安藤裕子が語る、活動休止から“音楽”を取り戻すまでの日々「自分の道を切り開くために必要な時間だった」

安藤裕子が語る、活動休止から“音楽”を取り戻すまでの日々「自分の道を切り開くために必要な時間だった」

 類稀なる歌声とソングライティングで、シンガーソングライターとして独自の道を歩んできた安藤裕子。2016年アルバム『頂き物』を機に当時所属の音楽レーベルを離れ、活動を一時休止。そこからインディペンデント的に活動を広げ、2020年に約4年半ぶりのフルアルバム『Barometz』をリリースした。

 「隣人に光が差すとき」「のうぜんかつら(リプライズ)」といったヒット曲を生みだしてきた彼女だが、休業当時の心境を「自分の心が虚無の状態」と振り返る。そこから「音を楽しもう」という気持ちのもと、『Barometz』にも参加するトオミヨウやShigekuniと共に初のセルフプロデュース作『ITALAN』を制作し、そこでの出会いがシンガーソングライターとしての転機になったのだという。

 安藤裕子は、紆余曲折あったデビューから現在に至るまで、どのような変遷を辿り、『Barometz』を完成させたのか。AWAプレイリスト企画で選ばれた過去の名曲や最新作をもとに、彼女の十数年に及ぶシンガーソングライターとしての人生を聞いた。(編集部)

安藤裕子プレイリスト

“恋”は誰でも手の届く、一番近しい娯楽

安藤裕子「一日の終わりに」MV (監督:齊藤工 / 出演:門脇麦・宮沢氷魚)

ーー約4年半ぶりのアルバム『Barometz』は、サウンドやボーカル、歌詞においても安藤さんのシンガーソングライターとしての新しい一歩が感じられる作品です。制作体制も一新されましたが、ご自身としての手応えは?

安藤裕子(以下、安藤):私としては、この作品でようやくソロになったという感覚がありますね。もともとシンガーソングライターとしてデビューしているんですけど、やっぱりスタートからの15年というのは、どちらかというと多くの大人の方々に支えられていたというか。担当ディレクターとアレンジャーの山本隆二さん(ピアノ、バンマス)がいて、ほぼ3人のバンドみたいな感じだったんですよね。そこで音楽的にたくさん教えてもらって成長してきたと思うし、良いバランスでやってはいたんですけど、『頂き物』(2016年)を作ったところでやれることはすべてやり切った感があって。じゃあ、私個人でこの先どういう人生を歩んでいくのかっていうのを提示できたのが、今回の『Barometz』なんじゃないかと思ってます。

ーー音楽面で言うと、リズムのアプローチはこれまで以上に多彩ですが、同時に歌はとてもポップです。そういった部分は、デビュー時から一貫しているようにも感じます。

安藤:私はポップスという土壌で育ててもらったミュージシャンなので、少し前に出した『ITALAN』(2018年)のように本当に趣味で作っているものとは少し違って、公に作るのであればポップスという枠組みからなるべく離れないようにと考えながら作っていきました。これまでに叩き込まれたJ-POPマナーみたいなものに縛られた感覚はなかったんですけど、15年で教えてもらったことをやろうと思えばできちゃうからこそ、そこから意識的に離れるのは難しかったですね。

ーーなるほど。今回の作品の特徴として、ダイレクトで生々しい表現を持つラブソングが多いですね。なぜ今、恋や愛をテーマにした作品を作ろうと思ったのですか。

安藤:デビュー当時はただただ楽しく音楽をやっていたんですけど、ファンの方のお手紙を読んだり、やりとりをする中で、私が思っている以上に音楽と人生を共にしている方がいることを知りました。大人の階段と言えるのかもしれないけど、そういうみんなの心情を理解していく中でただ楽しく音楽を作ることから徐々に離れていってしまい、同時に私自身も死生観にのめり込んでいくようになったんです。途中からは少し行き過ぎてしまって、気軽に聴ける曲を作れないというか、作れたとしても心を入れて歌うことができなくて。楽しい曲も楽しくないと感じるし、死をテーマにした曲ばっかり作るようになって、もうダメだなって思ったんですよ。で、そこから離れるために活動を休止して、今回新たに楽しんで音楽を作ろうとなった時に、ファンタジックなものを作りたいと思い立って。そこに恋というテーマが、ぴったりハマると思ったんです。

ーー恋をする時のワクワクや心が跳ねる感じが、今回の歌詞にはよく表れています。安藤さんは、恋というモチーフをどのように捉えていますか?

安藤:私としては、誰でも手の届く、一番近しい娯楽でもあると思っています。大多数の人は割と地味な人生を送って死んでいくと思うし、私自身もそうそう誰かと出会って恋をするタイプではないんですけど、それを妄想するだけでも楽しいじゃないですか。つまらない日常でも、いつも帰りに寄るコンビニの店員さんと恋に落ちるみたいな妄想をすると、急に漫画の主人公みたいに心が華やかになる。そういうワクワクを私も少しは感じたいし、みんなにも感じて欲しいなと思いながら『Barometz』を作りました。

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