映画『ラストレター』主題歌で歌手デビュー 森七菜が語る、岩井俊二や小林武史との制作で得た“新たな表現手段”としての音楽

映画『ラストレター』主題歌で歌手デビュー 森七菜が語る、岩井俊二や小林武史との制作で得た“新たな表現手段”としての音楽

 新海誠監督の最新作『天気の子』のヒロイン、天野陽菜役で注目を浴び、ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』や映画『最初の晩餐』『地獄少女』など、出演作が相次ぐ女優の森七菜が、自身が出演する岩井俊二監督の映画『ラストレター』の主題歌「カエルノウタ」でシンガーデビューを果たすことになった。作詞を岩井監督が、作曲を映画の音楽を担当する小林武史が手がけ、カップリングには小林が作曲し、小泉今日子が父を思って綴った名曲「あなたに会えて良かった」と、手紙をモチーフにした荒井由実のデビュー曲「返事はいらない」のカバーを収録。女優、声優に続き、新たな表現の手段を得た18歳の彼女が自身の歌に込めた思いとは。(永堀アツオ)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

 声に関する仕事は一番遠い職業と思っていた

ーーまず、シンガーデビューが決定した時の率直な心境から聞かせてください。

森七菜(以下、森):驚いてます。声に関する仕事は、私に一番遠い職業なのかなと思っていたんです。あんまり自分の声が好きじゃなかったからこそ、お芝居では仕草や表情に頼っていた気がしていたので、声だけに集中するっていうのはすごく新鮮だし、それをお仕事にするからには頑張らないとなって思ってます。

ーーでも、声だけの出演だった映画『天気の子』が大ヒットしましたよね。

森:最初は声だけっていうことに対して、怯えてたんですよ。すごく引っ込み思案でもあったし。でも、そういう中でも、個性を出せるっていうことを新海さんに教えてもらって。どこで息をついたら気持ちがいいかとか、だんだんとそういうことも考えられるようになってきてはいます。ただ、賛否両論、いろんな人の声が届いてきて。時には、素の自分自身を否定されることもあるのでへこみますけど、賛の声はすごく元気をもらってます。

ーー先ほど一番遠い職業と言ってましたが、リスナーとしてはどうですか?

森:すごく近いです。現場に行く途中も、歩いている時もずっと音楽を聴いてます。音楽を聴いて、今日も頑張るぞって思ったり、少しセンチメンタルな気分になったりとかしてて(笑)。音楽に自分の気持ちを昇華するのを助けてもらっているなって思うくらい近かったからこそ、ないだろうなって思ってたんですよ。だから、びっくりです。

ーー例えばどんな音楽を聴いてました?

森:ロックバンドが多いです。ノリたい時は、KANA-BOONさんとか。「シルエット」に合わせて走ったりすると、あっという間に20分くらい経ってたりして。あとは、 RADWIMPSさんの「ピクニック」とか、ちょっと静かな曲を聴きながらお散歩したりするのも好きですね。

ーーじゃあ、『天気の子』にヒロインとして参加した時はもしかしたら野田洋次郎さんの楽曲を歌うかもと思いましたか?

森:やっぱり、期待はしてましたね(笑)。上白石(萌音)さんが、映画『君の名は。』の主題歌「なんでもないや」を歌ってらして。私も、期待はしてもいいよねって思ってたんですけど、CMで1フレーズ歌ったくらいで終わって。好きな曲たちだったから歌いたかったんですけど、こうして、好きな映画の主題歌でデビューさせていただくことになったので大満足です。

ーーお話を伺ってると歌うことが嫌いなわけではないんですね。小さい時は歌ったりしていましたか?

森:それも賛否両論なんです。「気持ちは入ってるよね」って言われたりして。でも、最近、だんだんと歌うことが好きになってきて。『ラストレター』の撮影中に岩井さんと一緒にカラオケに行ったときにも、「賛否両論なんです」とお伝えした上で、2曲歌わせてもらったんです。そのときに、「賛だよ、賛!」って言ってもらえて。それも歌うことが好きになったきっかけというか、少し自分に自信がついた一因でもあります。

ーーそのカラオケでは何を歌ったんですか?

森:最初に岩井さんの映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』で黒木華さんが歌ってらっしゃった森田童子さんの「ぼくたちの失敗」を歌って。その後に、斉藤由貴さんの「卒業」を歌ってみました。昔の曲が特に好きっていうわけではないんですけど、どっちの曲も知っていたので。

ーーそこから主題歌を歌うことになった経緯は?

森:最初、松任谷由実(リリース当時は荒井由実)さんの「返事はいらない」を歌ってみてよって言われて。小林武史さんのスタジオで歌わせてもらって。それを何回か繰り返した後に、「カエルノウタ」を渡されて。「これ、歌ってみてよ」って言われて。「わかりました」って言って、何回か歌ってるうちに、「これ、主題歌だから」って言われて。「え? マジですか!?」ってなったのが一番最初なんですよ(笑)。だから、いい意味で緊張しなかったというか。穏やかな気持ちで臨めたので、そこはありがたいなって思います。

ーー歌手デビューが決まりました、これがデビュー曲ですっていう流れじゃなかったんですね(笑)。最初に「カエルノウタ」を聴いた時はどんな印象を持ちました?

森:すごく清くて素敵な歌だなって。でも、歌詞がすごく複雑だから、もっと知りたくなって。岩井さんに「どういう意味が込められてるんですか?」って聞きましたね。

ーーなんておっしゃってました?

森:いろんな意味が込められてて、3つくらい解釈できる幅があるんですよ。正確な言い方ではないですけど、1つは「ラストレター的視点」、もう1つが「社会的視点」。あと、「グリム童話的視点」。私は映画の主題歌を歌わせていただくので、「ラストレター的視点」を選びました。この曲には、未咲(母/姉)に対する鏡史郎さんや鮎美の思い、鮎美(娘)に対する未咲さんの思いが書かれているんですよ。

ーー森さんが演じた裕里(妹)や颯香の気持ちは入ってない?

森:そうなんです。鏡史郎さんや未咲さんや鮎美の思いを一番フラットに見れるのはきっと私なんだろうなって。だからこそ、岩井さんはこの歌を私に託したのかもしれないなと思ったので、歌詞のブロックごとに思ってる人を切り替えながら歌うことに決めました。

ーー全体を通して、歌ってみてどうでした? 

森:すごく楽しかったです。レコーディングを通して大好きな映画『ラストレター』をもう一度味わえることが嬉しかったし、終わった後、もう終わりかって寂しくなりましたね。

ーー映画『ラストレター』はどんなところが大好きですか?

森:大分に住んでる18歳の私の視点で言うと(笑)、この映画で本当に初めて、愛のことに涙したんですよね。それまでは、恋愛ものを見ても、好きな人と言っても血は繋がってないし、ずっと一緒にいれるっていう保証もないのに、なんでみんな泣くんだろうって思ってたんですよ。でも、この映画で、やっとわかったというか。鏡史郎さんとか、松たか子さん演じる大人になった裕里を通して、愛ってこういうことなんだって初めてちょっと気づけた思いがして。予告を見ると大人の方が刺さりそうだなって思ったんですけど、10代の人にも見て欲しい。本当にいろんな人に見てもらって、本当の愛を知って欲しいなと思います。

ーー特に好きなシーンはありますか?

森:やっぱりラストシーンですかね。台本を読んだ時から、どうなるんだろうって思っていたら、やっぱりすごく素敵になっていて。映画全体を見たときにより切なくなるというか。あと、回想シーンの裕里としては、結構、複雑なことをしてしまっていたんだなっていうことも知って。ただ、改めて完成した作品を見ると、神木さん演じる鏡史郎さんが、裕里に向ける顔と、未咲に向ける顔が全く違うんですよね。裕里として、すごく優しいなと思ってたんですけど、いや、未咲と話す時、めっちゃとろけてんじゃんって思って。「裕里、可哀想。絶対に脈なしじゃん」って思って。そこはすごいショックでしたね(笑)」

ーー裕里の姉である未咲(回想)と、颯香の従姉妹の鮎美を演じた広瀬すずさんとの距離感はどう考えてました?

森:岩井さんや広瀬さんとはすり合わせたりしてなくて。自然とああいう距離感が出来上がったんですね。やっぱり広瀬さんはすごいなと感じましたし、なんだか嬉しかったですね。信頼関係が生まれてないとできないこともあるので、勝手に信頼してもらえてるんじゃないかと思って。何より、広瀬さん、やっぱりすごいんですよ。いるだけでその場を支配してしまうんですね。本当は盗めるものなら盗んで帰ろうって思ってたんですけど、途中でそれはもう、広瀬さんが生まれ持ったものか、私には到底見せてもらえないような努力があるからだと思って、諦めて。広瀬さんという光の影にならないように頑張りましたね。

ーー人間関係においても、対比としても重要な立ち位置でしたよね。ご自身の二役というのは難しくなかったですか。

森:あんまり違和感はなかったですね。鏡史郎さんが、神木さんと福山雅治さんと二人いらして、広瀬さんも髪型が違っていて。周りの環境に助けていただけたなって思います。でも、演じ分けないと、お客さんが混乱してしまうし、すっと入ってくるといいなと思ったので、裕里の方は松さんを意識してやってました。

ーー劇場で見る人には主題歌をどう受け取って欲しいですか。

森:私、いろんな人の気持ちを託してもらったからこそ、それを皆さんに伝えたいと思って歌ったので、未咲さんや鏡史郎さんや鮎美、岩井さんや小林さん、この映画や歌に関わってくれた全ての人の気持ちを受け取るような気持ちで聞いてもらえたらすごく嬉しいですね。

コラムPick Up!

もっとみる

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

映画部Pick Up!