Twenty One Pilotsが描く“2020年4月を生きるリアル” 不安と混沌の時代に〈alright〉を告げるダンスポップ

Twenty One Pilotsが描く“2020年4月を生きるリアル” 不安と混沌の時代に〈alright〉を告げるダンスポップ

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、世界中で多くの人々が自宅待機を余儀なくされている。重要な会議も、家族やパートナーとの相談も、友人との雑談も、すべて画面越しに行われるのが新たな常識となった。ここまで“距離を置くこと”が前提の社会になっているのは、多くの人々にとって初めての経験だろう。今の時代は、“Quarantine=(自主)隔離”の時代と呼ばれるようになった。

 ウイルスだけではなく、この状況で生きること自体に不安を抱える人も少なくない。日を重ねるごとに状況はどんどん複雑になっているのに、会いたい人に会って想いを分かち合うこともできない。もしこの状況が落ち着いたとして、今までと同じ生活に戻ることはできるのだろうか? 大切な人との関係を変わらず続けることはできるのだろうか?

 4月9日、ロックデュオ、Twenty One Pilotsが2年ぶりの新曲となる「Level of Concern」をサプライズリリースした。「2010年代、米国で最も売れたロックアルバム」である『Blurryface』(2015年)や10億回再生超えの大ヒット曲「Stressed Out」が示す通り、彼らは2010年代以降で最も人気のあるロックバンドである。彼らの魅力として、ヒップホップやエレクトロ、レゲエと様々なジャンルをミックスした超ハイブリッドな音楽性がよく挙げられるが、その絶大な人気の背景には、彼らが描く“今を生きる中で感じるリアル”がある。

twenty one pilots: Stressed Out [OFFICIAL VIDEO]

 「Level of Concern」は、明確に“2020年の4月を生きるリアル”を描き切った楽曲である。楽曲のテーマから制作プロセス、ミュージックビデオに至るまで、その姿勢は一貫している。本楽曲は、まさに今、この瞬間にこそ届けられる必要があった作品と言えるだろう。

不安を積み重ねながらも「大丈夫」という言葉を求める

 軽快なギターのカッティングが印象的な「Level of Concern」は一聴すると、80年代を彷彿とさせる甘いディスコポップである。しかし、その音に身を委ねていると入ってくるのは、〈Panic on the brain, world has gone insane/Things are starting to get heavy(混乱している 世界がおかしくなってしまった/あらゆる物事が複雑になってきている)〉、〈Wondering Would you be, my little quarantine?/Or is this the way it ends?(君は隔離期間も一緒にいてくれるだろうか?/それともこれで終わってしまうのかな?)〉という、ウイルスの影響で起こる様々な出来事への困惑と、パートナーとのコミュニケーションに関する不安を綴った言葉だ。

 2つ目のヴァースでは〈Michael〉や〈Julie〉といった具体的な人名を出し、彼らが混乱する様子や、逆に彼らによって自らが悩まされてしまう姿を描いており、その姿は、実際の生活の中で、ニュースやSNSを中心に他の人の振る舞いや意見に悩まされてしまう我々の状況とどこか重なる。誰かと分かち合うこともできずに、漠然とした不安がひたすら自分の中に積み重なっていく。

 全体を通して繰り返される〈Tell me we’re alright(私たちは大丈夫だって言ってほしい)〉というフレーズが象徴するように、本楽曲のテーマは、そういった不安を抱える中で抱く「自分ひとりでは大丈夫だと言うことができない。だからこそ、誰かに大丈夫だと言ってほしい」という感情である。悩み事は増える一方なのに、他者と距離を置かなければならない中で自身を保つことが難しくなっていく。誰かに今の自分を肯定してほしい。何も問題がないと言ってほしい。しかし、それが難しいことは分かっているから、不安や承認欲求を口にしながらも楽曲に合わせて踊り続けるしかない。

 2020年のメインストリームではデュア・リパやThe Weekndを筆頭に80年代ダンスポップへの回帰が大きなトレンドとなっており、TikTok等を中心に自宅でダンス動画を撮影する動きもより活発になっている。これらを活用して過ごしているTwenty One Pilotsのファンも少なくはないだろう。ダンスポップでありながら明確に“不安”を描く「Level of Concern」は、だからこそどうしようもなく胸に響くのだ。楽しく踊ってはいるものの、内側では誰もが不安を抱えている。この曲はそこにあるリアルを射抜いている。

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