シングル『ZETSUBOU FUNK』インタビュー
buzz★Vibesが目指す、自由なユニット像「オンラインサロンのような空間でありたい」
声優・森久保祥太郎と元SOUL’d OUTのトラックメイカー・Shinnosukeによるユニットのbuzz★Vibesが、約半年ぶりのシングル『ZETSUBOU FUNK』をリリース。今作には7人組エンターテインメントバンドの“ウルトラ寿司ふぁいやー”が全面的に参加。Shinnosukeが生み出すファンクサウンドと生バンドのグルーヴ、森久保の唯一無二のボーカルが融合し、絶望を吹き飛ばす超絶爽快な楽曲になった。本作の制作の過程で、buzz★Vibesの2人はどんな刺激を受けたのか? buzz★Vibesが目指すものは何か。また、森久保が絶望した経験とは?(榑林史章)
ウルトラ寿司ふぁいやーが忘れていたものを思い出させてくれた
ーー「ZETSUBOU FUNK」は、ドラマ『カフカの東京絶望日記』の主題歌ということですが、いかがですか?
森久保:buzz★Vibesでタイアップをいただくこと自体が初めてだったんですけど、ドラマ側からはファンキーな曲がいいという話だったので、僕らとしてもぜひという感じでした。録り終わっていた本編を何編か観させていただいたら、すごく面白くて。それで僕らの中で、どういう音楽がいいのかの世界観が広がりました。
Shinnosuke:僕らの好きにやっていいということだったので、僕は単純に、buzz★Vibesとしていい曲を作ろうという意識でした。ドラマ自体がシュールなので、あえてそれとは反対のアッパーで明るいほうが面白くなると思って。それでSOUL'd OUTの頃から好きだったジェームス・ブラウンのような、ファンキーなサウンドをイメージして制作しました。
ーー今回は生のバンドサウンドが基軸になっていて、buzz★Vibesとしては新鮮ですね。
Shinnosuke:そうですね。いつもは僕が打ち込みで作っていますから。今回はシングル1枚を通して、生のサウンドが活かされた作品になりました。
森久保:そこではずせなかったのが、ウルトラ寿司ふぁいやーというバンドです。ドラマ『カフカの東京絶望日記』のタイアップの話をいただいてファンキーというキーワードを聞いたときに、ウルトラ寿司ふぁいやーのことが浮かんで、レコーディングに参加してくれるよう打診をしたんです。buzz★Vibesにはない生バンドのグルーブが彼らにはあるのでぜひにと。
Shinnosuke:よくそこにアンテナを張っていたな〜と思います。
ーーウルトラ寿司ふぁいやーのことは、どこで見つけたのですか?
森久保:インターネットです。マーク・ロンソンの「Uptown Funk」をカバーしている動画や、ブルーノ・マーズのアコースティックカバーを路上でやっている動画があって、「すごいな〜!」と思って。演奏が上手いしセンスもあるし、何より音楽が好きなことがすごく伝わってきて。僕自身も昔バンドをやっていた経験があったから、ちょっとした懐かしさも感じながら彼らにハマってしまって、一方的にTwitterをフォローしたり、彼らがインディーズで出している曲を番組でかけたりしていて。
Shinnosuke:僕は森久保くんから「すごくいいやつらがいるんだよ!」と、前から話を聞いて、自分でもYouTubeでチェックしていたんです。森久保くんはいいと言っているけど、僕がピンとこないという場合もあったと思うけど、ウルトラ寿司ふぁいやーは僕もすごくいいと思ったから、ぜひ一緒にやりたいと思いました。
ーー世代の異なる若手と一緒に制作することで、どういうものになったらいいと思っていましたか?
森久保:Shinnosukeが得意とするジェームス・ブラウンなどのスタンダードな部分と、現代のバンドであるウルトラ寿司ふぁいやーの持つ感性が合わさることで、何かの化学変化が起きればいいなと思いました。たとえばドラムのビートは、16ビートにして跳ねたくなるところだけど、あえて8ビートにして跳ねるのを抑えてもらいました。それを彼らが演奏することで、一周して逆に今っぽくなるんです。
Shinnosuke:ウルトラ寿司ふぁいやーのみんなは20代で若いけど、玄人ミュージシャンのようなセンスを持っているんです。でも僕らと違うのは、J-POPをルーツにしていること。例えばスガシカオさんやSMAPのファンキーな曲など。だから僕らが知っているような土臭いファンクのルーツは知らないけど、その分すごく洗練されているんです。幅も広くて、いろんなジャンルに精通しているし。
ーー作曲はどういう風に進めていったのですか?
森久保:ウルトラ寿司ふぁいやーが演奏することを前提にして、曲作りをしていきました。
Shinnosuke:いつもは僕がデモから完全に作り込むのですが、今回は主メロだけちゃんと作って、オケがスカスカのデモを作ってウルトラ寿司ふぁいやーに投げ、彼らに自由に音を入れてもらいました。その上で、サックス以外のホーンセクションや、パーカッションやタンバリンなどちょっとした音を足しました。だからほぼ彼らがアレンジした感じです。
森久保:ウルトラ寿司ふぁいやーはツインボーカルで、もともとアカペラグループで『ハモネプ』に出ているんです。だから2人にはコーラスを頼んで、メインボーカルとコーラスがかけ合うような感じにしました。そういうコーラスや、彼らが生で演奏していることがより伝わる音にしたいと思って、ミックスにもこだわりました。
ーーレコーディングはどんな感じでしたか?
森久保:バンドのレコーディングと同じで、ドラム、ベース、ギターでベーシックを録っていって、鍵盤、サックス、最後にボーカルとコーラスを録りました。僕も楽器陣のレコーディングから立ち会って、一緒にああだこうだ言いながら録っていったのがすごく楽しかったです。
Shinnosuke:彼らは若手でキャリアもないので、最初は細かく指示をしたほうがいいのかな? と思っていたんですけど、そこは我慢して、あえて何も言わなかったことが良い方向に働きました。自由にのびのびとやってくれて、むしろ僕がバンドアレンジを考えるよりも、よほど格好いいものができたと思います。
ーーでもウルトラ寿司ふぁいやーは、実はけっこう緊張していて、ドキドキだったんじゃないですか?
Shinnosuke:それは彼らも言っていました。それにドラムのメンバーは、SOUL'd OUTのファンで聴いてくれていたらしくて、実はずっと緊張していたって。森久保くんは「いいね」ばっかり言っていたよね(笑)。「いいねいいね」「かっこいいね」って。彼らを盛り上げてやりやすくするみたいな、総合プロデューサー的な役割りだったんじゃない? でも森久保くんがいてくれたことで、ウルトラ寿司ふぁいやーのみんなもピリッとした空気になるし、安心感もあっただろうし。パンとかお菓子とか差し入れを大量に持ってきてくれて、「こんなにいいんですか?」って、すごく喜んでいた。
森久保:本当にレコーディングが楽しくて。僕がインディーズバンドをやっていたときの感覚を思い出したし、僕がウルトラ寿司ふぁいやーに惹かれたのは、かつて僕の中にあって忘れかけていたものを、思い出させてくれたからなのかなって。それを確信させてくれたレコーディングでした。