SPECIAL OTHERS、5年ぶりアルバム『WAVE』で表現する“今” 変化と向き合い掴んだ、新たな自分たちらしさ

SPECIAL OTHERS、5年ぶりアルバム『WAVE』で表現する“今” 変化と向き合い掴んだ、新たな自分たちらしさ

 ロックやジャズ、レゲエ、ブラジルミュージックなど様々な音楽のエッセンスを取り入れながら、独自のサウンドスケープを築き上げ「インストゥルメンタルミュージック」の可能性を押し広げてきたSPECIAL OTHERSが、前作からおよそ5年ぶりとなる通算7枚目のアルバム『WAVE』を5月13日にリリースした。

 本作は、昨年のツアーにて会場限定で発売されていたシングル曲「Puzzle」「TRIANGLE」の2曲を含む全11曲入り。これまで同様オーバーダビングを一切行わず、4人だけで作り上げたバラエティ豊かな楽曲が並んでいる。前作から導入したDAWを駆使し、緻密なアレンジを構築した曲もあれば、全くの0からジャムセッションによって完成させた曲もあり、その振り幅の大きさには唸らされるばかりだ。この5年の間には、例えば藤原さくらのプロデュース、ツアーサポートや、アコースティックセットによるSPECIAL OTHERS ACOUSTICなど課外活動も積極的に行っており、そこからのフィードバックもおそらくあるだろう。

 このインタビューは4月1日に行われたものである。アルバム『WAVE』の制作エピソードについてはもちろん、この5年間のシーンの動向を4人はどう見ていたのか、またコロナ禍が世界中を覆う中、どのようなことを考えながら日々過ごしているのか率直な気持ちを聞いた。(黒田隆憲)

流行に対して「いい距離の取り方」ができた

ーー今、世界中は新型コロナウイルスに覆われていますが、SPECIAL OTHERSの皆さんはどんな気持ちで日々を過ごしていますか?

宮原良太(Dr/以下、宮原):やっぱり、ライブができなくなるのは辛いですね。ただ、メンバーが生きてさえいれば、いつかは必ずライブもできるわけじゃないですか。まずは自分が感染しないよう気をつける。これが最優先事項で、次に自分が誰かにうつさないようにしないとですよね。

芹澤優真(Key/以下、芹澤):ライブじゃなくてもできることは色々あるだろうから、制限のある中でなんとか工夫や模索をしていきたいです。

宮原:今後、SPECIAL OTHERSはライブ映像を何曲かYouTubeに配信するつもりなんですよ。なので感染に気をつけながら、家で楽しんでもらえたら嬉しいです。

柳下武史(Gt/以下、柳下):ライブは観にくる人たちが安心できなきゃ意味ないし、不安な中ライブをやっても誰も幸せになれない。こればっかりは収束しなきゃできないこともたくさんあるから。無理せずできる範囲で工夫したいですね。こういう危機を、いい方向に変えていくポジティブな力を大切にしなきゃと思っています。

ーーSNSなどを見ていると、収束の目処が見えない今の状況に苛立っている人も結構いて。

宮原:みんな怒っているというか、ちょっとパニックになっている感じはありますよね。何がどうなっているか分からないし不安になるのは分かるんですけど、まずは自分の足元を見て、自分のできること、家でできることや楽しめることを見つけることが大切じゃないかと。今こそ自分に構うことがたくさんできる時だから、あまり悲観しないでその状況で一番ベストを尽くせることを探していけたらいいですよね。

芹澤:俺らの職業って、もうやると決めた時点ですでに背水の陣というか(笑)、潰しの効かない仕事だと覚悟を決めて今までやってきたつもりなので。別にこうなったところで全てを失うわけじゃないし、とりあえず生きていれば、どうとでも取り返しがつくじゃないですか。だから「生きていこう!」っていう感じですね。

ーーポジティブなお話が聞けてよかったです。そして、今回の『WAVE』は、オリジナルアルバムとしては前作『WINDOW』から5年ぶりのリリースとなりますよね。この間に国内外のシーンも様々な移り変わりがありましたけど、何か印象に残っていたり、実際にインスパイアされたりしたトピックはありましたか?

宮原:やっぱり、ロバート・グラスパーやクリス・デイヴ周辺の音楽は刺激的でした。ちょっと流行りすぎた感はありますけどね(笑)。もちろん音楽的にはすごくかっこいいし、それに影響を受けて面白いことをやっているアーティストもたくさんいます。当時は俺たちも「次の作品でやってみようか」なんて思っていたんですけど、みんながこぞってやり始めると、ちょっと食傷気味になるというか。逆に今回は日本で今流行っているものに対して、完全に空気を読まずに作っていますね。

柳下武史

柳下:今って、昔と比べて流行のスピードが速くなっていますよね。この5年間で、一気に広がったブームが一気に収束していくのを目の当たりにしたというか。もし3年前にアルバムを作っていたら、また全然違う作品になっていたかもしれないですし、このタイミングで出せてよかったなと思っています。

芹澤:もちろん俺たちも(グラスパー周辺の音楽を)全く意識してないわけじゃないんですよ。みんなが気づかないような部分では、実はすごく影響を受けているところもあったりして。むしろ俺らの方が、直接的な部分じゃないところでは、他のアーティストよりも色濃く影響されているところもたくさんある。でも、アプローチ次第ではこれだけ違う作品になるというか。日本人だからこそできることをやっているし、「いい距離の取り方」ができたっていう感じかな。

 俺たちって今、すごく微妙な年代なんですよ。流行を取り入れてもダサく思われないギリギリというか。下手したら「ちょっとダサいな」って思われ始める微妙なライン(笑)。若者言葉を使うおっさんがみっともない感じってあるじゃないですか。かといって全く流行を追わず、おっさんだと開き直っちゃうのもなんか違うなと思うし。ここのハンドリングをどうするかで、これから先の人生が決まっていくんじゃないかとも思っていました。それが今回、すごくいい形で表現できたので良かったなと思っています。

ーーインスト音楽に対するリスナーの意識も、この5年間でさらに高まりましたよね?

宮原:それは感じますね。俺たちがデビューした頃は「インストバンドって何?」みたいな感じで、ビクターみたいなメジャーレーベルから出すこと自体「ほんとに大丈夫なの?」みたいな気持ちだったんですけど、気づけば一つ「居場所」ができたというか。

芦澤:レコードショップのインストコーナーも大きくなったりね。

ーーSOIL & “PIMP” SESSIONSやYOUR SONG IS GOOD、Ovallのようなインストバンドの活躍も大きかったと思います。

柳下:世代はちょっと上だけど、PE’Zとかもそう。冷遇されてた時代から共に戦ってきた感じはありますね。ただ、海外に比べるとまだまだ日本はポピュラーミュージックとインストは分けられている気がする。

芹澤:『紅白』も“歌合戦”っていうくらいだから、やっぱり日本では「歌モノ」の馴染みが深いんだろうね。これからインスト好きな人がどんどん増えていけば、『紅白“曲”合戦』になるかもしれないし、そうなるといいなと思います。

宮原:そういう意味では、メジャーデビューから間もなく15年、俺らみたいなマイナーなインスト音楽を聴き続けてくれているファンの方たちには、本当に感謝しかないですね。

芹澤:デビュー当時ももちろん「ありがたいな」と思ってたんですけど、若い頃ってなんか「自分が切り拓いてきたんだ」みたいな意識の方が強かったりしたんですよ。でも今はもう、ライブに来てくれる人たち全員に心の底から「ありがとう」って思うようになりました。自分がやっていることよりも、集まってくれていることの方が奇跡だなって。

SPECIAL OTHERS – TRIANGLE (Studio Live 2020)

曲順は『ドラゴンボール』よりも『こち亀』に近い

又吉優也

ーー近年はSNSやサブスクリプションが音楽の聴き方を大きく変えました。そこは今回、アルバムを作るにあたって意識しましたか?

宮原:ありましたね。例えば、あまり長い曲をアルバムにたくさん入れないようにしたりとか。

又吉優也(Ba/以下、又吉):SPECIAL OTHERSの昔のアルバムは、長い曲がいっぱい入ってたよね。それに比べたら今回は聴く人に優しい分数になっているんじゃないかな。

柳下:曲が短くなったのは、セッションで作らなくなったのも大きいかもしれないです。昔はセッションを20分とか30分とかやって、そこからまとめて一つの曲にしてたんですよ。「やべえ、これ以上短くならない」って言いながら9分に収めたり(笑)。

芹澤:YouTubeとかのコンテンツもすごくコンパクトになっているじゃないですか。いろんな情報をキャッチするのが面白い時代だから、単位が短いものが愛されるし自分自身もそれを欲している。そうなってくると、自分たちの曲も自然と短くなってきているのかもしれないですね。

宮原:今、話していて気づいたんですけど、アルバムの流れで聴かせるのもありつつ、曲単位で聴かせることを以前よりも意識している気がしますね。

又吉:元々クラブで演奏していることも多かったので、ちょっと前の僕らだとDJ感覚でセットリストを決めていたし、アルバムの曲順もそれを意識していたと思うんですよ。「この曲を聴いたら、次はこれをつなげたいよね」みたいな。要は、アルバム全体で一つの流れを作っているところもあったんですけど、時代の変化に合わせて1曲の中の「聴かせどころ」みたいなものも大事になってきている。その辺が少しずつ僕らの中でも変わってきて、それが今回のアルバムにも表れている気がしますね。

芹澤:つまり『こち亀』(こちら葛飾区亀有公園前派出所)だな。

ーー『こち亀』?

芹澤:例えば『ドラゴンボール』だと電車で読もうと思っても、ずっとフリーザと戦ってるけど、『こち亀』って1話完結じゃないですか。要は単独でも楽しめるし、1巻から10巻という流れでも楽しめるわけで。

宮原:そうだね、初期の頃から読んでいくと、両さん(両津勘吉)の顔の変化も分かる。

又吉:そうそう。だから今までのアルバムは『ドラゴンボール』みたいだったけど、今回は『こち亀』だね。

芦澤:でも、若い人は『こち亀』って言って分かるかな?

ーー(笑)。アルバムのトータルカラーはどのように決めているのですか?

宮原:俺らいつも、アルバムのコンセプトとかは特になくて、その時その時の自分たちの気分が瞬間パックされているような感じなんですよ。

柳下:大抵は3曲くらいずつレコーディングしていくんですけど、それで少しずつテーマや景色が見えてくるというか。それに対して「じゃあ、次の3曲ではどんな景色を見せようか」みたいな感じで曲調やアレンジが決まっていくんですよね。事前にビジョンを決めるというのではなく、作っていくうちにビジョンが見えてくる。で、今回は作りながら「明るい曲が多いな」と思ったんですよ。それに対して、渋い曲を足してバランスを取った方がいいのかな、みたいな話はメンバーとしていたんですけど、最終的にはそういうことを気にせずに作っていって。結果、すごくポップで風通しの良い、明るいアルバムになりましたね。

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