マライア・キャリー、歌手/音楽家としての才能を徹底解剖 Nao'ymtに聞く、常にトレンドを乗りこなす世界的歌姫の凄さ

マライア・キャリーの才能を徹底解剖

 マライア・キャリーが、2020年にデビュー30周年を迎えた。10月2日には30周年を記念した“裏ベスト”アルバム『レアリティーズ』をリリース。クリスマスシーズンが近づくと例年通り「All I Want For Christmas Is You」に注目が集まり、12月4日には新たなクリスマスナンバーとしてアリアナ・グランデとジェニファー・ハドソンをゲストに迎えた「Oh Santa!」を配信リリース。マライアとアリアナのホイッスルボイス共演が話題になった。

Mariah Carey - Oh Santa! (Official Music Video) ft. Ariana Grande, Jennifer Hudson

 1990年のデビュー以来、唯一無二のディーヴァとして輝き続けるマライアだが、彼女が世界中から愛され続けている要因とはどこにあるのだろうか。リアルサウンドでは、マライア・キャリーの魅力を深堀りすべく、音楽プロデューサー・Nao'ymtにインタビュー。安室奈美恵や三浦大知のヒットナンバーを手がけるNao'ymtが、“7オクターブの音域”を持つマライア・キャリーのボーカリストとしてのスキルやパフォーマンスはもちろん、常に旬なプロデューサーを迎えて作詞作曲もこなす音楽家としてのセンスを紐解いていく。聞き手は渡辺志保。(編集部)

30年、“超高音”と“超低音”を歌いこなす天性のボーカル

Nao'ymt
Nao'ymt

ーーさっそく、彼女の歌声の魅力から紐解いていきたいと思うのですが、やはりマライアといえば、ホイッスルボイスと呼ばれるあの高音ですよね。中学生くらいの頃に、「これは本当に人間が出してる声なのかな」と思ったほどで。プロデューサー、そしてシンガーから見て、あの声っていうのは本当に天性のものなのか、それともトレーニングの賜物のなのか、どちらだと思われますか?

Nao'ymt:あれはもう、トレーニングでは出せないと思います。生まれ持ったものというか。練習しても、マライアの様な超高音と超低音の歌声っていうのは、特殊なものだと思いますね。彼女のボーカルは高音の方に注目されがちですけど、低音も素晴らしくて。ライブで披露している超低音の歌声を聴くと、まるで別人のようなんです。高い声に関しては、声を張って歌えば出せますけど、低音はブレスコントロールをしっかりしないと、すぐズレちゃうし、大きい声も出しづらい。だから、ちゃんとブレスをして、響く声を出すという意味では、低音の方が難しいのではないかと思います。

マライア・キャリー(1996年東京ドーム初来日公演ライヴ写真)

ーーズバリという感じですが、ボーカリストとしてのマライアの魅力というのは、どういうところにあると思われますか?

Nao'ymt:歌のテクニックって、例えば料理を作るときの食材や調味料みたいなものだと思うんです。なので、その調味料がたくさんあればあるほど、作ることができる料理は増えますよね。だから、マライア・キャリーはいろんな調味料や食材、要は、引き出しが多いシンガーだと思います。使えるテクニックが多いので、そこが、大きな魅力の一つだと思います。とにかく器用ですよね。

ーー極端な質問ですが、もしも、Nao'ymtさんがマライアの曲を一曲プロデュースすることができるとしたら、いったいどういう雰囲気の楽曲を歌わせたいと思いますか?

Nao'ymt:なかなか考えたことがない質問なので難しいですが、マライア・キャリーは、時代の流行に敏感で、時流に合ったプロデューサーを起用したり、旬な人をピックアップしたりすることが多いので、もし私が曲を作るとしたら、最先端の音楽をベースにしたいなと思います。その時は、マライア・キャリーっぽさっていうのはあえて無くしたいですね。その代わり、自分ぽさを押し出したい。

ーーNao'ymtさんが思う、「マライア・キャリーっぽさ」というポイントは、いったいどんな点ですか? 例えば、「超絶スキルフルなバラード」とか……。

Nao'ymt:ああ、確かにそのイメージはありますね。デビューアルバム『Mariah Carey』は、そういう印象が結構強い。キャリアの後半はストリート感がどんどん強めになっていきますけど。必ず、アルバムにはバラードが入っているっていう。あと、リフズ&ランズ(RIFFS AND RUNS)という歌唱のテクニックがありまして、日本でいうところのフェイクなんですけど、マライアって、それがちょっと独特というか、大体、決まってるんですよ。この曲のこのスケールだったら、こう、みたいな。

Mariah Careyプレイリスト

ーー確かに、フェイクの部分で「マライア節、出た!」と感じることが多いです。

Nao'ymt:決して難しすぎるわけでもないんですけど、独特のメロディというか、他の人とはちょっと違うリフズ&ランズを歌ってますね。その中でも、「Lead The Way」という曲は、後半部分でマライアが独特の節回しをするんですけど、それができるか、SNS上で「Lead The Way チャレンジ」っていうのが流行ったくらいで。今は、YouTubeなどにマライアの難しいフレーズを、ゆっくりスロー再生した動画もあってそれを見ながら練習することもできる。昔はそんな動画もなかったので、みんな一生懸命、マライアのボーカルを聴き取って練習していたと思います。

「Lead the Way」

 やっぱり、マライアのフレージングはみんながチャレンジしたくなるようなインパクトがありますよね。そういうところを見ると、ネットを使って若いシンガーを育成しているようなものですよ、マライアは。それはとてもいいことだと思うし、ぜひ日本の人にも「Lead The Way チャレンジ」をやってほしいですね。それで、上手くいったら私のところに送ってほしい。

ーー彼女のボーカルって、30年間ずっとトーンが変わらないままじゃないですか。あの美声を30年間保つのは、やはり相当な努力が必要ということですよね?

Nao'ymt:そうだと思いますよ。結局、だって100メーターを9秒で走れる人が、30年後も同じ速さで走れるかと言ったら、なかなか難しいじゃないですか。声帯も筋肉なので、ある程度トレーニングを重ねないと劣化する一方ですよね。それが最小限に抑えられているというのは、やはりすごくトレーニングをしているんじゃないですかね。それか、生まれ持った声帯の筋肉がすごく頑丈かのどちらかですね。

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