『Nizi Project』『PRODUCE 101 JAPAN』……近年のオーディション番組のトレンドは? 人気集めた背景と理由を考察

 同じ視聴者参加型オーディション番組からは、AKB48のメンバーが加わったIZ*ONEも生まれているが、そこに近年のオーディション番組が生んだもうひとつのトレンドも表れている。それは、アイドル文化のボーダーレス化である。

 最近は、IZ*ONEが日本と韓国、また同じくオーディション番組で結成されたTWICEが日本、韓国、台湾といったように、国境を越えて集まった多国籍のメンバーで構成されるグループが増えている。

 NiziUの場合も、グローバルオーディションとしてまず日本国内8カ所とハワイ、LAを含む10カ所でオーディションが開催された。したがって、日本だけでなく韓国やアメリカからオーディションに参加する者もいた。そしてデビューメンバーに選ばれたニナことヒルマンニナはアメリカ出身で、数年前に日本に移り住んだ経歴の持ち主である。

 また「ニジプロ」では、TWICEを育てたことでも有名な韓国の音楽プロデューサー、J.Y.Park(パク・ジニョン)がメンバー選考に当たった。この点でもボーダーレスである。「ニジプロ」を見ても『ASAYAN』におけるつんく♂を彷彿とさせるようなところがあり、J.Y.Parkはもう一方の主役と言ってもいい。当然、音楽やパフォーマンスの方向性にもプロデューサーである彼の意思が強く反映される。

 そうなったとき、日本のアイドル文化そのものに変化は起こるのか、といった点も興味深い。従来、日本のアイドル文化は、「カワイイ」カルチャーの一環として海外からも注目されるように日本独自のものとされてきた。それは一言で言えば、完成していない未完成な存在の成長を見守り、応援する文化である。

 一方、韓国では欧米流のショービジネスの影響も強く、逆に完成したプロフェッショナルなものを提供しようとする志向がある。そうしたなかで、日本でも特に若い世代を中心にK-POPグループの人気も高まっている。

 NiziUのデビューメンバー決定の翌日『スッキリ』に生出演したJ.Y.Parkも、最終的にメンバーを絞り込んだ際のポイントとして「彼女たちがアマチュアではなくプロだと思って誰が目立つか見た」と語るなど、“プロ”であるべきことを強調していた。それは世界を見据えているからでもあるが、そうしたグループが日本でどう受け入れられるのか、今後のアイドル文化の行方を占う意味でも注目したい。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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