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SPECIAL OTHERS ACOUSTICのライブで感じた、アンサンブルという名の“テレパシー”の凄み

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 小さな声で話をしよう。大事な話を。余計な場所にまで届かないように、小さな声で。でも、私とあなたには絶対に届くような、小さな声で。

 SPECIAL OTHERS ACOUSTIC(以下、SOA)の音楽は、まるでそんなことを私たちに提案しているかのようだ。武道館でワンマンライブを成功させ、野外フェスでは大ステージを担うインストゥルメンタルバンドであるSPECIAL OTHERS。彼らのアコースティック編成によるプロジェクト「SOA」は、バンドミュージックの持つ魅力とは、なにも複数の人間が集まって「大きなもの」を見せることだけにあるのではない、と証明している。「小さなもの」を取り零さないこともまた、その尊い力なのだと。彼らは音楽による、とても繊細な対話を私たちに聴かせてくれる。

 今年、SOA名義で約3年半ぶりにリリースされたアルバムは、そんな彼らの音楽の力を象徴するかのように『Telepathy』と名付けられた。そのリリースツアーの東京公演、7月11日に恵比寿LIQUIDROOMで行われたライブを観た。

 ささやかな電飾によって照らされ、観葉植物が飾られたステージの上、メンバー4人全員が椅子に腰かけての演奏。SOAは4人それぞれがひとりで複数の楽器を操るが、芹澤優真は主にグロッケンシュピールと鍵盤ハーモニカ、又吉優也は主にベースとマンドリン、宮原良太はドラムとギター、柳下武史はギターとベース、と、全員が一人でリズム楽器とメロディ楽器の両方を奏でている。これはSPECIAL OTHERSというバンドの「メンバー全員が平等にバンドの主役であり、同時に屋台骨であり、誰もが楽曲に奉仕する」という関係性をよく表している。特にSOAはアコースティック楽器による演奏ということもあって、それぞれの楽器の音が非常に繊細だ。だからこそ、音と音が潰し合わないように、それぞれの音がしっかりと響き合うように、メンバー4人が細かく呼吸を合わせながら音を重ね、絡み合わせていく必要があるだろう。曲によって楽器を変え、あるいは、1曲のなかで複数の楽器を操りながら演奏していくステージ上の4人。

 芹澤はグロッケンシュピールと鍵盤ハーモニカを奏でながら、時にはカウベルのようなものを叩いたりと、細やかに楽曲のポップな輪郭を彩っていく。精巧なドラミングを見せる宮原は、曲によってはギターを弾きながら足元でドラムのシンバルとキックを鳴らす、という離れ業もやってのける。又吉はベースで曲にどっしりとした力強さを与えてみせたかと思えば、マンドリンでは曲を華やかに浮上させる。そして柳下は、時にメインに、時にサイドに回りながら、「ギターを弾く」という行為の中にある多様なスタイルを見せる。そんな4人の多彩かつ多才な演奏姿は、見ていてホレボレするほどだった。

 アンコールで演奏された「ローゼン」に、この曲と縁の深いシンガーのLeyonaがゲストボーカルで参加するというスペシャルな瞬間があったが、本編は基本的にゆっくりと、じっくりと、淡々と進んでいった。穏やかな波の満ち引きを楽しむような時間、とでも言おうか。個人的にとても印象に残ったのは、アルバム『Telepathy』の1曲目を飾っていた「WOLF」。構造的に、この曲よりもダイナミックな曲は他にあるのだが、ただ、人と人、音と音の繊細な息遣いを堪能できるという点で、この「WOLF」という曲はSOAの真骨頂を見せるような曲なのである。「WOLF」では、宮原はドラムに加えギターを、又吉はマンドリンを奏でる。メンバー4人の鳴らすメロディが絡み合い、リリカルな情景を生み出していくところから曲は始まる。そして、そこから徐々にドラムが加わっていき、躍動感が生み出されていく。美しい旋律が続く曲の中で、後半、芹澤と宮原によるハンドクラップが鳴るタイミングがある。ミニマルに響く、心地いい、ふたりぶんのハンドクラップだ。しかし、この芹澤と宮原によるハンドクラップは、実際のところ、ずっと同じタイミングでは鳴り響いているわけではない。拍が徐々に、微妙にズレていく。もちろん、この「ズレ」は意図的に生み出されたもので、ナタリーに掲載されたインタビューにおいて、芹澤は「ちょっとスティーブ・ライヒを意識した」と語っていた。いわば、これまで多くの音の「重なり」を生み出してきたSOAの4人が、意図的に生み出した「重ならない」瞬間……それが「WOLF」のハンドクラップなのだ。そして、このハンドクラップの「ズレ」が生まれる瞬間に、私はどうしようもなく感動してしまう。何故なら、このハンドクラップのズレはまるで、「人と人とは簡単に、ひとつにはなれないんだ」と、伝えているようだから。このズレはまるで、初めは一緒だったふたりの人間が、いつしか、離れ離れになっていく……そんな情景を思い起こさせるから。

      

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