カーリングシトーンズ、本気の遊びを追求した“大人のロック” アルバム『氷上のならず者』に感じる音楽への姿勢

カーリングシトーンズ『氷上のならず者』評

 日本一豪華なロックンロールバンド、カーリングシトーンズがいよいよ本格的に動き始めた。彼らがお笑い芸人さながら抱腹絶倒の記者会見を行い、バンドの活動を発表したのが昨年7月のこと。9月23日にZepp Tokyoでデビューライブを行い、12月にオリジナルナンバー「スベり知らずシラズ」をデジタルで配信していたが、その後はしばらく目立った動きはなかった。しかし、この10月に突如1stアルバム『氷上のならず者』(11月27日発売)とツアー『カーリングシトーンズTOUR 2019-2020「やったぁ!明日はシトーンズだ!」』(12月23日〜1月28日)が発表され、再び大きな話題を呼んだ。

 カーリングシトーンズは、日本を代表するミュージシャンが集まったいわゆるスーパーバンドだ。寺岡シトーン(寺岡呼人)、奥田シトーン(奥田民生)、斉藤シトーン(斉藤和義)、浜崎シトーン(浜崎貴司)、キングシトーン(YO-KING)、トータスシトーン(トータス松本)という名だたる6人によって構成されている。もともと仲の良かったこのメンバー間でLINEグループを作ったのがきっかけだったが、寺岡シトーンのソロデビュー25周年を記念してバンドをやろうと盛り上がり、一気に話が進んだそうだ。しかし、これだけの多忙なメンバーでバンドを組むというのは通常は考えられない。所属事務所もレコード会社もバラバラなわけだし、そこには障害になってもおかしくない、いわゆる“大人の事情”もあったはずだ。それでも、結成にこぎつけ、アルバム制作やツアーまで実現できたのは、彼らの強い意志や本気度があったからに違いない。

 そう思えるのは、この度リリースされるアルバム『氷上のならず者』があまりにも楽しく、ワクワクさせられるからだ。バンドとしての初アルバムは、当然のようにメンバー全員で制作されている。詞曲はすべてオリジナルで、メンバー各自が持ち寄ったものと、共作したものが混在している。アレンジも基本的にはバンド名義でクレジットされている。全体的に過度なダビングなどはなく、シンプルなアレンジになっているのも、おそらくメンバーそれぞれがすべての楽器を担当しているからだろう。なかにはデモテープの延長のようなラフな演奏もあるが、センス良くマルチな才能を持つアーティストばかりなので、そのあたりはなんら遜色ない。

 サウンド面に関しては、ゴキゲンなロックンロールが詰まっている。先行で発表されていた冒頭の「スベり知らずシラズ」は、The Rolling Stonesのようなギターのフレーズが聞こえてきて思わずニヤリとさせられるし、「俺たちのトラベリン」では60年代のフォークロックグループのThe Byrdsを彷彿とさせる。軽快なロックンロールやレイジーなブルースなど、このメンバーの嗜好性がよくわかるルーツロック的な曲調が中心で、ボーカルやコーラスを交互に取ることによってグループとしての個性が浮き上がってくる。なかにはラップ風の「B地区」なんていうナンバーもアクセントで入っているが、基本的にはメンバーそれぞれが思いのたけ楽しんで歌い演奏し、音を作ったロックという印象が強い。

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