奥田民生に聞く、YouTubeでの活動に積極的に取り組む理由 音楽の身近さを伝える一貫した姿勢
「やりづれえなあ!」みたいなのも悪くない
ーーで、コロナ禍でライブができなくなって以降、YouTubeのバリエーションがどんどん増えていきますよね。
奥田:もうこれしかやることがないもんだからさ、そりゃあいろいろ浮かぶよ。それこそ、ZOOMにバーチャル背景っていうのがあるじゃない? あれに僕が、非常に食いついてですね(笑)。要するに背景を変えれば、どこでも行けるじゃん、海辺で弾き語りもできるじゃん、と。だから、バーチャル背景から広がりました(笑)。あの『カンタンバーチャビレ』は。
ーーあと、カーリングシトーンズでも、サンフジンズでも、ウェブ上で合奏をするじゃないですか。あれは、それぞれが元の曲を聴きながら演奏するんですよね。
奥田:そう、「せーの」で一緒にプレイボタンを押して、それを聴きながら演奏してるんで。他の人が今何を演奏してるのか、まったく聴かないでやってるんです。
ーーその時に民生さん、「録ったあとで編集で直すから」っておっしゃってましたけど、どの程度直してるんですか?
奥田:音を別で録ってるファイルがあって、それを6人なら6個集めて、タイミングを合わせて、あとで動画を合わせる、っていうだけの話なんですけどね。
ーーほかのバンドが、ウェブでセッションしている動画を観ると、まずドラムを録って、その音源を送って、ベースをかぶせて、ギターをのっけて……っていうふうに、きれいに作ってる人が多くて。それ、完成度は上がるけど、ウェブでデータをやり取りしてるだけで、やってることは普通のレコーディングだよな、と思うんですよね。
奥田:ああ。まあ、レコーディングと同じですよね。
ーーだから、カーリングシトーンズも、サンフジンズも、あえて一緒に演奏して、ウェブ越しだからどうしてもぴったり合わなくて……というのがいいなあと(笑)。生だからこそこうなりますよ、っていうのを見せたいのかな、と。
奥田:そうですね。本当にちゃんと音を仕上げたかったら、一個ずつ録るのが正解なんですけど、それだと「せーの」感が出ないんで。いきあたりばったりな方が、生々しいかなと。結局、音自体もそんなにちゃんと録ってないから。音自体が、なんか、悪いじゃん?
ーー(笑)。そうですね。
奥田:そこに臨場感があるよね、と。音楽のジャンルによっては、それじゃダメなのもたくさんあると思うけど。たかが俺らの音楽は、こんなもんよ、っていう(笑)。
ーー2月末以降、表立った活動が止まってしまってからは、YouTube以外の創作活動はしておられます?
奥田:いや、もう、ひたすらYouTubeのことを考えたり、撮影したり。
ーーライブを再開しようにもこの状況だし、今後のことを聞かれても困りますよね。
奥田:困るね。本当に困る。だからやっぱ、ライブをやりたいけど。みんな困ってるもんね。
ーーとにかく何よりも、まずはライブをやりたい?
奥田:はい。そりゃあそうですよ、やっぱり。ただ、まずそれがいちばん大変だっていうのがあって。いちばんの難題ですよね、今のところ。
ーー「はい、ライブやってもいいですよ」ってなっても、「じゃあ来週やろう」ってわけにいかないし。
奥田:そうなのよ。
ーー会場を押さえて、メンバーとスタッフのスケジュールを調整して、リハーサルの予定を組んで、券売は……っていうタイム感は、どうしても必要ですもんね。
奥田:そうなのよ。だから、シトーンズの残りのライブとかも、一回中止って言うしかなかったんだよ。いつライブやってもOKになるかがわかんないから、次の予約もできないで。で、「ライブやっていいですよ」ってなって、そこから小屋を押さえて、ってなると、また時間かかるから。もう果てしないね。
最近は無観客ライブとか、やってる人もいますけど。でも……やってもいいんだけど。ありはありですよ? ありだけど、ライブをやるのとは違うよね。ライブとは別の、番組のようなものだから。
それだったら、それこそ『テレタビレ』で、ゲームしたり、演奏したりっていう方が、よっぽどライブなんじゃないか? とか。そういうふうに、「今だからこんな感じでやってます」みたいなのを見せた方が、リアルなんじゃないか、と思ったりしてるんですけど。まあでも、ずっとこれだと、当然煮詰まりますからね。
ーーシトーンズに限らず、ソロでもユニコーンでも、無観客ライブというのはやらない?
奥田:いや……あのー、やる理由がいろいろあると思うんで。
ーーまあ、やっている人たちは、そうですよね。
奥田:うん。だから、なしではないですよ、全然。それこそライブハウス救済のためってやってる人もいるし、そういうのは絶対いいと思うんです。理由によるよね。まあ、俺もいつかやるかもしれないですよ。ただまあ、「ライブをやるんだ」っていう心意気ではないと思うね。別のものです。でも、俺、別のものをけっこう好きだから、なんなら。
ーー(笑)。確かに。
奥田:だから、タイミングとか、理由とか、そういうのがあれば。……でもさあ、ほんと、スタッフも集まらないで、こういうテレワークでもなくて、なんかできないかな? とか、そういうことを考えてんのよね。ユニコーンでひとり10m離れて演奏するとか……どこでやんのよ、それ、みたいな案だけど(笑)。
だから、やるんなら、スケールダウンするんじゃなくて、機材とかも含めて、いつもの規模でやんないとさ。なんかこう、画期的なアイデアがないものかと、日々思ってるけどね。誰かがなんかやってくれないかな、とか(笑)。それを見て真似したいな、と思ったりしてますね。
ーーそういう話を、スタッフとか、他のミュージシャンと、したりします?
奥田:しますよ。シトーンズもね、ああやって集まると、収録してる時以外で、いろいろ話をしてますよ。まあでもさ、テレワークのこういうアプリだとかが、あってよかったね。これが10年前だったら、なんにもできないよ。
たとえばこれが、将来的にもっと進化して、タイムラグがなくなるとか、画とか音もきれいになるとか、容易に想像がつくじゃないですか。10年後ぐらいは、全然よさそうじゃない? だから、ギリできる、今のこの感じっていうか、これも悪くないのよね(笑)。「やりづれえなあ!」みたいなのも、悪くないというか。
まあでも、この程度できてはいる状況が、あるとないとじゃ違うなあ、と思いますね。もともと俺、Twitterとかそういうのも全然しないんで。
ーーそうですよね。SNSとか……。
奥田:全然やんないから。だから、こんな状況になったけど、YouTubeを何年か前からやりだしていたおかげで、俺的にはわりとすんなり対応はできたわけよ。それやってなかったら、「1からかい!」ってなるでしょ? そこはね、前からいろいろやってたのが、役に立ってますね(笑)。
■リリース情報
『サテスハクション』
6月17日(水)1,500円+税(1,650円税込)
特典つき購入はこちら
<収録曲>
M1:サテスハクション(読売テレビ・日本テレビ系TVアニメ『ハクション大魔王2020』オーブニングテーマ)
M2:ブゥータのテーマ
M3:サテスハクション(カラオケ)
M4:ブゥータのテーマ(カラオケ)
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