やなぎなぎに聞く、『俺ガイル』登場人物の“未来”を願う「芽ぐみの雨」制作秘話「完結してもキャラクターの物語は続いていく」

やなぎなぎ、『俺ガイル』新OPに込めた願い

 やなぎなぎが、アニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』(略称:俺ガイル)OP曲シングル『芽ぐみの雨』をリリースした。アニメ第1期OP曲「ユキトキ」に始まり、第2期OP曲「春擬き」と、彼女と『俺ガイル』のタッグは今回で3度目となる。最終章を迎える同アニメに寄り添う「芽ぐみの雨」には、主人公・比企谷八幡をはじめ、ヒロインの雪ノ下 雪乃や由比ヶ浜 結衣らの青春群像の行方、そしてシリーズを見守り続けるやなぎなぎの登場人物たちに寄せる願いが詰め込まれた楽曲になった。

 新型コロナウイルスに伴い、アニメ放送と共に同シングルの発売も延期になったものの、同期間には配信シングル『Toy,Toi,Toy』などの作品をリリースし、7月23日には配信ライブ『color palette 〜2020 Pink eve〜』を控えるやなぎなぎ。インタビューでは、2013年から約7年に渡る『俺ガイル』との幸福な関係性を中心に、自粛期間での活動や配信ライブへの思いを聞いた。(編集部)

普段から何かモノづくりをしていないと落ち着かない

yanaginagi official『あの子は次亜塩素酸の匂い』

ーーなぎさんは、新型コロナウイルスの感染拡大による自粛要請期間中、どのように過ごしていましたか?

やなぎなぎ(以下、やなぎ):予定していたライブなどのイベントがことごとくできなくなってしまったり、アニメの放送延期に合わせて作品のリリースも先延ばしになって……。私はそういった活動を支えに生活していたので、それが先延ばしになったぶん、自分の中に溜まったものを吐き出す場所がほしいなあと思って……私は普段から何かモノづくりをしていないと落ち着かない身体になってしまったので(笑)。それで『Toy,Toi,Toy』という配信作品を作ってみたり、自作のアニメーションをYouTubeにアップしたりして、(創作意欲を)ぶつける場を探していた感じです。

ーーそのYouTubeにアップされた「あの子は次亜塩素酸の匂い」は、楽曲とアニメーションをご自身で制作されたほか、音源や音の素材の配布も行っていましたね(※現在は配布終了)。

やなぎ:その時期はおうちで過ごされている方が多かったと思うので、その中で自分ができることは何だろうなあと思いまして。皆さんにステムデータを聴いてもらって、楽曲がどういうふうにできているのかを知ってもらえるのもうれしいですし、あるいは私みたいに創作意欲を持て余している方が、その素材を使って遊んでもらえたら楽しくなるのかな? という単純な考えではあったんですけど。

ーー6月に配信限定でリリースされた3曲+インスト入りの作品『Toy,Toi,Toy』は、どのようなコンセプトのもと作られたのですか?

やなぎ:もともとほかの楽曲の制作の合い間に遊びで作っていた音のパーツとか歌詞の一部分だとかを、せっかく時間ができたこの機会に、一つの作品として完成させようということで出来上がった作品です。1曲1曲が「おもちゃ」をテーマに自由に遊びながら作ったもので、「おもちゃから見た世界はどんな感じなのかな?」というところから広げていきました。コンパクトな作品ということもあって、全体の流れを考えて作る感じでもなかったですし、本当に自分が今聴きたいなあと思うものを作った、自分の趣味しかない曲たちです(笑)。

ーーしかも配信作品ではありますけど、なぎさんのオフィシャルサイトで歌詞カードをダウンロードできるようになっていて、それを印刷するとペーパークラフトとして遊べるという、手に取って楽しむ仕組みも用意されていました。

やなぎ:配信だと歌詞だけをじっくり見ることが少なくなるので、何かあったほうがいいだろうなあと思いまして。それに、どうせ文字情報を出すのであれば、より楽しいほうがいいのかなあっていう。

ーーそれら「あの子は次亜塩素酸の匂い」や『Toy,Toi,Toy』の試みからは、ただ曲を作って発表するだけではなくて、自分の音楽や作品を通していろんな楽しみ方を提案したいという、なぎさんの活動の指針のようなものが表れているのかなと思います。

やなぎ:そうかもしれないですね。やっぱり自分が何かを創るのが好きだから、その楽しみをもし自分の作品を通じて知ってくれる人がいたら、うれしいなあというのがあって。そういう部分が、作品のパッケージとかでも「ああしたい」「こうしたい」というアイデアとして出てくるんだと思います。

今振り返る『俺ガイル』との出会い

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」オープニング映像

ーー今回のニューシングル曲「芽ぐみの雨」は、TVアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』(『俺ガイル』)のオープニングテーマということで、今回はなぎさんと『俺ガイル』との関わりを改めて振り返りつつ、お話をお伺いしたく思います。最初の出会いは2013年放送のTVアニメ第1期(『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』)かと思いますが、当時、原作のラノベや脚本に触れて、作品にどのような印象を持ちましたか?

やなぎ:『俺ガイル』は登場人物がたくさんいて、メインになるキャラクターやヒロインも多いんですけど、一人ひとりのキャラクターが明確に色分けされていて、どの子のことも追い続けたくなる、どの子にも感情移入するぐらいキャラが立っていることは、最初の段階から感じていていました。話が進むにつれて、最初はこの子を応援していたけど、やっぱりこっち側も……って、自分がどんどん優柔不断になっていくんですよね(笑)。

ーーそれだけ各キャラにそれぞれの魅力が備わっていると。物語的にもラブコメ的な要素が軸にありますが、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』というタイトルが示唆している通り、ベタなラブコメ展開ではないですよね。ちょっとひねくれた感じというか。

やなぎ:そうですね。「最終的にどこに向かうんだろう?」というのは、最初に読んだときにも感じたことで。ヒロインレースもそうですけど、主人公の(比企谷)八幡くんが、このキャラのままダークヒーローぶりを発揮していくのか、あるいは彼も何か別の要素で成長して道が開けていくんだろうか、ということも考えたりしましたね。

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