JQが“Nulbarichの顔役”を務めているからこそ、バンドの全容として“Nulbarichの身体性”を強く感じられるのがライブであるわけだが、観客と同じ空間を分かち合えないなか、どのように“自然体のライブ”を行うのか。そして、たまアリ公演を境に「第2章」に突入したNulbarichのどんな姿が見られるのか。ワクワクしながら画面の前で待った。
薄暗い空間の中でゆったりセッションを聴かせるオープニングの「Long Session」、そしてギターリフとコーラスの鳴りが心地いい「On and On」からライブがスタート。ドラムセットに腰掛け、リラックスした様子でアレンジを入れながら歌うJQの姿が映し出される。映像はあえてステージ全景を捉えず、寄りのカメラワーク中心。メンバー同士が向き合っていることがかろうじてわかる程度だが、その分メンバー一人ひとりの手元の動きを詳細に把握することができた。配信ならではの見せ方に徹底してフォーカスするあたりは、ライブにおいて常に新しい刺激を追求するNulbarichらしさでもある。
そしてJQが立ち上がってスタンドマイクの前に立つと、軽快なカッティングとファンキーなグルーブで聴かせる「Get Ready」、そのままシームレスに繋がれる「Zero Gravity」の流れへ。〈planet〉〈galaxy〉〈universe〉〈gravity〉といった言葉が登場することから、この2曲にはひときわ“宇宙感”が漂うが、どこなのか分からない雰囲気を強調した演出はいかにも宇宙空間といった趣で、Nulbarichの楽曲とも相性がいい。「大気圏を越えて、スペイシーな広さっていうのが自分のイメージに入り込んできてる感覚があって」(引用:『MUSICA』2019年12月号)とインタビューでJQが発言していたこともあるが、広がるイマジネーションが宇宙とリンクする感覚は、音楽の在り方そのものなのかもしれない。優先すべきは「目標」よりも「好奇心」。自分たちなりの奏で方を肯定するかのように、「It's Who We Are」まで一気に駆け抜けた序盤の流れは、今回初めてNulbarichのライブに触れたという方にも、十分なイントロダクションだったのではないだろうか。
中盤ではスペシャルゲスト・BASIが登場し、未発表のコラボレーション曲「Together」を披露した。“楽しい時間を分かち合うこの瞬間が永遠に続けばいい”と歌うこの曲では、掛け合いの相性もバッチリ。「音楽の中で自分というパーソナリティが自然体でいることが一番無敵」(引用:『MUSICA』2019年12月号)と語っていたJQにとっても、ベストなコラボレーションだったと言える。その後の2人のゆるいMC(JQ曰く「BASIさんの彼女面をするコーナー」)も、なかなかライブで見られない貴重な瞬間で、温泉やお酒の話にまで自然と発展。「2人の髪型が似ている」といったコメントを読み上げる姿に、思わずほっこりした。
BASIがステージを去ると、ライブアレンジで生まれ変わった「NEW ERA」へ。Nulbarichのブレイクを象徴する代表曲であり、1年前のさいたまスーパーアリーナでは印象的な演出で聴かせた同曲だが、今回はアコースティックライブにも近い穏やかな雰囲気で、派手な演出もなし。そこがまた新鮮でいい。滑らかになったイントロとタイトなビートの組み合わせは、自由気ままに歩きながらも「いい音楽を奏で続けたい」という意志はしっかり地に足がついていることを象徴しているかのようだ。また、先の「Get Ready」「Zero Gravity」での弾きまくるエレキギターや、楽曲のジャンルそのものを変えてしまったかのような「NEW ERA」、イントロで溜めてから放つ「VOICE」など、原曲とは違うライブアレンジも抜群の完成度。配信だからこそ、誰がどの音を出しているかを視覚的にも把握しやすく、いつもと違った聴きどころが生まれて楽しい。