『GO TO THE BEDS』『PARADISES』インタビュー
松隈ケンタに聞く、WACKサウンドを構築する音楽理論の核 「大事なのは“間合い”、会話やお笑いの感覚なんです」
ファンのコールを“想定して”作るのが嫌なだけ
ーーその間の置き方って、ファンの人はどのくらい気づいていると思います?
松隈:僕、ライブはいつも一番後ろの席から見ているんですけど、たとえばギャンパレだと「Plastic 2 Mercy」の〈まだ足りない!〉から盛り上がるじゃないですか。EDMというのはそこの間が様式美でわかりやすい。僕の思った通りに乗ってくれると、「間が合っているな」と。お笑いでいうと「ウケてくれてる」という感覚です。
ーー『関ジャム完全燃SHOW』のときに、ファンのコールやMIXが嫌いだっていう話がありましたよね。
松隈:あれは語弊が出ちゃったんですけど、僕は「嫌い」とは言っていないんですよ。僕は野球場に行くんですけど、野球場ってコールの嵐じゃないですか(笑)、「かっとばせー!」とか。あれこそ選手からしたら邪魔くせえと思うんですけど(笑)。ああいうコールは僕もやるから、楽しいのを知っているんですよ。ただ、そのときの番組の質問が「コールを入れやすいように曲を作るんですか?」だったので、「そうやって作るのは大嫌いです」と言って。それはこちら側に流れがあって、その流れを止めるようなファンのコールを想定して作るのが嫌なだけであって。たまに、それを乗り越えて予想外なコールをしてくるのは「おお、斬新な入れ方だ、かっこいいやん」って思うときもありますよ(笑)。
ーーじゃあ、ファンに合わせるというよりは、間合いを提供したい?
松隈:そうです。お笑いでいうと、ウケるところでウケて欲しい。ヤジを飛ばされて、それが笑いになったらその場は良いでしょうけど、芸人さんとしては不本意、みたいな。
ーーたとえばBiSHのライブはファンが万単位で来ますが、松隈さんが想定しないようなファンのリアクションって出てきたりしますか?
松隈:逆で、100人とかの規模のほうがおもしろおかしいコールが起きやすい(笑)。大人数のときのほうが思ったところで手が上がるし、静かなときは手を合わせるように聴いてくれる。極端なんですけど、「涙が出てほしいポイント」とかはもう決めて作ってあるんですよ。たとえば「BiSH-星が瞬く夜に-」の〈星が! 瞬く夜に〜〉って歌うところの「が!」で涙が出てるんですよ。まぁ実際には出ないですよ(笑)。でも、これをファンの方に言うと、「たしかにあそこでグッとくる」って言ってくれる。
ーーなるほど、あらかじめグッとくるポイントを決めて作ってあると。
松隈:他の作詞家もそうやって作っていると思うんですけどね。でも、うちらが面白いのは、僕が仮で作った歌詞を、淳之介やメンバーがブラッシュアップしていて、ほとんど僕の意図というものがないんですよ。「ROOM」の作詞が「松隈ケンタ×ユイ・ガ・ドクソン」だったら、ほぼドクソンが僕の仮歌の歌詞を拝借しているに過ぎないので、要するに僕の歌詞じゃないんですよ。だから面白い。たまにメンバーが信じられないところに信じられない言葉を入れたりしたときに、そこが涙ポイントになったりする。
ーー他の作家は、1曲ウケたら同じような曲をいっぱい作る手法を取りがちだと思うんですけど、松隈さんはそれをやらないですよね。
松隈:僕のこだわりなんですけど、あえて考えないようにしています。ファンの声も、左耳から入ってきて、右耳から出ていくんですよ(笑)。BiSHの「オーケストラ」っぽい曲をまた作りたくなることもある一方で、真逆を行きたいときもあるんです。その辺は周りの大人頼みにして、うまいこと選んでもらって。
何十年経っても色あせないような曲を死ぬまでに1曲作りたい
ーーそれは、第1期BiSの1stアルバム『Brand-new idol Society』(2011年)のときから?
松隈:はい。たとえばBiSの「nerve」って大人気じゃないですか。すごくいい曲だと思うんですけど、僕も作りたいかと言うとそうではない。「nerve」が1個あってそれで喜んでもらえているからいいじゃん、って。それ求める声には別に応えない。結果、それがいいことだってあるし。僕の中では「nerve」と、ギャンパレの「Plastic 2 Mercy」は同じ位置にあります。あれも超人気とか言われますけど、実際は初ライブのときはどちらも別にそうじゃなかった。みんなが乗っかりだして、長いことをずーっとやっているから伝説になっているわけで。作家はそれを作れと言われても作れないんですよ。
ーーそういう考え方なのに、結果的にどのグループにもアンセムが生まれるのは面白いですよね。世の中の作家は、「なんで松隈ケンタはあんなにいろんなグループにアンセムを作れるんだ?」って知りたいと思うんですよ。
松隈:みんながそう思っててくれるのであればラッキーですね(笑)。僕が心がけているのは、すべての曲を一定のクオリティで出すことだけです。その先はメンバーやスタッフさん、お客さんに上乗せしてもらえるので。やっぱりクオリティというのは確実にあって、これは料理人と同じだと思っていて。ベテランの料理人は、自分のジャンルじゃない料理でも、人に食べさせられるクオリティを作れる。だけど、若いうちにちょっと作ったパスタが大ヒットしちゃった人は、もうそれしか作れなくて二発目がない、みたいな。なので、僕らはどのジャンルでもクオリティを高めに作っていくしかないのかな、って。
ーーBiSの『Brand-new idol Society』から10年近くアイドルシーンでやってきた中で、今後、松隈さん自身が個人的にやりたいことはありますか?
松隈:いくつかはあるんですけど、インストみたいな、歌がないやつ。アイドル関係なくなっちゃってる(笑)。音楽ってドラマに寄り添うものだと思っていて、僕が今やらせていただいているのは、GO TO THE BEDSのドラマ、PARADISESのドラマ、BiSHのドラマにそれぞれBGMをつけている感覚。クリエイターとしては、やっぱり映画やドラマ、ゲーム音楽とかもやってみたいです。
ーーWACKは次に何が起きるかわからないじゃないですか。今回もギャンパレが分裂して、これが普通のサウンドプロデューサーなら「おいおいおい!」ってなりますよね(笑)。
松隈:あはは。それも左から入って右から出ていく感じですよ。「松隈さん、またひとり辞めます」「そっかー、しょうがねーなー」みたいな(笑)。よく不思議がられるんですけど、メンバーの動きとかに全スタッフの中で一番興味ないんですよ、僕。Twitterもアイナぐらいしか見ていないし。アイナだけ俺に「いいね」をいっぱい押してくれて(笑)、だから僕はお返ししてあげたいと思うんですよ。ナルハとか全然押してくれないから、あんまり見たことないです(笑)。WACKワールドにいるといろいろ持っていかれるじゃないですか。それは心地良くて好きなんですけど、全部追いかけると音楽に影響が出てしまうので、僕は常に一番後ろの席で見ているつもりです。
ーーそこはすごいところですよね。あと、私はやっぱり早く『紅白歌合戦』で松隈さんの曲を聴きたいんですよね。
松隈:『紅白』、行きたいですね、権威のあるものは好きなので(笑)。
ーー松隈さんにとっての最終目標ってどこなんでしょうか?
松隈:一応オリコン1位はBiSHの『PAiNT it BLACK』でとらせていただきましたけど、アルバムはまだなくて。アルバム1位はとりたいです。僕個人としては、『ドラクエ』(『ドラゴンクエスト』)のオープニングテーマとか、「およげ!たいやきくん」みたいな、何十年経っても色あせないような圧倒的な曲を、死ぬまでに1曲作りたい。イメージとしてはカラオケで一番歌われる曲みたいな。
ーーちなみにカラオケって、曲作りのときに意識します?
松隈:するんですよね(笑)。カラオケでみんなが歌っているのを聴いていて、「俺の曲は、カラオケでいっつも歌いづらいな……」と反省します(笑)。
ーーあはは。やはり、だんだん対象の年代層の幅を広げていこうと?
松隈:そうですね、特に子ども。僕の子どもが踊るかどうかっていうのを最近すごく気にしていて、それは今回この2グループともかなり意識しましたね。スタッフさんからも「若年層向けとか、世代を広げる方向で意識しましょう」という話があって。
ーー最後に、現在の松隈さんの音楽の核と言える部分をうかがいたいです。
松隈:曲作りで一番大事にしているのが、ダンスミュージック。ジャンル的な意味ではなくて、乗れるかどうか。これは赤ちゃんが生まれて確信に変わりましたね。たとえば渋谷のスクランブル交差点で歌姫が歌っていたとするじゃないですか。でも、その反対側にヤカンを叩いている黒人さんがいたら、そっちに人が集まると思うんですよ。ヤカンだろうとバケツだろうと、ビートを叩いていたら、世界中の人がそれを聴ける。日本語で歌姫が歌いあげているところには数人は集まると思うんですけど、500人にはならない。さっきも言った「間」みたいなものも含めて、そういう乗りやすい部分というのが必ずどのジャンルにでもあると思っていて。メロディも歌詞も楽器のひとつとして、盛りあがってきたところでいい歌詞、いいメロディが来て泣くみたいな、そういう流れがすごく大事かなって考えています。
■リリース情報
GO TO THE BEDS 1st Full Album 『GO TO THE BEDS』
7月15日(水) 各種配信サイトにてデジタルリリース
配信はこちら
7月22日(水)パッケージリリース
¥3,000(税抜)
<収録内容>
M-1 行かなくちゃ?
M-2 I don’t say sentiment
M-3 Don’t go to the bed
M-4 GO TO THE BEDS is my life
M-5 パッパラパー
M-6 SCREWY DANCER
M-7 MISSING
M-8 Where are you?
M-9 EGOIST
M-10 ROOM
M-11 GROOVE
M-12 VILLAIN
PARADISES 1st Full Album『PARADISES』
7月15日(水) 各種配信サイトにてデジタルリリース
配信はこちら
7月22日(水)パッケージリリース
¥3,000(税抜)
<収録内容>
M-1.終わらない旅
M-2.TWINKLE TWINKLE
M-3.BRIGHT FUTURE,YOUR SMILE
M-4.STARE
M-5.YEAH!!
M-6.お願い
M-7.ALIVE
M-8.PURE GIRL
M-9.命短し乙女たち
M-10.ズルい人
M-11.青い春
M-12.GOOD NIGHT(FRESH ver.)
『GO TO THE BEDS & PARADISES -LUXURY TISSUE BOX-(完全生産限定盤)』
8月26日(水)リリース
¥14,000(税抜)
Tシャツ(半袖/XL/ブラック)付き
<収録内容>
DISC1「GO TO THE BEDS」
M-1 行かなくちゃ?
M-2 I don’t say sentiment
M-3 Don’t go to the bed
M-4 GO TO THE BEDS is my life
M-5 パッパラパー
M-6 SCREWY DANCER
M-7 MISSING
M-8 Where are you?
M-9 EGOIST
M-10 ROOM
M-11 GROOVE
M-12 VILLAIN
DISC2「PARADISES」
M-1.終わらない旅
M-2.TWINKLE TWINKLE
M-3.BRIGHT FUTURE, YOUR SMILE
M-4.STARE
M-5.YEAH!!
M-6.お願い
M-7.ALIVE
M-8.PURE GIRL
M-9.命短し乙女たち
M-10.ズルい人
M-11.青い春
M-12.GOOD NIGHT(FRESH ver.)
<Blu-ray収録>
・GO TO THE BEDSミュージックビデオ集
・PARADISESミュージックビデオ集
・「MAKING OF GO TO THE BEDS & PARADISES」
・GO TO THE BEDS & PARADISES “HOME VIDEO”
※CDは7/22リリースアルバムと収録内容は同様
※収録内容は変更になる可能性あり
■関連リンク
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PARADISES公式WEBサイト
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