上白石萌音に聞く、新曲「一縷」での野田洋次郎との“タッグ” 「自分が真っ白になれる」

上白石萌音に聞く、新曲「一縷」での野田洋次郎との“タッグ” 「自分が真っ白になれる」

 実力派女優としても活躍の場を広げる上白石萌音が、10月14日に新曲「一縷(読み:いちる)」を配信リリースした。10月18日公開の映画『楽園』の主題歌のために書き下ろされた同楽曲は、RADWIMPS・野田洋次郎が作詞・作曲・プロデュースし、上白石の歌声の魅力を最大限に引き出したバラードに。上白石がデビューミニアルバム『chouchou』で「なんでもないや(movie ver.)」(上白石が主人公・三葉の声を演じた映画『君の名は。』主題歌)をカバーしたことはあるが、野田が上白石の楽曲を作詞・作曲・プロデュースまで手掛けたのは今回が初めて。そこで今回の楽曲についてのエピソードや野田に対する印象はもちろん、彼女自身が“歌”に向き合う姿勢、音楽への想いに至るまでをじっくりと聞いた。(編集部)

上白石萌音「一縷」(いちる)ミュージックビデオ(Full Version)

野田洋次郎とのコラボは「願ってはいけない夢みたいな感じ」

ーー今回の「一縷」は映画『楽園』の主題歌で、RADWIMPSの野田洋次郎さんが作詞・作曲・プロデュースを手がけています。野田さんの楽曲を歌うのは、2016年10月発売のデビューミニアルバム『chouchou』での「なんでもないや(movie ver.)」カバー以来3年ぶりですが、書き下ろし曲はこれが初めてです。

上白石萌音(以下、上白石):願ってはいけない夢みたいな感じでした(笑)。カバーできただけで贅沢だったので。この曲のことはお仕事から帰る直前にマネージャーさんから聞いたんですよ、「そういえば、洋次郎さんとご一緒することになったよ」って、わざとフランクに伝えてきて(笑)。さすがに「えっ、ど、どういうことですか?」って動揺しました(笑)。しかも洋次郎さんが映画の主題歌を書き下ろすことになって、私と一緒にやりたいとおっしゃってくださったと聞いて「なんということだ!」とさらに驚きました。

 私が音楽活動をする上で、あのとき洋次郎さんがカバーを許してくださらなかったら、たぶん今のこの活動はないと思いますし、そういう意味では私の中では恩人だと思っていて。しかも、私自身RADWIMPSの大ファンでもあるので、そんな洋次郎さんが一緒に音楽を作りたいと言ってくださるなんて、この仕事をやってきて本当によかったなって、心の底から思いました。地道に頑張っていればこういう日が来るんだな、再びご縁が結ばれるときがあるんだなって。洋次郎さんにもすぐに連絡して、「ありがとうございます!」と感謝の思いを伝えました。

ーーこれまでの活動はもちろん、歌い手としての実力もちゃんと理解されてこその抜擢だったんじゃないかと思いますよ。

上白石:私の歌もずっと聴いてくださっていたみたいで、私は恐れ多くて「よくない、よくない!」と思ってしまうんですけど(苦笑)。

ーー謙遜ですか(笑)。

上白石:いやあ、私すぐにそう思っちゃうんですよ(笑)。憧れの人に会ったりすると「私、まだそこに見合うところにはいない!」って。でも、今回の「一縷」はそうやってずっと見守ってくださっていた洋次郎さんが、声をかけてくださって。そうやって縁みたいなものを大切にされている方が書いた曲だよなというのを、改めて感じました。人としての情が伝わるといいますか。

ーーなぜ上白石さんに歌ってほしかったのか、野田さんからその理由は聞きましたか?

上白石:恐れ多くて聞けないです(苦笑)。でも、「いつか(私に)曲を書きたい」とおっしゃってくださっているという話は聞いたことがあって、そのときも「よくない、よくない!」と思っていたんですけど(笑)。でも、レコーディングの前に「あなたは頑張っちゃう人だから、何も頑張らなくてもいいから。『あなたのベストな声をどうやったら引き出せるかな?』と考えながら僕は作るし、ディレクションもしようと思っているから、まっさらな気持ちで、初めて歌う気持ちでスタジオにおいで」と言ってくださって、その言葉がすべてだなと思ったので、洋次郎さんをただただ信じました。

「ああ、洋次郎さんには全部バレてるな」

ーーその「何も頑張らなくてもいい」というのは、萌音さんが役者でもあるからこそ、この歌詞を表現する上で何か演じてしまうという懸念もあったんでしょうかね。

上白石:あったのかもしれないですね。やっぱりレコーディングまでの期間って不安になることが多くて、私は「こう歌ったらいいのかな?」と自分で考えて、頭でっかちになっちゃうくらい準備しちゃうタイプなので、「ああ、洋次郎さんには全部バレてるな」って(笑)。

ーーでも、結果として萌音さんの歌や息遣いから伝わる透明感は、この曲の持つ世界観に最適だと思いましたよ。

上白石:本当ですか? そこはもう、すべて曲に連れて行ってもらった感じで、私はいただいたメロディと言葉を素直に歌っただけで、表情も意識して変えたりしてないですし、本当にまっさらな気持ちでした。でも、実はそれってすごく難しくて。飾ることが誤魔化すことでは必ずしもないんですけど、何かテクニックを使うことで不安を埋めたりすることってあるじゃないですか。だけど、今回はそこを全部削ぎ落としたんです。例えば、ビブラートもかけずにまっすぐ歌うことって、とっても怖いし、すごくアラが目立ちやすい歌い方でもあるのでドキドキする。洋次郎さんの前でなければこの歌にはならなかったかもしれないなと思います。なんだか裸になった感覚でしたね。

ーー経験を積めば積むほど、歌手としての技術が身に付くでしょうし、それによって表現力も豊かになると思います。でも、「一縷」ではあえてその武器を全部捨てて挑んだわけですね。

上白石:武器というのは大げさかもしれませんが、やっぱり癖はあるので、そこを無くすことは今回新たに得たものだったかなと思います。自分の癖も人から言われないと、なかなか気づけないものなので、この曲でいろんな垢みたいなものを流してもらった感じがします(笑)。でも、まっさらな自分を持つことの大切さはすごく実感しましたね。なんにもない自分を知っているか知らないかって、すごく大きいと思いますし。

ーー初心に戻るといいますか、歌うとはどういうことなのかを考えさせられる機会でもあったのかなと。

上白石:そうですね。それこそ「なんでもないや」をカバーさせてもらったのが歌手デビューのときで。歌の技術も何も持っていない、ただただ曲を好きで、うれしくて歌っていたときだったから、洋次郎さんとお仕事をすると毎回あのときの純粋な……曲が本当に好きで、歌いたくてしょうがないっていう気持ちになれるので、なかなか得難い時間だなって思います。

ーー野田さんって、上白石さんが歌う上での節目節目にいろんなきっかけや挑戦をくれる方なんですね。

上白石:洋次郎さんとご一緒すると自分が真っ白になれるんです。きっと洋次郎さんがそうやって生きている方だからだと思うんですけど、飾ったりすることっていらないなと、毎回思いますし。だから、「また一緒に歌おう」という機会があった時に恥ずかしくない自分でいたいなと思います。

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