BLACKPINKは“勝利の女神”として時代を牽引 史上最速1億回再生突破した「How You Like That」楽曲&MV分析

 攻撃的なのは音楽性だけではない。「How You Like That」で描かれるのは次のような光景だ。一度は墜落し、暗い日々を過ごしていた自分達が、ついに翼を生やし、高く空へ舞い上がる。一方で同じく暗い空間へと堕ちてしまった、私を墜落させた存在を目の前にして「気に入ったでしょ?/気に入ると思うんだけど(〈How you like that? / You gon’ like that.〉)」とバッサリ切り捨て嘲笑う。実にBLACKPINKらしい、圧倒的な自信と尋常じゃない攻撃力を持つ楽曲と言えるだろう。

 また、歌詞の中には「空を見ろ。鳥だ。飛行機だ。(〈Look up in the sky. It’s a bird, it’s a plane.〉)」というフレーズがある。これはかの「スーパーマン」が登場する時の群衆のセリフであり、本来であればこの後には「スーパーマンだ!(It’s Superman!)」というフレーズが続くのだが、BLACKPINKは違う。「あなたの中にある最強のビッチを引き出せ(〈Bring out your boss bitch.〉)」と告げるのだ。「ガールクラッシュ」の筆頭である彼女たちがリーダーとしてファンの内面にある強さを引き出させる。これはBLACKPINK史上屈指のキラーフレーズでは無いだろうか。

 MVも相変わらず大量のセットを惜しげもなく活用した贅沢な仕上がりとなっており、ティザー公開時から話題を呼んでいた、歴代でも特にエッジの効いた衣装やメイクを身に纏うBLACKPINKの姿が存分に楽しめる。近作ではハイブランドの衣装を使ったセレブリティアピールを示すような流れが比較的多かったが、今回はラフでカジュアルな衣装も多く、特にMV後半ではこれまでの衣装から一転して、韓服のチョゴリやトゥルマギ(韓国外套)を想起させる衣装で激しいダンスパートに突入しており、本作の攻撃性や女性としてのプライドをさらに高めている。

 また、ファンの間ではすでに本MVへの考察が活発に進んでいるが、その中でも興味深いのが、最初のセットに登場する、今回のMVを象徴する首の無い巨大なオブジェについて。ギリシャ神話における勝利の女神であるニーケーを表現したギリシャ彫刻「サモトラケのニケ」を模しているのではないかという説だ。MVの後半では各メンバーがオブジェと姿を重ねるカットがある。つまり、「How You Like That」のMVを通して、BLACKPINKは自らが「勝利の女神」であると宣言しているのだ。あくまでも考察ではあるが、本作のテーマとも合致しており、筆者としてもあながち間違いではないのではないかと思っている。

 勝利の女神に自らの姿をなぞらえ、ヘイターを嘲笑う「How You Like That」はBLACKPINKの帰還を宣言するには十分すぎるほどに力強い楽曲だ。もはや「ガールクラッシュ」という枠を超えて、そのメッセージは世界中のBLINK(ブリンク=ファンの呼称)たちを力づける原動力となっている。だからこそ、そろそろ今年くらいにはアルバムという形でBLACKPINKが提示する世界観に触れたい……! とも思ってしまうのも正直なところではある。

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura

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