Newspeak、バンドの雰囲気や楽曲の変化はライブにも 『No Man's Empire Tour』ツアー初日をレポート
11月6日に最新アルバム『No Man's Empire』をリリースしたばかりの4人組ロックバンド、Newspeak。彼らがリリース後初のツアー『No Man's Empire Tour』の初日を11月18日、渋谷WWWで開催した。この日は、今年3~6月に行なわれた47都道府県ツアー『Now more than ever Tour』でNewspeakがサポートを務めたことも記憶に新しいSurvive Said The Prophetをゲストに迎えての公演。盟友のサポートを得て新たな一歩を踏み出すライブとなった。
英リバプール帰りのRei(Vo/ Key)を中心に、Ryoya(Gt)、Yohey(Ba)、Steven(Dr)によって2017 年に結成されたNewspeakの特徴は、海外のインディロック、特に00年代以降のUKロックなどから大きな影響を受けていること。欧米のバンドと比べても遜色ない楽曲とReiによる英語詞のボーカルはそのまま、新作『No Man's Empire』では構築美を重視していた楽曲が、よりライブでストレートに盛り上がれるような雰囲気に変化している。
そうした変化を象徴するように、この日は新作のリード曲にしてキャリア屈指のダンサブルな楽曲「Wide Bright Eyes」でライブをはじめると、序盤は「RaDiO sTaTiC」「24/7 What For?」「Shanghai Disco」など、ハイハットを生かした人力グルーブやリズミカルなベース/ギターによって問答無用で観客を躍らせるダンサブルな楽曲を連発。『Fool’s Gold』~2ndアルバム『Second Coming』期のThe Stone Rosesのような大車輪グルーブを基調にして、音源以上にワイルドな演奏やグルーブで一気に観客を盛り上げていく。Reiがたびたびシンセを離れて観客のもとへ駆け寄り、フロアの後方までを自分たちの世界に引き込もうとする姿も印象的で、まるで『No Man's Empire』での変化がそのままライブに反映されているような雰囲気だ。
とはいえ、彼らの楽曲の魅力はグルーブだけではない。Newspeakの楽曲は、じっくり聴きこむと、どの曲にもポストパンクや耽美なニューウェイブ、ネオアコなどOasisを筆頭にしたUKのラッドロック的な要素が混ざり合っていて、メロディや歌には観客がともに歌えるポップさも宿っている。そして何より印象的なのは、バンドの雰囲気や楽曲から、大舞台へと突き進むことをいとわない野心や巨大なスケール感がひしひしと感じられること。その雰囲気は、女の子を躍らせるために結成されたFranz Ferdinand、もしくはラッドロックの系譜を引き継いでスタジアムバンドを目指したKASABIANのように、ロックを “華やかでかっこいいもの”として再定義していった00年代のUKロックバンドを思わせるようだ。新作では、そうした魅力が音にもより反映されているように感じられる。
中盤のMCでは、『No Man's Empire』の制作風景をReiが振り返る。曰く、今回のアルバムはツアーをしながら制作した作品で、ライブで観客と向き合う日々を過ごしたことが、より外に開けた作風に踏み出すきっかけになったそうだ。つまり、今回のライブは、新作に大きな影響を与えた観客の前で、その楽曲を披露する機会になったということだろう。
以降はアルバムのタイトル曲「No Man's Empire」、ミラーボールが会場を照らした「What We Wanted」、「Lights and Noise」を次々に披露。とはいえ、何より圧巻だったのは、ライブ終盤に向けてさらに音楽性の振り幅を見せていく「See You Again」からの展開だ。
グルーブを重視したここまでとは一転、「See You Again」では静謐な冒頭からサビで一気に演奏が熱を増し、これまで以上に巨大なスケール感が会場に広がる。その熱量をさらに加速させた「Media」、〈I want you let me go!〉というReiの掛け声を合図にポップなサビと観客の合唱が広がった「Maybe You're So Right, Gonna Get My Shotgun」、「今日一番大きな声で歌ってください!」と伝えて観客のコーラスがさらに会場を覆っていく「Lake」など、様々な音楽性/展開の楽曲を畳みかけるように演奏することで生まれた会場の熱気は、この日のライブのハイライトと言える瞬間だった。また、「Lake」では、演奏中に突如Survive Said The ProphetのYudaiが飛び入りし、Yoheyのベースを奪って弾くという、盟友ゆえの熱い瞬間も。その後、The Kooksなどを思わせる00年代のUKギターロック直系の「Changing Shapes」を披露する頃には、渋谷WWW全体が一体感に包まれていった。