奥田民生に聞く、YouTubeでの活動に積極的に取り組む理由 音楽の身近さを伝える一貫した姿勢

奥田民生に聞く、YouTubeでの活動に積極的に取り組む理由 音楽の身近さを伝える一貫した姿勢

 2010年に行った、客前でレコーディングしながら1公演1曲完成させて配信し、あとでアルバム(『OTRL』)にまとめる、という前代未聞のツアー『ひとりカンタビレ』の延長線上にある「ひとり宅録全部見せます」企画、『カンタンカンタビレ』(途中からゲストミュージシャンも参加)。

 寺岡呼人・斉藤和義・浜崎貴司・トータス松本・YO-KINGとのバンド=カーリングシトーンズ全員で、演奏したり大喜利をやったり、岸田繁・伊藤大地とのバンド=サンフジンズ全員で、演奏したり電車の話をしたりする、そんなさまを見せ、聴かせる、『カンタンテレタビレ』。

 バーチャル背景を活用して「弾き語り映像」や「メンバー全員奥田民生バンドの映像」や「メンバー全員奥田民生のコーラスグループ映像」をアップしていく『カンタンバーチャビレ』。

 機材を紹介したり、自分が持っている「家が買えるレスポール」とその再現モデル2本ではいかに音が違うのかを比較したり、ヘロスタジオでドラムを録れないものかと工夫する『謎ドラム実験』を行ったり、ギターの弦2本だけでロックンロールを弾く方法を伝授したりする、『カンタンカンタビレ番外編』。

 と、企画別に並べてみたが、これでも全然拾いきれていないくらい、奥田民生のYouTube活動が、めったやたらと精力的なものになっている。ソロもユニコーンもそれ以外のバンドも、セッションも人のプロデュースも曲提供も、もうとにかくやりまくる、マイペースっぽいキャラだけど超ワーカホリックなミュージシャンが奥田民生であることは周知のとおりだが、新型コロナウイルス禍でライブ活動を奪われたことで、そのアウトプット欲のすべてがYouTubeになだれこんでいる、と推測される。

 そんな現在をどう捉え、何を考えているのか、リモートインタビューで本人に問うた。なお、6月17日には新曲「サテスハクション」がCD化。アニメ『ハクション大魔王2020』の主題歌として書き下ろした新曲で、放送では4月からオンエアされている。各ストリーミングサイトでも、本人の55歳の誕生日である5月12日から先行配信が始まっている。(兵庫慎司)

『カンタンカンタビレ』から広がったYouTube活動

ーーYouTubeの投稿ペース、このコロナ禍で相当上がってますよね。

奥田:そうですね。YouTubeの投稿自体は前からやってたけど、今は、なんならそれしかやることがなくなった、っていうのもあるし。弾き語りだったら毎日でもできるけど、それよりも、いろいろアイデアを考えてやる方が楽しいと思って。小賢しいことをね、やってますよ。

ーーそもそも自分のレーベル(RAMEN CURRY MUSIC RECORDS)を立ち上げたのは、配信などをスピーディーにやれるようにしたかったから、とおっしゃってましたよね。

奥田:はいはい。

ーーその時からYouTubeでの活動も念頭にはあった?

奥田:YouTubeでこういうことをしたいなとか、はっきり思ってたわけじゃないけど、なんか思いついた時にね、曲ができたら次の日には出てるぐらいのスピードがほしい時代なんだろうな、というのはありましたから。そこでいちいちお伺いを立ててるヒマはないと。そういう理由で、ひとりになったんですけど。

 まあ、だからといって、「じゃあすぐにこれをやって、次はあれをやって……」っていうのが、あったわけじゃないので。「これでできるようになったけど、どうしよう?」みたいな順番だったかな。だから、最初は、自分のアルバムの曲のMVを作ったりとか、そういうとこから始まりましたけどね。

ーーそれがだんだん『カンタンカンタビレ』で、自宅録音をやってみせるのを始めたりして、積極的になっていったのは?

奥田:あのー、前にあれやったじゃない? 『ひとりカンタビレ』、ライブで。みなさん生でライブを観るけど、実際その音を録音してる時の様子は、あんまりわからないじゃないですか。それを、興味がある人はもちろん観たいだろうし、まったく知らないで暮らしてる人も、こんな感じで音は録れていくんだ、みたいなのがわかるっていうのは、楽しいんじゃないか、と思いまして。

 それで、『ひとりカンタビレ』の時みたいに、自分で新しい曲を作って、それをやっていくのもいいんですけど、半分ぐらい知ってる曲を1から作ってる画を見せる方が、わかりやすいかなと思ったから、『カンタンカンタビレ』では、今まで人に提供した自分の曲をやることにしたんですよね。まあ新曲を作るのがめんどくさかったのもありますけど(笑)。

 そうやって始めて、できるだけ、みんなもできるような。機材はね、アマチュアの人が買えないようなものも使ってるんで、そこは真似できないかもしれないですけど、やり方というか、録り方のアイデアとか、そういうのは参考になるところがあると思うんで。

「BEAT①」~カンタンカンタビレ#7~

ーー確かに、ドラムの代わりにそのへんのものを叩いてリズムを録ったりとかもしてますよね。

奥田:そう。ドラム、家で叩くわけにはいかんから、代わりになんかないかな、とか。今これができないけど、そこでやめるんじゃなくて、代わりのものを探す、というのは、うまくいったらモチベーションが上がることですし、「私もやってみよう」みたいな人もいると思うんで。

 たまたま立ち寄って買ったハンバーガーの箱、「これ、スネアに合うな」と歩きながら思って。で、中身はすぐ食べて、箱を叩いて録って、みたいな。そんな感じで思いついたことを取り入れていますね。

ーー『カンタンカンタビレ番外編』で、民生さんのレスポール3本の音の違いを検証する回がありましたよね。ああいうのも『ひとりカンタビレ』と同じ趣旨で、ギターを弾かない多くの人が疑問に思うであろうことを、解き明かしていくというか。

奥田:うん。まあ、レスポールなんて、俺が高い楽器を持ってることは知っていても、それが実際音がどう違うのかっていうのは、わからないと思うんで。ライブとかで観てもね。同じ状況で聴き比べて、どれぐらい違うのかというのは、自分でもやってみたかった。

 俺も最近はもう、レコーディングで、「この曲にはこれが合ってる」ってギターをとっかえひっかえするのも、どうでもよくなってきていて。「こんなにいっぱいギターいらないよ」みたいな感じになってきてたんですけど、ああやって比べると、やっぱり違うもんだなと、自分で思いましたよ。あの回で、自分でも言ってるけど、いちばん高いやつがいちばん好きな音だったことに、ホッとしたというか(笑)。

【番外編:カンタン自慢ビレ①】奥田民生「カンタンカンタビレ」

ーーそういうふうに、曲を作って発表するのとライブをやる以外の、音楽にまつわることをエンターテインメントにできないか、というのは、『カンタンカンタビレ』を始めた頃からずっと、民生さんのテーマのひとつになっていますよね。

奥田:なってます。もちろんライブと作品を作るっていうのは、メインですよ? ただ、普段の生活の中で、それだけじゃないわけで。そういうところが、見せられて、おもしろかったらいいかもね、と。CDを作ってライブをやるっていうことも、今や誰だってできることではありますけど、それをさらに、もっと誰でもできるレベルで、おもしろいかどうか、っていうか。

 たとえば、照明とかがちゃんとセッティングされたライブ会場でやるのは、もちろんかっこいいわけだけど。それに憧れて音楽を始める人もいるけれども、もうちょっと身近なところで音楽をやってるのを観て、やりたくなる人もいるんじゃないかなと。最初に始めたときはそんな感じで思ってましたね。

ーー簡単なんだよ、身近なんだよ、誰でもできることなんだよ、というのが、民生さん的には大事みたいですね、一貫して。

奥田:そうですね。もともとだって、演奏がすごい上手なわけじゃないですし、そんな難しいことはやってないですからね。教則ビデオみたいなわけではないじゃない? 俺がやってるのは。プレイ自体も、そりゃまあ、ヘタじゃあないですけど、ものすごく高等なことでもないのよ。ただ、組み合わせで、どういう音楽になるか、っていう話で。

 だから、音をバラバラに聴かせたからわかること、っていうのは、あると思うんですよ。できあがりをポンと聴くと、そのできあがりをいいか悪いかで判断して、好きだなとか嫌いだな、とかなるわけですけど。それがどういう組み合わせでできてるのか、っていうところまで知りたい人もいるだろうと。そんな感じですよね。

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