『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』インタビュー 第1弾
怒髪天 増子直純 × ナイツ 土屋伸之が語り合う、“ウルトラマンシリーズ愛” 歴代主題歌の魅力から表現に与えた影響まで
「音楽的にもウルトラマンからたくさん影響を受けた」(増子)
ーー『最新 ウルトラマン主題歌集 ウルトラマンZ』についても伺いたくて。改めて聴いてみて印象に残った曲はありますか。
増子:やっぱり遠藤正明さんの『ウルトラマンZ』の曲(「ご唱和ください 我の名を!」)はたまらんね。昭和世代にも響くよ。その前の昭和シリーズの曲はツアー中とかによく聴くんだけど、聴く度にウルッとくるというか......自分の忘れてしまったものを思い出させてくれる。気持ちが正されるんだよね。どの曲も、その時代で一番カッコいい音を取り入れて作っているのは素晴らしいし、子どもたちもイントロからテンション上がるだろうなって思うんだよね。『セブン』の主題歌とか、「パーン パーン パパーン パンパン〜」って鳴ったら、もうそれだけでテンション爆上がりだもん。
あとは『ウルトラマン80』の曲が最高だね。ウルトラマンシリーズ40周年のときに、バンド界隈でウルトラソングのトリビュート盤(『ROCK THE ULTRAMAN』)を作ったんだけど、「エイティの曲やりたい」って言ったらもう他のバンドに取られてて。先方から「『怪獣音頭』をやってくれ。ぴったりなんだよ」って言われたんだけど、「怪獣音頭かい!」ってなったよね(笑)。やむを得ずやったら評判良かったんだけど、俺的には『ウルトラマン80』をやりたかった。〈遠くの星から 来た男が/愛と勇気を 教えてくれる〉っていう歌詞がいい。やっぱり地球人は忘れてるんだよ、大事なものを。だから何回もウルトラマンに教わっているよね。
土屋:エイティはただ倒すだけじゃないですもんね。教師やってるから愛情があるし。そういう精神論みたいなものが結構刺さりました。
増子:結局は宇宙人に優しさとか人間性を説かれるっていうね。まぁ仏教とかでも、仏様や神様に教わっているわけだから、人間ってどんだけダメなんだっていう話でもあるけど......。あと、エイティの曲はほぼゴダイゴだなって。アレンジもこの年代ならではの良さがあってさ。
土屋:それまでの勇ましい感じから急に変わりましたよね。途中で英語が入ってきたりとか。
ーー『ウルトラマン80』は『ウルトラマンレオ』から少し間が空いた作品だったので、楽曲も80年代っぽく様変わりしていますよね。その前の『タロウ』『レオ』は阿久悠さんが作詞していて、まさに稀代の歌謡曲という感じです。
増子:『タロウ』の〈ウルトラの父がいる〉っていう出だしはすごいよね。やっぱり掴みが上手い。普通書かないもん。
土屋:(歌詞カードを眺めながら)『レオ』の主題歌は真夏竜さんが歌ってたんですね。この方は、劇中でもスタントを使わないで自分でやってたんですよ。修行で、モロボシ・ダンにジープに追いかけ回されるシーンがあったじゃないですか。丸太で特訓していたらダンが出てきて、「丸太はお前を殺そうとしないだろ。こっちへ来い」みたいに言って、荒野に連れていかれてジープで追いかけ回されるっていう(笑)。あれもスタントなしでやってて、本当に死ぬかと思ったらしいですね。
ーージャッキー・チェンみたいですよね。
土屋:本当にジャッキー・チェン! しかも歌も歌ってるんだから(笑)。真夏さんすごいな。『レオ』の歌もカッコいいですよね。
増子:〈レオ レオ レオ レオ レオ/燃えろ レオ 燃えろよ〉で、「おぉ!」ってなる。少年少女合唱団と歌うっていうのも素晴らしくて。前にアニメ主題歌をやったときに合唱団に入っている友達の子どもを呼んで一緒に歌ってもらったんだけど、なかなか多人数いないとこういう風にならないよね。
ーー増子さんは『帰ってきたウルトラマン』世代ということでしたが、この主題歌についてはいかがですか。
増子:今聴くと、ピッチが微妙に上ずっている感じ。合唱団の歌は正しいと思うんだけど、メインの歌がそことちょっと乖離してるんだよね。でも、その感じがまたいいんだろうなって。あと最後の〈ウルトラマン〉のところ、合唱団の子たちが下の音程を歌っているんだよね。確かにメインボーカルが下がるわけにはいかないんだろうけど、そこで子どもたちが下に行くんだって(笑)。
ーー高い声の方が最後は下がっていくという(笑)。
増子:そうそう。子どもの頃になんかモヤっとしていたのが、大人になって聴いてみたらわかったというか。『帰ってきたウルトラマン』の曲もたぶん試行錯誤の末にここに落ち着いたんだろうけど、それが感じられるのが面白くて。
ーー歌詞で印象的なところはありましたか。
増子:〈近くに立ってウルトラチョップ〉っていうのがいいんだよね。確かに遠かったらチョップは届かないけど、〈近くに立って〉って歌詞でいう必要あるのかっていう(笑)。
土屋:ははははは。必殺技の名前もいろいろ入っていますよね。ウルトラマンの必殺技集みたいな本を持ってて、当時めちゃくちゃ読んでいたんですよ。技のネーミングが本当に面白くて。帰ってきたウルトラマンが怪獣のツノをグイってやる技があるんですけどーー。
増子:それも必殺技なの?
土屋:そうなんですよ。技の名前が「ウルトラ腕力」っていう(笑)。
増子:ははははは。技でもなんでもない、ただの腕力だ(笑)。
土屋:他にも「ウルトラパワー」とか、シンプルな名前がいっぱいあって面白かったです。
ーーここまでエピソードも含めていろいろと振り返ってきましたが、ウルトラマン主題歌ならではの魅力ってどういうところにあると思いますか。
土屋:やっぱり忘れちゃいけない正義感みたいなのものはありますよね。どんどん大人になると汚れていくから(笑)。ふとしたときにウルトラマンの歌を聴いて、初心に帰るっていうのは大事かなと思います。
増子:一つ一つは全然違う歌なんだけど、ウルトラマンらしさは必ずある気がするよね。名刺というか、聴いたら「これはウルトラマンだ!」っていうのが刻まれている感じがする。「今だったらこう言わないだろうな」という時代が色濃く反映されているのもすごく面白いし。
ーーバンドマンの在り方として、増子さんはウルトラマンから何か影響を受けた部分ってありますか。というのも、怒髪天「HONKAI」などで歌われているロックバンドとしての真っ直ぐな言葉と、ウルトラマンが体現してきた正義って重なる部分があるんじゃないかと思っていて。
増子:やっぱり年とってきたからか、子どもとかいろいろな人に対して優しく接したいという気持ちになってきたのかな。若い頃は、どっちかというと怪獣や宇宙人の類だったから(笑)。でもウルトラマンから学んだ愛が、自分のなかでどんどんデカくなっていくのは感じるね。
シーボーズの話とかもそうだけど、やっぱり怪獣をやっつけるだけじゃないんだよね。正義って時代によってケースバイケースで、何が正義かなんて時と場合によって変わっていくから、それをちゃんとウルトラマンから学んでおくべきだなって。自分に何か危害を加えるものが全て悪なわけではないし、帰してやることも大事だっていうのは、世界中の偉い人たちがもっと学ばなきゃいけないんじゃないかって思う。「本来はウルトラマンであるべきなのに、いつの間にか怪獣になってしまってないかい?」って。
ーー救いたい人たちを救えなかったりとか、自己都合だけで怪獣を退治してしまったりとか。葛藤しながら闘うウルトラマンと人間の姿がたくさん描かれてきましたよね。
増子:そう。「正しさ」というものの多様性を教えてくれたのはやっぱりウルトラマンなんだと思う。だから、日本の子どもたちが今もウルトラマンを大好きだっていうのは救いがあるし、日本はまだまだ大丈夫だって思える一因でもあるよね。
音楽的にもウルトラマンから影響を受けている部分がたくさんあって。11月11日に怒髪天の『ヘヴィ・メンタル・アティテュード』っていう、とんでもないタイトルのアルバムが出るんだけど(笑)、ちょっとマーチ・軍歌っぽい曲があって、そこに「セイ!」っていう気合いを入れる掛け声が入ってるんだよね。聴いてもらったら絶対わかると思うけど、〈セイ セイ セイ〉って、完全に〈セブン セブン セブン〉だろっていう(笑)。ちょうどそれを入れたところだったの。「これセブンじゃん! もうセブンと言ってくれよ」っていうくらいのアレンジなんで(笑)、やっぱり音楽的な勇ましさや力強さもウルトラマンから学んだんだって思うよね。