『GO TO THE BEDS』『PARADISES』インタビュー
松隈ケンタに聞く、WACKサウンドを構築する音楽理論の核 「大事なのは“間合い”、会話やお笑いの感覚なんです」
GANG PARADE(ギャンパレ)の分裂が2020年3月に決定し、5月には活動終了。そのGANG PARADEから分裂して誕生したのが、GO TO THE BEDSとPARADISESの2組だ。そして、早くも両者のフルアルバム『GO TO THE BEDS』『PARADISES』がリリースされる。
GANG PARADEの路線を踏襲しながら新機軸も打ちだした『GO TO THE BEDS』、これまでのGANG PARADEのイメージから離れた『PARADISES』と、サウンドプロデューサーの松隈ケンタは新たな挑戦へと踏みだしている。そもそも、松隈ケンタはGANG PARADEの分裂をどう思っているのか? そして、4月に『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日系)に出演して話題を呼んだ松隈ケンタがクリエイターとして目指すものとは? 活動拠点を置く福岡から上京した松隈ケンタに話を聞いた。(宗像明将)
全員のキャラクターを活かしながらひとつの曲にするのは職人芸
ーー7月22日にGO TO THE BEDSとPARADISESのアルバムが同時にリリースされますが、そもそもGANG PARADEが分裂したときはどう感じましたか?
松隈ケンタ(以下、松隈):やっぱりそういうことが起きる事務所じゃないですか、WACKは(笑)。いちいちびっくりしていたら精神を持っていかれる。これは初期BiSからのやり方ですけど、全員のキャラクターを活かしながらひとつの曲にするのは、自分で言うのもなんですけど職人芸なんですよ。何年もかけてやっと見えてきたところだったので、「ここで分裂か」とは思いましたね(笑)。
ーーさすが慣れている(笑)。GO TO THE BEDSとPARADISESの楽曲は、制作過程でどうやって振り分けているんですか?
松隈:今回は完璧に分けて作りました。昔はざっくりしていて、たとえばBiSHに作ったものがギャンパレに行ったり、逆だったり。最近はわりとそのグループ用に作るようになりました。
ーー各グループ用に作るとなると、それぞれで重視している音楽面のポイントはありますか?
松隈:GO TO THE BEDSは歌えるメンツだと思うので、歌をガツンとやっていこうかなと。ギャンパレ時代のダンスビートで乗せる部分は引き継ぎつつ。逆に、PARADISESはその部分を削ぎとりました。ただ、ギャンパレ時代のバラーディな歌モノみたいな部分はPARADISESに振り分けましたね。
ーー『GO TO THE BEDS』では、「行かなくちゃ?」「ROOM」「GROOVE」「VILLAIN」などにテクノ的なアプローチがありますね。
松隈:うん、そこはギャンパレから継承したものですね。
ーー一方で、「SCREWY DANCER」「MISSING」「ROOM」のサウンドに出てくるオリエンタルな要素も新鮮です。
松隈:今回意図的にやりましたね。世界的な潮流を見ると、音楽がシンプルになっていってると思うんですね。ただ、メロディラインがそうなると一辺倒になってしまうので、そこで海外の人たちがよくやっているのがオリエンタルな感じなのかな。逆に僕らはラテンっぽいものを「なんちゃって」でやるから、良い意味でへんてこりんなものに聴こえると思っていて。アルバム全体的にそれを入れたくて。
ーーなるほど、他にサウンド面のポイントはありますか?
松隈:いつもジャンルは幅広く作っているんですけど、今回初のアプローチとして、ジャンルが一曲一曲出すぎないようにしました。メロディのオリエンタル感で統一しているのもありつつ、一個一個分析すると全部違うジャンルだけど、結果、揃って見えるような感じで。いつもの僕のプロデュースはジャンルがわかりやすい作り方だったんですけど、なだらかに雰囲気を揃えてトータル感を出しました。
ーー1曲目の「行かなくちゃ?」は歌詞に〈行けばいいんじゃない?〉とあって、歴代のBiSの歌詞に多用されてきた「行かなくちゃ」というフレーズと対になっていますね。それをGO TO THE BEDSが背負っているというのが面白いですよね。
松隈:これは渡辺(淳之介)くんが作っているので真意はわからないんですけどね。ギャンパレもメンバーの入れ替えがあって、我々スタッフも心機一転のところで、このアルバムの1曲目。いつものフレーズに「?」をつけて入れたんじゃないんですかね。
ーーGO TO THE BEDSのメンバーのボーカルの特徴は、どんなところにあるんでしょうか?
松隈:今回主力に置いてみたのは、実はユイ・ガ・ドクソンなんです。今まではあんまり主役に置くような声質ではないと思っていたんですけど、この子たちの声質をもう1回考え直したんです。今回はドクソンを主軸に置くことによって、他の4人が全員飛び道具に使える。「ドクソン対各メンバー」という感覚で配置しましたね。
ーードクソンさんに対して、他の4人の声質の良いポイントってどこでしょう?
松隈:ドクソンは、白いご飯みたいな。最近だとユア(ユメノユア)が、BiSHのリンリンのような尖った歌い方が上手になってきていて。その反対側で、優しくて母性のある感じをマイカ(キャン・GP・マイカ)に出してもらって。ココ(ココ・パーティン・ココ)には洋楽歌姫のような感覚を伸ばしてほしくて、ヤママチ(ヤママチミキ)は邦楽歌姫ですね。ヤママチの配置はけっこう難しい。ギャンパレのときはかえって中心に置くことによって、周りが中和されてバランスが取れていたのかもしれないですね。