『爆誕 -BAKUTAN-』インタビュー
Non Stop Rabbitが明かす、バンドとYouTuberの両立から学んだ核心 「“全部本気”じゃないと勝てない」
Non Stop Rabbit(通称:ノンラビ)が、12月9日にリリースするアルバム『爆誕 -BAKUTAN-』でついにメジャーデビューを果たした。
今から数年前、別々に活動していた田口達也、矢野晴人、太我の3人が出会いバンドを結成。彼らが、なるべく早く音楽活動を軌道に乗せようと選んだのがYouTubeを用いた発信方法だった。当時は今ほどYouTuberの市民権は得られておらず、バンドがYouTuberをやることに対して厳しい目もあったという。しかし、彼らは自分たちが選んだ道を信じて動画の更新を続け、今や総チャンネル登録者数約70万人を抱える人気YouTuberに。そして動画のオープニングとエンディングに自分たちの音楽を使うというプロモーション手法なども功を奏し、音楽活動でも多くの視聴者の心を掴み、晴れてメジャーデビューを迎えることとなった。
YouTuberとロックバンド、二つの側面を持ちながら活動する中で経験したことは、そのまま彼らの視野の広さや自由な発想、価値観に反映されている。Non Stop Rabbitの3人にじっくり話を聞いた。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
“バンドのあるべき姿”に疑問を持ち、YouTubeの世界へ
ーーまずは、結成の経緯を聞かせてください。
田口達也(以下・田口):矢野と太我と、俺とは元は別々のバンドのメンバーだったんです。たまたま、有名なバンドと若手が対バンするイベントで一緒になって。
矢野晴人(以下・矢野):そこから友達になったんですけど、最初はバンドや音楽の話を一切せずに遊びにいったり、女の子をひっかけにいったりするような関係でした。
太我:ひっかけにいくって(笑)。
田口:バンドに関しては「それぞれ頑張っていこうね」といった感じでした。それが、ある時にまわりの大人が「矢野と太我のバンドに俺を入れよう」と言い出して……。
太我:あれ? その話、(インタビューでするのは)初めてじゃない?
田口:最近思い出した(笑)。それを聞いて、2人は「このバントに俺を入れるより、3人で新しいバンドを組んだほうがいいんじゃないか」と思ったそうで、俺のバイト先に急に現れて(笑)、「3人でやろう」と誘われました。
ーーなかなか強引な経緯ですね。
田口:太我は当時、「25歳までに音楽で飯を食えなければ、音楽をやめる」という考えだったらしくて。
太我:その頃の周りや自分のバンドの活動が、とりあえず月に何本かライブをやって、バイトしながら続ける、それがライブハウスに出るバンドのあるべき形みたいなみたいな雰囲気で、それに対しての疑問がめちゃくちゃあったんです。当時は「ライブって意味なくね?」と思ってました。
矢野:それは語弊がある(笑)。
ーーライブそのものが無意味というよりは、バンド活動がぬるま湯化、ルーティーン化している状況では、25歳までに音楽で飯を食えるようになれないと。
太我:はい、これでは間に合わない、もっと効率いい方法があるはずだと話してたんです。そういう意味で、この3人はバンドに対しての考え方が似ていると思ったので、上手くいくんじゃないかと。
田口:僕らは当時からドームを目標にしていたけれど、周りも自分たちも、それぞれ身内を10人呼べたら上出来な雰囲気だったんです。でも、僕らはドームがやりたいのに、そんなことでいいはずはない。
太我:本当は周りのバンドマンも皆焦ってたし、このままではいけないと思ってるはずなのに、誰も行動に移してなかった。
矢野:だから、(周りのバンドマンが)何を考えているのかわかんなかったんですよ。
ーー周囲に違和感があったからこそ、集まった3人で新しいこと、「身内10人」以上に届ける方法を考えた結果が、YouTubeだったんでしょうか?
田口:YouTubeを始める前は、ライブハウスにも2、3回出たんですけど、やっぱりピンと来なくて。より多くの人に知ってもらう、聞いてもらうために、Zeppやさいたまスーパーアリーナなどのアーティストがライブをやった帰り道で、路上ライブを始めたんです。しかも、超高いスピーカーと電源を買ってライブハウス並の音量で。
ーーすでにYouTuberのような発想ですね。「路上で爆音で演奏してみた」的な。
田口:今考えたらそうですね。
ーーしかし、それは当然、怒られますよね。
田口:はい! で、すべての場所でできなくなりました(笑)。それで、YouTubeを始めることにしました。それが3年前くらいの話です。
ーーその頃はまだ、バンドマンが音楽以外の活動でYouTubeチャンネルを開設することは珍しかったのでは。
田口:マジでいなかったです。夕闇に誘いし漆黒の天使達くらいじゃないですか。
ーー周囲の反応はどうでしたか。
田口:ああ! バンドマンの友達は全部いなくなりました(即答)。
矢野:もともと友達少なかったけど。
田口:でも、さらに冷たい目というか「あ~なんかやってるよ」みたいな。あの頃YouTuberは「小学生のなりたい職業」にランクインするようになったり、「好きなことで生きていく」みたいな推され方をしてたりで、大人からは一番バカにされていた時期でしたよね。ファンも、「アーティストのくせにYouTuberやるの?」みたいな空気で……。
ーーそんな空気の中でも、やめなかった理由はどこにあるんでしょうか。
太我:バンドマンって有名でも、Twitterのフォロワーが少なかったりする。逆にYouTuberは、知名度はそこそこでもフォロワーがたくさんいたりする。今いる場所よりはYouTubeの方が母数が多いし、伸びしろがあると思ってました。
田口:僕らからすると、YouTuberは自分たちの番組を持っているように見えたんです。YouTubeなら自分たちのような駆け出しのバンドでも、冠番組を作れると単純に考えたというか。
太我:当時はそれしか手段がなかったし。
田口:路上ライブも禁止されてしまったけど、その場で聴いてくれた人の反応は良かったんです。だから、YouTubeでも俺らの曲を聴いてくれたらいける、という確信はあった。それに、その頃のYouTuberを見ていて、「絶対俺らの方が(しゃべりが)面白い」って思ってましたし。
矢野:例えば誰?
太我:……まさかの……?
田口:それが誰かって話は今はもういいんだよ! とにかく、だから自分たちの動画のオープニングとエンディングで自分たちの曲を使えばテレビ番組と同じことになると思ったんです。
ーー実際、約3年でメジャーデビューまでたどり着けているので、当時の判断は間違っていなかったと。
矢野:そうですね、ライブハウスの街をドヤ顔で歩きたいですね。下北沢をドヤ顔で。下北沢には一度も行ったことないんですけど。
音楽をのびのびやれているからこそ、動画で思いっきりふざけられる
ーーすでにチャンネル登録者数は数十万人、メジャーデビューせずとも大きな会場でのライブも成功しています。正直、今のままでもメジャーのバンドよりも支持を獲得している面もあるように思え、ここであえてメジャーデビューを選択したのは何故でしょうか?
田口:僕らの目標はドームライブ、国民的スターになることです。国民的と呼ばれる人気の人たちは、メジャーじゃないですか。それに、自分たちが作った会社で、ポニーキャニオンと契約するっていうのも面白いし新しい。僕らっぽいなと思ったんです。
ーーメジャーへ行くことで、何か変化はありましたか? 制約が増えたりとか。
田口:それもあまりなくて。
矢野:会社側が俺らのことをわかってないと、そもそも契約しないですよ。
田口:強いて言うなら、デモの段階でレーベル側と意見を交わすくらいですね。
太我:もしかしたら他のバンドなら、レコーディングする場所から変えてるかもしれないけど、俺らの場合はぜんぜん変わってないよね。
田口:僕ら、新しいことにチャレンジするのは好きだけど、新しい環境や人間関係を作ることは苦手なんです。ライブハウスに出るのをやめたのもそこが大きくて。初対面のPAさんに対して、本当は「中音がよくない」とか思ってるのに口に出せなかったり……。慣れてないと萎縮しちゃう(笑)。
ーーでは、12月9日発売のメジャーデビューアルバム『爆誕-BAKUTAN-』のレコーディングも大きなトラブルもなく。
田口:そうですね。コロナの影響でスケジュールがタイトになったりはしましたけど、それも慣れている環境だったので、自分たちの納得するまでやれました。
矢野:あとはアンプが爆発したくらいですね。
田口:それは大きいな~。
ーー真顔で大ウソついてきますね。本当に慣れている環境でのレコーディングだったようですね。これまでの作品をプロデュースしていた鈴木Daichi秀行氏もメジャーデビュー以降も続投されてますし。
田口:Daichiさんとも付き合い長いもんね。最初に2回くらいやったライブハウスでのイベントがきっかけだったんですけど。
矢野:Daichiさんがたまたま他のバンドを見に来てたところを、俺がCDを渡して、そしたら「一回スタジオに来てほしい」とメールが来たんです。
ーーそういう経緯だったんですね。Twitterを見ていると、フランクな関係性のようで。
田口:本当にそうです、プロデューサーの家がもう自分の家のようです。ピンポン押さないで入ってるし、郵便物来たら勝手に受けとるし。
太我:勝手に機材持って帰ったりしてね。
田口:それはバレるから(笑)。
ーーフランクすぎませんか?
田口:もちろん、めっちゃ凄い人なのはわかってます。
ーーそうですよ、J-POP史に確実に名を残す人ですよ。では、周囲の大人たちの意見からプロデュースに至ったわけではないと。
田口:じゃなくて、僕らもDaichiさんとやりたいです、向こうもやりたいですって感じです。
矢野:Daichiさんは本当に見る目がありますよね!
ーー今、動画がまわってないのが残念なくらい、すごいドヤ顔してますよ。これは結果論かもしれないですけど、YouTubeが人気になることで、レコード会社とも対等に契約できて、周囲のスタッフもバンドのことを理解してくれて、のびのび活動できる環境を作りあげることができたのかもしれないですね。
矢野:それはあると思います。逆に、音楽をカツカツでやってると、他のことに意識が向けられないじゃないですか。だから音楽をのびのびやれているからこそ、動画で思いっきりふざけられる、自分たちが好きなことできてるんじゃないかなと感じています。
ーー『爆誕-BAKUTAN-』の収録曲のなかで、イチオシを教えて下さい。
田口:僕は「全部いい」ですね。この曲は2月に豊洲PITでのライブが中止になったことを受けて出来た曲なんですけど、ご時世的になんでも「駄目」といわれる世の中で、全部を肯定する歌詞です。卒業式が中止になってしまった卒業生に向けて動画を作ってYouTubeに公開したんですけど、良い音楽はどこに出しても届くんだなって実感した曲でもあります。
矢野:「最後のキス」ですね。今回唯一のガチバラードなんですけど、俺らは、ふざけたイメージがあるけど、こういう側面もあるというギャップを感じることのできる曲。YouTubeだけを観ている人は驚くんじゃないでしょうか。そういう意味でもぜひ聴いてほしい曲です。
太我:僕は「ALSO」です。理由はですね、僕は『進撃の巨人』がこの世で一番好きなんですけど、アニメはポニーキャニオンが制作してるんです。この曲のサビや曲調が、『進撃の巨人』にすごく合うと思うんです。で、実は営業をかけたんです。
田口:どうやって!?
太我:ポニーキャニオンの人に、「この曲は『進撃』にぴったりだな~」と事あるごとに言ってたんですけど、ぜんぜん聞き入れてもらえなくて(笑)。でも、そのくらいカッコいい曲なので!
田口:そんな営業をかけるバンドマンいないよ(笑)。
ーー何らかの形で決まるといいですね。
矢野:コネを使いたいですね!