MORISAKI WIN、笠原瑠斗、aimi、黒川沙良……追い風吹かせるジャパニーズR&B 現在の楽曲傾向を探る
プラスアルファの魅力を掲げる個性派も
比較的オーセンティックなタイプの歌い手たちを紹介したところで、ここからはジャパニーズR&Bを取り巻く様々な個性に目を向けてみよう。三浦大知やw-inds.、Da-iCEといった先進的なサウンドを乗りこなすダンス系ボーカリストの新たなホープが、元PRIZMAXのMORISAKI WIN。世界進出を視野に入れたソロ初のEP『PARADE』では、コンテンポラリーR&Bからダンスポップ、さらにはジャミロクワイを彷彿とさせる華麗なアシッドジャズまで幅広くトライ。爽快感を運ぶハイトーンボイスや俊敏でスター性のある身のこなしは、あのマイケル・ジャクソンの影もすんなりと浮かび上がらせる。
今年2月にデビューを果たしたAyumu Imazuも、歌って踊れてさらには楽曲制作も堪能なオールラウンダーとして隅に置けない存在。あどけなさが残るボーカルからは想像できないほどブラックミュージックのセンスが卓越しており、発表済みの楽曲の中にはニュージャックスウィングの煌めきを敷き詰めたスウィートなミドルも。最新曲にあたる高速ファンク「Light Up」は安室奈美恵やDOUBLEらを手掛けた今井了介がプロデュースを担うなど、業界内でもすでにその実力を知らしめつつある様子。
日に日に規模が拡大しつつあるオルタナティブ・ポップスの旗手として推薦したいのはSPENSR。LUCKY TAPESをはじめとする都会派バンドとも遠からず呼応する彼の音楽は、時間をかけて滲んでいく独特の陰りが大きな持ち味となっており、哀愁を重んじるJ-POPとの親和性も高い。気だるいシンセ&ボーカルの妙「愛なんて」、ジャジーなサウンドに心酔必至の「LIPS」など、クリエイティブな自作自演にしか出せない俗っぽい魅力はジャパニーズR&Bのさらなる発展さえ予感させる。
そして、若者カルチャーと密接に関わりながらステップアップを続けているアーティストが2名。LINE RECORDS擁するKAHOHは、JK(女子高生)とのガールズトークをもとに楽曲を制作するなど、同世代の代弁者的キャリアを邁進中。チャーミングなボーカルは意外にも腕っ節があり、なかでも好きな男性にサインを送る一途な女子像を閉じ込めたミドル「CHERRY」では、R&Bファン垂涎のエモーショナルな快唱を聴かせる。
他方、空音やkojikojiといったSNS世代に人気なアーティストとのコラボレーションを経て、ティーンからも熱い眼差しを向けられているのが神戸出身の男性シンガーTio。オートチューン加工された体温低めのボーカル、浮遊感のあるトラップサウンドと、ヒップホップの解釈も内包した今様の構成をやはり今時の若者らしくスマートに演じる。ファッションアイコンとしての側面も持つ新星、sheidAとのデュエット作「Easy & Fine」ではまさにその極致とも言えるミステリアスな所作を披露。先達である清水翔太よろしく、大衆の心をガッツリと掴む日もそう遠くはないかもしれない。
■白原ケンイチ
日本のR&B作品をはじめ、新旧問わず良質な歌ものが大好物の音楽ライター。当該ジャンルを取り上げるサイトの運営、コンピレーションCDのプロデュース、イベント主催の経験などを経て、現在はささやかに音楽ライフを満喫する日々。Twitter