Moses Sumney、Kate NV、Sonic Boom……実験精神と歌心に満ちた鬼才の新作5選

 今回は強烈な個性を発揮する、実験精神と歌心に満ちた鬼才たちの新作を紹介。

Moses Sumney『Grae』

Moses Sumney『Grae』

 デビュー以来、LAシーンで注目を集めてきたモーゼス・サムニー。2作目となる新作『Grae』は、まず今年2月にアルバムの前半12曲をデジタルでリリース。5月に後半7曲を加えて全20曲、1時間を超える大作としてフィジカルでリリースされた。サンダーキャット、ジェイムス・ブレイク、ジェイミー・スチュワート(XIU XIU)など個性豊かなゲストが参加。さらにダニエル・ロパティン(Oneohtrix Point Never)やジョン・コングルトン、FKJなど様々なプロデューサーも加わって、ソウル、ジャズ、エレクトロなど様々なジャンルを呑み込んだ壮大な音のタペストリーを紡ぎ出していく。サックスやストリングスをフィーチャーした耽美なサウンドが、妖しくも官能的な歌声の魅力を引き立てていて、まるでモーゼスが脳内に描いた人工楽園のような世界。圧巻です。

Moses Sumney – Cut Me [Official Video]

Kate NV『Room for the Moon』

Kate NV『Room for the Moon』

 Kate NVはモスクワを拠点に活動するケイト・シロソノヴァニによるソロプロジェクト。ケイトはロックバンドで活動する一方で、現代音楽のプロジェクトにも参加。幅広い音楽活動をするなかで、エレクトロニックなKate NVをスタートさせた。3作目となる新作『Room for the Moon』では、彼女の実験的なポップセンスにますます磨きがかかっている。反復するビートを中心に、電子音や生楽器をブレンドして生み出されるファンタジックなサウンドは、彼女が影響を受けた日本のテクノ/ニューウェイヴの香りも漂っている。これまで以上に強度をましたグルーヴがアルバムに躍動感を生み出すなか、軽やかにダンスを踊るようなケイトのシアトリカルな歌声も魅力的だ。日本語と英語とロシア語を織り交ぜた「Sayonara」は『Pitchfork』でベストニュートラックに選ばれて、英米でますます注目を集めることになりそう。

Kate NV — Sayonara

Sonic Boom『All Things Being Equal』

Sonic Boom『All Things Being Equal』

 80年代に活動したイギリスの伝説的なサイケデリックロック・バンド、Spacemen 3のフロントマン、Sonic Boomことピーター・ケンバー。Spacemen 3解散後はSPECTRUMやE.A.R.名義で活躍。Animal Collectiveのパンダ・ベアとユニットを組んだり、MGMTやBeach Houseの作品にプロデューサーとして参加するなど、新世代のアーティストからリスペクトされてきた奇才が、1stソロアルバム『Spectrum』から30年ぶりにSonic Boom名義で新作『All Things Being Equal』を発表した。シンセの音色にこだわり続けてきた男だけに、本作でもシンセの重ね方に熟練のワザが光る。ゆったりと波打つようなシンセサウンドが高揚感を生み出していくなか、実験的な音作りながらもメロディを大切にしていて、久しぶりに聞いた歌声も味わい深い。かつての盟友、ジェイソン・ピアーズが率いるSpiritualizedのシンフォニックなロックと比べたくなる、極彩色のシンセオーケストラ。

Sonic Boom – “Things Like This (A Little Bit Deeper)” (Official Music Video)

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