BiSは、解散/再始動を経て進化していくーーWACK所属グループの特性を分析
BiSは日本の女性アイドルシーンを変え、音楽シーンにも大きな影響を与えたグループに思う。例えばBiSHは「BiSをもう一度始める」ということが結成の理由で、現在もBiSH公式Twitterアカウントのプロフィール欄にはその旨が書かれているし、BiS以降はフォロワーと思えるロックサウンドのアイドルやメンバー名が片仮名表記のグループが増えた。しかしどのようなグループなのかを説明することは難しい。脱退メンバーが多かったり解散と再結成を繰り返したりと、他のアイドルグループとは違う歴史と活動内容だから一言では魅力を説明できないし、一言では収まらない魅力があるのだ。
BiSの活動は第1期、第2期、第3期に分けられる。その中でまずシーンに大きな影響を与えたのは第1期だ。元々歌手として活動していたプー・ルイが「アイドルグループをやりたい」と言ったことがきっかけに、本当に結成してしまったのが第1期のBiSである。『新生アイドル研究会(Brand-new idol Society)』として「アイドルを研究して、アイドルになろうとする、アイドルになりたい4人組」をコンセプトにして活動が始まった。これは、メンバーも関係者もアイドル活動に詳しくなかったから生まれたコンセプトに思う。だからこそアイドルの形から外れた活動を思いつき実行し、爪痕をしっかり残したのだ。
「My Ixxx」のMVにメンバーが全裸に近い状態で出演したことが話題になり「アイドル=清楚」というイメージをぶち壊した。この時期のライブではファンはモッシュやダイブ、リフトをして暴れたりとパンクバンドのライブと遜色ないフロアになっていた。メンバーもダイブをしたりと激しくパフォーマンスをする様子は異端である。スクール水着でライブを行いフロアにダイブしたりと、賛否両論分かれる過激な活動も多かった。炎上商法とも言える活動で話題を集めていたが、人気を拡大した大きな理由は「音楽」が個性的で魅力的だからだ。
現在もBiSやBiSHのサウンドプロデュースを行っている松隈ケンタが基本的に作曲している。そのためBiSは本格的なロックサウンドが多い。ボーカルの音量は小さく楽器の音が目立つ音量バランスは、メンバーの歌声を目立たせようとする他のアイドルとは真逆のことをやっている。BiSは歌ではなく音楽を聴かせようとしていたのだ。そして音楽ファンの心を掴み「音楽が良いグループ」として評価されるようになった。
人気が上昇している中ではあったが元々解散することを決めて活動していたため、第1期BiSは2014年に横浜アリーナで解散した。しかし2年後の、2016年に再びプー・ルイを中心に再結成が発表され、新メンバーが合宿オーディションで選ばれ活動再開。オーディションの様子はニコニコ生放送で生中継された。これはWACKが新メンバーを選ぶ際の恒例企画となった、WACKオーディションの第1弾でもある。このようにBiSは他のWACKグループの中でも先陣を切って新しい挑戦をすることが多いのだ。
第2期BiSは第1期ほど過激な活動は行っていない。パフォーマンスにおいても実力のあるメンバーが揃っていた。しかし第2期は第1期以上に荒れた活動内容になっていく。アヤ・エイトプリンスがGANG PARADEのカミヤサキと期間限定でレンタルトレードされたり、グループを1stと2ndと分け、実質1軍と2軍とに分ける取り組みをしたりと、グループを掻き回すような出来事が多かった。体力的にも精神的にも限界であることを理由に脱退するメンバーもいた。最終的にはメンバー自ら「解散したい」と申し入れたことを理由に解散している。
幸せな結末でもないし、もっと良いグループになったかもしれない。しかし第1期とは違う魅力的な楽曲を残してくれたことは確かだ。第1期は重めなサウンドが多かったが、第2期は良い意味で軽やかで疾走感があり、青春パンクや邦ロックに通ずるサウンドだ。楽曲はメロディアスでキャッチーなものが多い。「SAY YES」や「ロミオの心臓」など前向きな歌詞も多く、それらの楽曲やメンバーの歌声はファンに力を与えてくれたはずだ。