決意を奏でるスフィアン・スティーヴンス、名盤の風格感じるデラドゥーリアン……時代を歌うシンガーソングライターの注目作5選
Sufjan Stevens『The Ascension』

映画『君の名前で僕を呼んで』のテーマ曲「Mystery of Love」が第60回グラミー賞にノミネートされたことで、幅広く名前を知られることになったスフィアン・スティーヴンス。両親を題材にした『Carrie & Lowell』から約5年ぶりの新作は、本人いわく「自分の周りの世界を問いただす」作品に。アコースティックギターの弾き語りを軸にした繊細な音作りだった前作に対して、今回はシンセやプログラミングを導入。デリケートなメロディや吐息のような歌声はいつもと変わらないが、レイヤーを重ねて作り出した深い霧が立ち込めたような空間を、インダストリアルなビートがノイズの飛沫を散りばめて駆け抜けていく。モダンなポップソングとしてのクオリティを保ちながらも、アルバムには美しい混沌が渦巻いており、分断と閉塞の時代に対するスフィアンの決意表明のようなアルバムだ。
Deradoorian『Find the Sun』

Sad13『Haunted Painting』

マサチューセッツの男女4人組バンド、Speedy Ortizのボーカル/ギター、サディー・デュプイによるソロプロジェクト。4年ぶりの新作は、彼女がギャラリーで見たドイツ表現主義の画家、フランツ・フォン・シュトゥックが描いた踊り子の絵に触発されて制作された。サディーは、ギター、ベース、オルガン、シタール、テルミンなど、様々な楽器をプレイ。さらにヘラド・ネグロことロベルト・ラング、サトミ・マツザキ(Deerhoof)、メリル・ガルバス(Tune-Yards)など多彩な面々が参加した。ジェットコースターのような起伏に富んだ曲の展開のなか、様々な音を細かくエディットしたサウンドはオモチャのオーケストラのようだ。どの曲にも思いついたアイデアと戯れるガーリーな感覚が息づいており、オルタナティブな実験性とキュートなポップセンスが融合している。