グドモ 金廣らによるAsuralbert Ⅱ、アカシック 理姫らによる可愛い連中……メンバーを引き継ぎ始動したバンド
2020年に入り新人バンドの第1弾リリースが相次いでいる。そのラインナップに注目すると、解散/活動休止したバンドがメンバーを引き継いだグループが多いことが分かる。本稿では、メンバーを継承する形で始動したバンドの始まりの音についてレビューしたい。
Asuralbert Ⅱ(アシュラルバート2世)
2020年2月2日に活動休止となったグッドモーニングアメリカの金廣真悟(Vo/Gt)とペギ(Dr)がSajiのヤマザキ(Ba)と共に結成したのがAsuralbert Ⅱ(アシュラルバート2世)だ。2月3日には早くも1stシングル『In principio erat Verbum』を配信リリースした。公式ツイートで”スタジオセッションのみで完成させた初期衝動”と語られている通り、荒削りでエネルギッシュな3曲が収録されている。
1曲目「エビバデ」のラウドな音のぶつかり合いは、まさに何かが始まろうとする高揚感に溢れている。力強く重たいビートに乗せたエモーショナルなメロディは、聴いているだけで汗まみれのフロアが目に浮かび、否応なしに拳を突き上げたくなる。歌詞では〈空ばかり見ていた頃とは住む場所も居る仲間も皺の数も変わっていた〉とグドモの代表曲を想起させるフレーズを挟みながら、再びロックバンドとして夢を見続ける覚悟が刻まれている。
Asuralbert II として
これから全国各地で皆様にお会いできると思います
まずは東名阪お披露目ワンマンツアーから宜しくお願い致します
3/21(土)心斎橋Pangea
3/22(日)名古屋ell.size
3/27(金)下北沢SHELTERチケット先行受付中https://t.co/GNKHqzoNMZ
映像ディレクター by @shosukessk pic.twitter.com/oE3agZ9Sd2
— Asuralbert II (@AII_info_) February 3, 2020
2曲目「タリラリラ」では妖しげなイントロや〈空気を読んで喰らってきた〉などシリアスな言葉が目立ち、どこか虚無感も漂う。一方「Jitter batter」は藻掻く姿すらポジティブに描いて自らを鼓舞している。どちらも10年を超えるバンド活動を経た現在地だからこそ歌える楽曲ばかりだ。グドモとは異なる3ピースによるシンプルな音はその言葉を生々しく届け、直情的に聴き手の心を揺さぶっていく。『In principio erat Verbum』というタイトルは、“この世は神の言葉によって作られた”ことを意味する新約聖書の表現だ。始まりを想起させると共に、このバンドの“言葉”の強靭さも示唆しているように響く。早くも3月には東名阪ワンマンツアーも決定しており、どんな楽曲が披露されるのか期待がかかる。
可愛い連中
可愛い連中は2019年10月に解散したアカシックのメンバーである理姫(Vo)、奥脇達也(Gt)、バンビ(Ba)が2019年11月にスタートさせた音楽ユニットだ。2020年1月17日に1stデモ『連中Ⅰ』が配信リリースされた。
公式サイトで“ローファイなサウンド”と称されている通り、デモ音源ならではのラフな音を楽しめる本作。アカシック時代から健在のポップさ/キャッチーさをよりメロディアスで朗らかに広げた印象の4曲が収録されている。「ダ犬マイト」では底抜けに明るく、「愛の言葉」では艶っぽく切なく、と変幻自在な理姫の歌声は威力絶大。一転、どこかサイケデリックかつしなやかなギターワークが耳を引く「ワンシーズン」など、すでに多彩な楽曲が出揃っている。
可愛い連中はその形態を”音楽ユニット”と称している。ライブではサポートメンバーと共にデモのアレンジを発展させて演奏しているとのことで、楽曲の汎用性の高さが伺える。こういった流動性はアカシック時代にはなかった一面だろう。また、「ペット可」で歌われる〈一緒がいいな 可愛い君と〉という言葉からも伝わる通り、歌詞の面でピースフルなマインドが花開き、聴き手に寄り添うような表現を手にしている。そんな、あらゆる面でオープンなプロジェクトである可愛い連中。本格レコーディング作品の発表を待ち望んでいる。