SPECIAL OTHERS ACOUSTIC、野外ステージで鉄壁のアンサンブルを聞かせた贅沢な2時間

SOA上野恩賜公園野外ワンマンレポ

 SPECIAL OTHERSによるアコースティックプロジェクト、SPECIAL OTHERS ACOUSTIC(以下、SOA)が8月25日、東京・上野恩賜公園野外ステージにてワンマンライブを行った。

 本公演は、今年5月にリリースした2ndアルバム『Telepathy』を携えてのツアーファイナル。連日のように猛烈な暑さが続いている今夏だが、この日も灼熱の太陽が照りつけ会場に着いた時にはすでに汗だく。日よけ、雨よけの屋根があるぶん、熱がこもって場内はサウナ状態だった。が、それでも客席は子連れのファミリーから学生まで、幅広い世代のファンで埋まっていた。

 定刻になり、メンバー4人がステージに現れる。向かって左から芹澤"REMI"優真(Melodion /Glockenspiel)、又吉"SEGUN"優也(Ba/Mandolin)、宮原"TOYIN"良太(Dr/Gt)、柳下"DAYO"武史(Gt)が半円状に並び、軽く音出しをしながら肩慣らしのようなジャムセッションを開始。そのまま「Wayfarer」へとなだれ込み、この日のステージは幕を開けた。

 複雑な変拍子をバンド全員でいとも簡単にキメたのち、ドリフの“ひげダンス”でお馴染みテディ・ペンターグラス「Do Me」を思わせるような、陽気なベースラインが繰り返される「Wayfarer」。その上をグロッケンシュピールが涼し気に舞い踊ると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。宮原は姿勢正しくドラムの前に座り、無駄な動きを一切せずに凄まじい手数のフィルを矢継ぎ早に打ち込んでいく。しかも、曲が進むにつれてどんどん熱を帯び、座って聴いているのももどかしいほど躍動感あふれるグルーヴが会場を包み込んでいった。

 続いて4つ打ちのキックに導かれ、スペアザの代表曲「Birdie」のイントロを柳下がアコギで軽快に刻むと、会場からは歓喜の声が上がった。芹澤の吹くピアニカが歌うようにメロディをなぞる一方、又吉はベースからマンドリンに持ち替え、きらびやかな高音を魔法の粉のように振りまいていく。高音域から低域まで満遍なく配置されたフレーズが、時に絡み合い、時に並走しながら精緻かつワイルドなアンサンブルを展開していく様子に思わず息を飲んだ。

 その後もアルバム『Telepathy』と、前作『LIGHT』からの楽曲を中心にライブは進む。まるでテクノのシーケンスフレーズのようなグロッケンシュピールの幾何学的なフレーズと、複雑なシンコペーションで組み立てられたアコギが切ないハーモニーを生み出す「Galaxy」、寄せては返すさざ波のようなアンサンブルに身を任せていると、気づけば全く違う場所へと連れ去られてしまう、プログレッシヴな曲構成の「Halo」。巨大なオーシャンドラムを芹澤が頭の上にかざし、波の音を再現しながら跳ねるようなリズムの「Line」を演奏すると、オーディエンスは体を揺らしながらそれに応えた。

 少しずつ西日が強くなり、場内の暑さは弱まる気配さえない。売店のビールは飛ぶように売れ、急遽スタッフたちが補充のため奔走しているようだ。そんな中、最初のMCタイムが始まった。SOAのライブは、まるで漫談のようなトークがファンにとっては楽しみの一つでもあるのだが、この日の彼らも絶好調ならぬ舌好調。上野恩賜公園の名称の由来について、ひとしきり雑談したかと思えば、会場にいた東大生のカップルを気の済むまでいじり倒し、「今年のスイカは例年になく美味い」と断言する宮原を、メンバー全員でツッコむ。話題は気の向くまま次々と変わっていき、そのたびに場内からは大きな笑いが起きた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる