THE CHARM PARK、原点とこの先の未来が交差した10カ月ぶりの単独ライブ 多彩な編成で聴き手を癒した暖かな空間
さて、ここからはサプライズと言ってもいいだろう。ライブの編成がこれまでにはなかった、新鮮な布陣へと変わっていく。まず、バイオリンを招き披露されたのが「ディスク」である。初期の作品の中ではとりわけ躍動感を持った楽曲であり、配信ライブではルーパーを足した弾き語りで演奏されていたが、やはり有観客ライブでこそ真価を発揮する1曲だ。バイオリンが入ったアレンジでは、一層ダイナミックな楽曲へと化けていた。続く「A LETTER」からは、チェロとビオラまで加わったスペシャル編成。ライブでストリングスを入れたのは初めてのはずだが、恐らくTHE CHARM PARKの頭の中では、ずっとこの音が鳴っていたのだろう。あるべきピースがハマったように、後半は一層豊かなアンサンブルへと変わっていく。
「Ante Meridiem」は一際美しい1曲で、神谷洵平の繊細なタッチのドラムもうっとりするようなリズムを作っていた。そしてTHE CHARM PARKらしい演出が差し込まれたのが、「Don’t Stop」である。「皆さん心の中で思い切り叫んで」と言い、コールアンドレスポンスを促したのである。きっと、彼にとっては「声を出せるかどうか」はさして重要ではないのだろう。その日集まった人と、音楽を通して交歓する。そのほうがずっと大事なのだ。「本当に聴こえるよ!」と言った瞬間が、この日一番の笑顔だった。「こんな日々も振り返った時に笑えるように」、「前へ進んでいこう」という言葉には、ずっと迷いながらも音楽を作ってきた彼なりの、決意と覚悟が滲んでいたように思う。
「Always」と「Lost」の2曲は、本ライブのクライマックスである。前者はピアノの旋律から、後者はストリングスの調べから始まる音楽で、それぞれイントロが楽曲のカラーを示している。素朴ながらも息を呑むような美しさを持った「Always」、そこで歌われる<今だけの時間を大切な時間を/思いっきり生きれるように>というメッセージは、一層強い意味を持っていたはずだ。一方「Lost」は7人編成が最も活きた楽曲で、この曲の持つ壮麗さは、彼のディスコグラフィの中でも随一だろう。もっと広い舞台で聴いてみたいと思わせるような、楽曲の持つ懐の深さに気づかされる。
最後は1stミニアルバム『A LETTER』からとなる「Holding Hands」である。彼はかつて自らの作る音楽が、自分自身の道標になると語っていた。きっと灯台の明かりのような、不安な時にそっと足元を照らしてくれるような音楽なんだと思う。2021年がどんな年になるかは誰にもわからない。が、せめてこの音楽が鳴っている間だけは、と思う。THE CHARM PARKの原点と現在、そして少し先の未来が交差するような、そんなライブだった。
■黒田隆太朗
編集/ライター。1989年千葉県生まれ。MUSICA勤務を経てフリーランスに転身。
Twitter(@KURODARyutaro)