『ドールズフロントライン』の世界観を味わうコンサートの魅力 東京、上海公演での“異なるパフォーマンス”の面白さ
民間軍事会社・グリフィンの指揮官として、銃器を擬人化した美少女キャラクター=戦術人形たちを指揮して戦う中国発のスマートフォン用ターン制ストラテジーゲーム『ドールズフロントライン』。そのサウンドトラック第2弾『オリジナル・サウンドトラック2 / オーケストラ・コンサート ブルーレイディスク』が、6月17日に発売された。サウンドトラックの内容をまとめた前回の記事(参考:『ドールズフロントライン』の世界観をサントラから分析 ダークなエレクトロで“戦術人形”の感情を緻密に表現)に続いて、今回は同梱の『DOLLS' FRONTLINE ORCHESTRA CONCERT 人形×彼岸花』上海公演&東京公演のBlu-rayを紹介したい。
『DOLLS' FRONTLINE ORCHESTRA CONCERT 人形×彼岸花』は、『ドールズフロントライン』のゲーム内BGMや大型イベントの挿入歌などをオーケストラ形式で披露するホールコンサート。表記としては上海版が「人形与彼岸花」、東京版が「人形×彼岸花」となっているが、翻訳すればどちらも同じ意味になる。とはいえ、実はこの2公演、内容自体はそれぞれが「全くの別物」と言ってしまえるほど、大きく違うものになっているのだ。
まずは2018年10月19日に開催された上海公演『Girls' Frontline ORCHESTRA 人形与彼岸花』から。『ドールズフロントライン』の楽曲制作にかかわるDr. RD氏がオーケストラアレンジを担当し、上海音楽学院の学生とプロの楽団の混合チーム「Griffin Sunflower Orchestra」が演奏を担当した上海公演の特徴は、①「電子音と生演奏の融合」、②「音楽と映像の融合」、③「ゲストボーカリストの登場」だ。
『ドールズフロントライン』のBGMは、スタイリッシュなエレクトロが特徴のひとつになっている。上海公演では、オーケストラの演奏を中心に据えながらも、リズムセクションにエレクトロビートを導入することで、クラシックとクラブミュージックの要素を融合。序盤の「New Dawn」や「Day1」を筆頭に、不協和音を弦楽器で再現したり、細かい打ち込みのビートと壮大なオーケストラサウンドの対比を際立たせたりと、生演奏のオーケストラならではの音の伸びを活かしつつ、電子音で多彩なリズムパターンを加えるアレンジが全編で展開されていく。ゲーム内イベント「低体温症」のBGMを演奏する「Arctic War Suite (Medley)」などを筆頭にメドレー形式も取り入れて表現された、格式高いコンサートホールの雰囲気に縛られない実験性は、やはりゲーム音楽ならではだ。楽曲によってはほぼクラブミュージック然とした瞬間もあり、クラシックに明るくなくても楽しめる。
また、ステージ後方のスクリーンにはゲーム内の様々なシーンや、グリフィンの戦術人形たち、そして敵対勢力となる鉄血のボスたちが次々に映し出され、ビジュアル要素でも『ドールズフロントライン』の世界観が描かれる。中でも印象的なのは中盤以降で、「キューブ作戦」のBGM「For the Record」や「Departure」では、スクリーンに「キューブ作戦」のクリア報酬キャラクター・OTs-14や、同イベントのボス・ウロボロスらが登場するなど、楽曲と映像との相互作用も意識されている。
そしてイベント「特異点」の楽曲「What Am I Fighting For」では、同イベントの1シーンが映し出された後、ゲストとしてAKINO with bless4が登場。「特異点」の映像を背景に圧倒的な歌唱力&コーラスを披露する。これもまた、上海公演でしか観られない瞬間だ。
このように、着席形式のコンサートホールに『ドールズフロントライン』らしい実験、ギミック、遊び心を詰め込んでいるのが、上海公演。非戦闘シーンのBGMを集めたメドレー「Vivid Memories Suite (Medley)」でもそれは顕著で、その一部となる宿舎のBGM「Cuty」の演奏時には、スクリーンに2等身キャラが登場する宿舎のゲーム内映像が映し出された後、テキストで「お手元の座席番号をご確認ください」とアナウンス。観客がざわざわしていると、スクリーンにて宿舎でプレイ可能なガチャの演出がはじまり、発表された座席番号の観客にゲーム内アイテムなどが当たるプレゼント企画がスタートして会場が大歓声に包まれる瞬間も。膨大な量のキャラクター、シーン、遊びがひとつになって生まれる全編の印象は、まさに「陽性のエンターテインメント」で、ふたたびAKINO with bless4を迎えて披露されたラスト曲「シラカバの光」まで、息つく暇もなくステージが進んでいく。